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北海道のフライフィッシング 一「おいっ!」の淵の川で自分を釣る、2度も一 最終章 (全8章)『あっという間に再び鉤は刺さった!』

             全3話
 
第1話
 三日目、最終日。

  「おいっ!」の淵の川を眼の前にして本日最初のフライを選びました。

 目に留まったのは、前回と同じオリーブのパラシュートフライでした。

「これと同じのが刺さったんだなぁ。」

「もしかして。」
と確認すると、このフライにもまだ返しがついたままでした。

 早く釣りをしたいため、一瞬「ま、いいか。」
という考えが頭をよぎりましたが、昨日痛い目に遭ったばかり。

「横着は命取りだな。」
 フォーセップをピンオンリールから引っ張り、返しを潰しました。


第2話
「これでよしっ!」
 バーブレスとなったフライを結ぶと、ロッドを握った右手の親指と、今度は中指で軽くつまみました。
 そして、そのままポイントを探しながら遡行を始めました。


 ここから先の話は、偶然か必然かは分かりません。
 世の中で起こる出来事はすべからく必然という考えがあるならば、私は不承不承ながら納得がいきます。

 しかしながら、偶然か必然かは畢竟当人の受け止め方次第ではあります。

 なんと、その日の一投目を前にまた、ぐさっと今度は中指に鉤が刺さったのです。

 よりによって、またやってしまうとは、自分でも信じられない気がしてなりませんでした。こうなると、何か暗示めいたものを感ぜずにいられません。

 天から
「だから言ったろ。」
と言われた気がしました。

 それが、「魚も同じ痛い目に遭ってるんだぞ」なのか、「横着をするな」なのかは分かりません。両方かも知れません。

 しかしまた、ただ単に、これまでずっと3#ロッドを使ってきたので、テンションのきつい4#ロッドに慣れてないせいだとも考えて当然でしょう。

 何れにせよ、私の右手中指には再びオリーブのパラシュートフライがぐさりと刺さったのでした。


第3話
 二日連続で市民病院のお世話になるのかなと思いました。
 返しがある鉤を引っ張ると相当痛いのです。

 しかし、先程返しを潰したので意外とすんなり抜けるとも考えられます。

 恐る恐る引っ張ってみました。

 すると、何の抵抗もなくスッと抜けました。

 返しを潰さない場合と潰した場合の痛みの違いを身をもって感じた瞬間でした。


 この三日間、目の前に数々のハードルが現れました。

○搭乗予定の飛行機の欠航

○林道の封鎖

○釣り鉤が刺さったこと

○二度目の鉤刺し

 しかし、これらの困難を乗り越え、これまでにない大物を釣ることができ、また何よりもお義父さんと釣りをすることの楽しさを改めて実感できました。

 お義父さんはこのとき79歳で、年が明けると80歳になります。いくらなんでも北海道の渓流を歩くことはもう無理でしょう。

 そう思うと、今回の釣行での出来事がいちだんと色濃く心に刻まれたのでした。


 最終章 『あっという間に再び鉤は刺さった!』完

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