【社会人留学】Summer week 2&3~人生は交渉である(前編)~
こんにちは!
夏期集中授業の1科目目、”Conflict & Negotiation"をすべて修了しました!
タイトルを「人生は交渉である」と表現するほど、仕事はもちろん日常生活にも活きる多くの大切な気づきと学びがあり、充実感に満ちています。とはいうものの、試験が終わるまで、精神的にも体力的にも削られるハードな日々を過ごしていました(涙)
全12回の授業、課題、試験を通じて、大学院が求める期待値は高く、小手先のテクニックや表面的な理解ではまったく太刀打ちできないということをあらためて突き付けられた気がしています。課題で期待されている事を深いレベルで理解すること(※)に加え、理論の深い理解と洞察、それらの知識を引き出す瞬発力とそれを論理的に表現する力が求められるのです。そして最終試験ではその実力が測られます。
※授業後に毎回提出していたリフレクションペーパーを例にあげます。
下記を要約すると、「ネゴシエーションの合意形成において、満場一致か多数決かどちらを選んだか、それは機能したか。」というシンプルな設問です。私のグループは満場一致型を選び、それがいかに機能したかについて具体的に記したのですが、教授からは「困難やネガティブな側面についても触れると良いでしょう」というコメントがあり、点数の取りこぼしがありました。最初こそ、問われているのは「機能したかどうか」であり、実際にそれが十分に機能していたことを詳細に表現していたことから、フィードバックはあまり腑に落ちなかったのですが、後から、課題を通じて期待されていることを十分にくみ取れていなかったんだと思い至りました。実務においても、近しい経験がありました。上司から依頼され海外の重役におくるメールのドラフトを作成した際、依頼に対して忠実に対応したものの、上司が最終的に送付しているメールは、私が作成したものにかなり肉付けされたものでした。上司の立場を踏まえるとこれは書いておきたい、と納得の内容でしたので、文字通りに受け取るだけでは不十分だと学んだ記憶があります。。授業を通じて、テーマの内容に加え、こうした実用的な学びを得えています。
1. Which decision rule did you choose (unanimous vs. majority vote)? Why? Do you think it worked well?
In pre-negotiation, opting for a unanimous vote and an integrative approach was effective. This decision, driven by potential repercussions on stakeholders such as students and the community, recognised the significant impact on school operations. Successful because it promoted integrative thinking and focused on operating within ZOPA, we navigated informational and computational complexity by visualising ideas and managed procedural complexities through efficient time management. Leveraging social complexity, coalitions, such as between the Academic administration representative and myself, advocated for initiatives, e.g., a student ticket increase. Encouraging and harmonising diverse ideas led to innovative solutions, such as opening school facilities to the public for revenue generation.
(機械翻訳:どの意思決定ルールを選択しましたか(満場一致 vs. 多数決)?なぜその選択をしましたか?それはうまく機能したと思いますか?
交渉では、満場一致の投票と統合的なアプローチを選択しました。これは、学生やコミュニティなどのステークホルダーに与える潜在的な影響を考慮し、学校の運営に対する重大な影響を認識していたからです。これは、統合的な思考を促進し、ZOPA内での運営に焦点を当てることで成功しました。私たちは情報的および計算的な複雑さをナビゲートするためにアイデアを視覚化し、効率的な時間管理を通じて手続き的な複雑さを管理しました。社会的な複雑さを活用して、学術行政代表との連携など、連携が取れた状態でイニシアティブを推進し、例えば学生の入場料の増額などの取り組みを提案しました。多様なアイデアを奨励し調和させることで、学校の施設を収益化するために一般に開放するといった革新的な解決策が生まれました。)
さて、前回の投稿で、インド人の学生と再び交渉をする事に触れていましたので、その様子をご報告したいと思います。
今回は、相手が会社の上司、私が部下という設定で、シチュエーションは以下です。
現在サンフランシスコで勤務している私は、スイス/ジュネーブに住むパートナーと同居するため、別の会社からの内定を引き合いに出し、その条件以上の内容で交渉を成立させたいと考えています。
・パートナーは国連勤務で転居不可のため、私が転居しなくてはならない
・よって勤務先と(パートナーと過ごすための)休暇が長いことが最優先
・別会社の内定条件は非常良い(勤務地はロンドンだが、ジュネーブに空きが出次第、転籍可)
・現職には満足しているので、勤務先と休暇さえ折り合えれば、残留したい
・給与等、その他の条件の優先度は低い
つまり、前回の交渉と比べて、私のBATNA(目の前の交渉が決裂した場合の最善策)が強いため、私の方が優勢です。
結果を先にお伝えしますと、50分間では、交渉不成立でした(涙)ですが、アグレッシブな相手に対して、感情的な芯の強さを持ち、相手都合の条件に不用意に合意せず、bad dealを避けることができました!その点では、数日間ながら、成長を感じられました。
ポイントは、①私がResistance Points(交渉から撤退する基準)を明確に持ち、それを満たさない限り合意しないという姿勢を示し続けたこと、②相手がNoという理由の背景を知り、その問題の解決に努めようとしたこと、が挙げられます。
①について、相手は最終的に、「ジュネーブ4か月:サンフランシスコ:8か月(タイミングは完全に会社都合)+来年再度面談し完全にジュネーブ転籍もあり得る」という条件を提示してくれました。6:6でタイミングはこちら都合でよければ折り合えると思いましたが、4:8では決めきれず、膠着状態になりました。
②「なぜ、私はサンフランシスコにいる必要があるのか。リモート勤務ではだめなのか」という点を深堀したところ、スペシャリスト人材の不足という問題が表面化しました。それを解決できれば、私はサンフランシスコを離れられるという事なので、「私のポジションを引き継げる人材候補を何人か知っているので紹介できる。もし採用に至れば、私はジュネーブに転籍できるか」と質問すると「できる」との回答でした。それでも結局、引継ぎのために8か月はサンフランシスコに居て欲しい、という相手の主張は崩せなかったのですが(笑)
②では、授業の前半でみっちり学んできた、相手の主張(Position)ではなく、その背景にあるニーズ、欲求、懸念(Interest)をアクティブリスニングにより聞き出し、真意を理解した上で、双方にとって満足のいく解決策を求める交渉を一部実践できたように思います。
Positionに基づいて交渉すると、焦点はそれぞれが前面に出す要求にあるため、双方が望む結果に向けて押し問答が続き、Win-Loseに帰結します。(Value-claiming型)
対照的に、Interestに基づく交渉は、それぞれのニーズを理解する所から始まり、双方が満足のいく問題解決に根差しているため、Win-Winの成果を生み出せる場合が多いのです。(Value-creation型)
こうして文字にすると至極当然なことのように思えるのですが、言うは易く行うは難しです。論述の課題では、職場で上手くいかなかった交渉(ステークホルダーをある会議にお誘いするも、力及ばずでした)について分析を行ったのですが、学んだ知識を基に、あらためてその経験を振り返ってみると、過去の運用、責任者の合意などを盾に、Value-claiming型の交渉をしてしまっていた事に気づかされました。今もう一度やり直せるとすれば、もっともっと相手の話を聞くはずです。実はこの経験は、6年近く経つ今でもモヤモヤし続けていたのですが、アカデミックレンズを通して、モヤモヤを解消できたことをとても嬉しく思います。
他にも面白かった交渉ケースをご紹介したいのですが、長くなってしまったので、次回に持ち越したいと思います。今回も最後まで読んでくださってありがとうございました。