福岡に住んでます

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2年だなんて、ほとんど永遠ね。【最終話】

いままでのあらすじ 1978年。6月。15才のぼくは、同級生のかごめと海を見ている。ぼくらは、駆け落ちすることにした。ぼくの誕生日、駆け落ちする日、駅のホームにかごめは来なかった。34年目。50才。ぼくは自分の誕生日に駅のホームにひとり佇む。ひとりの女子高生が、ぼくに声をかける。彼女は一通の手紙をぼくに渡す。それはとても長い、かごめからの手紙だった。34年前、ぼくに会うことなく、遠くの地に引越したかごめ。30才で結婚して、娘が生まれた。その子が手紙を渡してくれた女子高生だった

    • 2年だなんて、ほとんど永遠ね。【第9話】

      いままでのあらすじ 1978年。6月。15才のぼくは、同級生のかごめと海を見ている。ぼくらは、駆け落ちすることにした。ぼくの誕生日、駆け落ちする日、駅のホームにかごめは来なかった。34年目。50才。ぼくは自分の誕生日に駅のホームにひとり佇む。ひとりの女子高生が、ぼくに声をかける。彼女は一通の手紙をぼくに渡す。それはとても長い、かごめからの手紙だった。34年前、ぼくに会うことなく、遠くの地に引越したかごめ。ある日、図書館の仕事を休んだかごめを、司書の長野さんが訪ねる。そして、か

      • 2年だなんて、ほとんど永遠ね。【第8話】

        いままでのあらすじ 1978年。6月。15才のぼくは、同級生のかごめと海を見ている。ぼくらは、駆け落ちすることにした。ぼくの誕生日、駆け落ちする日、駅のホームにかごめは来なかった。それから毎年、ぼくは自分の誕生日に駅のホームにひとり佇む。34年目。50才。ひとりの女子高生が、ぼくに声をかける。彼女は一通の手紙をぼくに渡す。それは長い、とても長い、かごめからの手紙だった。34年前、ぼくに会うことなく、遠くの地に引越したかごめ。短大を卒業後に図書館の仕事を休んだかごめを、司書の長

        • 2年だなんて、ほとんど永遠ね。【第7話】

          いままでのあらすじ 1978年。6月。15才のぼくは、同級生のかごめと海を見ている。ぼくらは、駆け落ちすることにした。ぼくの誕生日、駆け落ちする日、駅のホームにかごめは来なかった。それから毎年、ぼくは自分の誕生日に駅のホームにひとり佇む。34年目。50才。ひとりの女子高生が、ぼくに声をかける。彼女は一通の手紙をぼくに渡す。それは長い、とても長い、かごめからの手紙だった。34年前、ぼくに会うことなく、遠くの地に引越したかごめ。短大を卒業後に図書館の仕事を休んだかごめを、司書の長

          2年だなんて、ほとんど永遠ね。【第6話】

          いままでのあらすじ 1978年。6月。15才のぼくは、同級生のかごめと海を見ている。高校生のぼくらは、駆け落ちすることにした。ぼくの誕生日、駆け落ちする日、駅のホームにかごめは来なかった。それから毎年、ぼくは自分の誕生日に駅のホームにひとり佇む。34年目。50才。ひとりの女子高生が、ぼくに声をかける。彼女は一通の手紙をぼくに渡す。それは長い、とても長い、かごめからの手紙だった。遠くの地に引越したかごめは、職場で出会った柿谷という男性からプロポーズされるが断っていた。ある日、図

          2年だなんて、ほとんど永遠ね。【第6話】

          2年だなんて、ほとんど永遠ね。【第5話】

          いままでのあらすじ 1978年。6月。15才のぼくは、同級生のかごめと海を見ている。高校生のぼくらは、帰りの列車の時間を気にする事なく、ただ、一緒にいたくて、駆け落ちすることにした。ぼくの誕生日、駆け落ちする日、駅のホームにかごめは来なかった。それから毎年、ぼくは自分の誕生日に駅のホームにひとり佇む。34年目。50才。ひとりの女子高生が、ぼくに声をかける。彼女は一通の手紙をぼくに渡す。それは長い、とても長い、かごめからの手紙だった。 名前さえ知らない木、ふたたび  大学を

          2年だなんて、ほとんど永遠ね。【第5話】

          2年だなんて、ほとんど永遠ね。【第4話】

          瓜生島  父の実家は四国の山の中にあって、昔から農業してて、豆腐づくりで有名な家だった。母も同じ地区に住んでて、小さな頃からお互い知ってたって。やがて年頃になって、お互いに、好き、が、愛に育ったんだけど、父の家は名家。母のお父さんはあの戦争で亡くなってて、暮らしむきは大変だったらしいわ。田舎らしく、家柄が違うとかで、ふたりの恋愛は反対されたんだけど、反対された若者たちって、燃え上がるよね。18になったばかりのふたりは、駆け落ちしたのよ。だからお母さんには、私たちが駆け落ちし

          2年だなんて、ほとんど永遠ね。【第4話】

          2年だなんて、ほとんど永遠ね。【第3話】

          今までのあらすじ 高校1年生のかごめとタツヤは、いつものように岸壁にすわって海を見ていた。ふたりがずっと一緒にいるためには、卒業までの2年、待たないといけない。2年。そんなの、ほとんど永遠ね。年取って死んじゃうわ、と、かごめはいう。ふたりは、駆け落ちすることにした。決行の日。かごめは現れなかった。月日がたち、タツヤは50才の誕生日に、かごめと落ち合うはずだった大分駅のホームにいる。タツヤに話しかけてきた女子高生が差し出したのは、一通の手紙だった。 手紙  こんにちは、タツ

          2年だなんて、ほとんど永遠ね。【第3話】

          2年だなんて、ほとんど永遠ね。【第2話】

          34年と1週間後。  50才の誕生日に、僕は大分駅のホームにいる。芸術作品と書かれているオブジェと、僕は見つめあっている。さっきから何度も尋ねているけど、このオブジェは僕には答えてくれない。教えてくれない。 「ねえ」  このベンチには僕しかいない。左へゆっくりと振り向く。今どきの女子高生、としか、僕には表現出来ないけど、多分、高校生だろう女の子が、痛いほどまっすぐな視線で僕を見下ろしている。 「僕の事かな」 「ねえ、おじさん。朝もここにいたよね」 「うん。きっといた。朝から

          2年だなんて、ほとんど永遠ね。【第2話】

          2年だなんて、ほとんど永遠ね。【第1話】

          名前さえ知らない木 1978年。6月。15才。  学校帰りにかごめと行った海。  コンクリートの堤防にふたりで腰掛け、随分と長いこと、海を眺めている。小さな頃からいつも見ている別府湾。この大きな湾となっている海を越えた先の山に、ぼくが住む小さな町がある。母が晩御飯の準備を始めている時間だ。背を向けている先にも山があり、それをふたつ越えた小さな町に、かごめが住む家がある。こんな近くに座っているぼくらは、やがて随分と離れたそれぞれの場所へ帰らないといけない。どうしてだろう。  

          2年だなんて、ほとんど永遠ね。【第1話】

          「一緒に笑えるって、いい事」後編

          前編のあらすじ 電車に揺られていた高校卒業間近の僕。停車して入れ替わる乗客に紛れ、隣に座ってきたのは、2年前に僕をふったかごめと新しい彼氏。動揺した僕は降りるはずじゃない駅に降りてしまう。そんな僕に声をかけきたのは、かごめの姉、ツグミ。ツグミに誘われるまま街の喫茶店に入り、僕と元カノの姉との、奇妙な時間が始まる。 後編 ピザを頬張り、ビールを飲み干した僕らは、喫茶西海岸を出ると、そのまま西へアーケードを歩く。 「まだ飲めるの、君は?」  と、ツグミさんが聞く。 「まだ飲め

          「一緒に笑えるって、いい事」後編

          「一緒に笑えるって、いい事」前編

          前編  東別府駅を出発した電車は、次の停車駅、別府に向かっている。海を正面に眺める席に座っている僕は、高校卒業まであと何度この電車に乗るのかなあ、と、ぼんやりと考えていた。特に感傷に浸ることもなく。寒さが和らいできた3月の週末、乗客はいつもより多い。海が見えない。残念。車内アナウンスが別府に着く事を告げる。僕はもう少し先の無人駅で降りるので、席に座ったまま。やがて停車した電車の扉が自動で開き、どやどやと乗客が降りる。それでもふたつ先の観光地が目的なんだろう人々が、まだそれな

          「一緒に笑えるって、いい事」前編

          「今日は寝癖がひどいけど、私の髪はお利口さんだから、きっと明日は元通り」 第2話

          #創作大賞2023 「今日は寝癖がひどいけど、私の髪はお利口さんだから、きっと明日は元通り」  第2話  (第1話はこちらです) https://note.com/preview/n15fc26974ac8?prev_access_key=464f04ede99c77df068371a92f5b0e16  かごめと一緒に駅前パルコの文房具売り場に行った。かごめは、 「これがわたしのお気に入り、銀色インクのボールペンなの」  と、嬉しそうに話してくれた。好きな事を話す時、

          「今日は寝癖がひどいけど、私の髪はお利口さんだから、きっと明日は元通り」 第2話

          「今日は寝癖がひどいけど、私の髪はお利口さんだから、きっと明日は元通り」 第1話

          #創作大賞2023 #恋愛小説部門 あらすじ  ありふれてはいるけれど、幸せな家庭をもつぼく。定年が近づいてきた夏の夜、高校生の時にこっぴどく振られた彼女の夢を見る。43年ぶりに思い出した彼女、かごめは、それからぼくの生活に現れるようになる。幻想として。すっかり忘れていたのに。ぼくは、かごめの事を思い出してみた。かごめが好きだった銀色インクのボールペン、モヘアの手袋、ふたりで歩いたあぜ道。思い出をたどる時間に、いつしかぼくは入り込んで行く。そして、初めてかごめと出会った景色

          「今日は寝癖がひどいけど、私の髪はお利口さんだから、きっと明日は元通り」 第1話