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漫画『ブスなんて言わないで』を読んで大いに考える

ブスなんて言わないで、
とてもおもしろかった。


それぞれの人たちがみんな、
悩んでもがいていて
それらが等身大のもので、
なんというか
現代を生きていて。


それぞれの意見を
誰かに押し付けるとかでもなくて
説教くさくなく嫌味でもなく。


一気に最新刊まで買って読みました。
続きが楽しみで仕方ないです。



ということで
漫画を読んで、
美しく生まれること
不美人に生まれること
生まれ持った才能

いわゆるギフトと言われるもの

それ以外の
性別や服装をとりまく
文化やマスコミ、社会の流れとか

そいういういろいろなことについて
ぼやぼやのんびり考えている。


非常に充実した思索の時間を
持つことが出来たと思うので、
ブスなんて言わないでに感謝である。


僕は比較的恵まれた容姿に生まれたので、
登場人物の中で
一番共感しやすかったのは
美容研究家の梨花さんだった。


たしかに、
こちらの容姿に関することを褒めた後
自虐をしたり、あるいはなぜか
「生まれつき綺麗って得よね~」
みたいなマウントをしたりして来る人、

めっちゃくちゃ多い。飽きた。


義母も謎に僕のことを意識していたので、

僕がスキニーデニムをはいていると

「若い人はいいわね、そういうのがはけて。
今日私デニムを選ばなくてよかった」


髪型をいろいろ変えていると

「パーマかけたの。いいわね。いろいろできて」
「私はほら量が多くてナンタラカンタラだからいろいろアレンジが難しくって」



また、僕たち夫婦が義両親よりも
ゴルフが上達していくと、

「さくらさんは本当に努力家だから
がんばってて偉いのね。
私は○○の動きが苦手だからゴルフに向いてないのかも」

などと言ってきたりする。


30代後半になっているのに
スキニーデニムをはきこなせているのは、
僕の努力も影響があると思うのだが
それについては若さとくくり


髪型をあれこれ楽しんでいる様子には
皮肉を言い、時には自虐する

極めつけは運動神経については
生まれつきのものではなく、
努力で補っている
(僕にも自分にも才能はないよね)
みたいな話にしてしまう。


これは義母の言動の例だが、

今まで生きてきた中で
本当に、こういったことを
言ってくる女性が多かった。


敵わないなあと思うところは
生まれつきの能力と決めつけ、

自分も同じだけ努力すれば
出来たことだけどしなかっただけ、
と認識しているところには
「あなたの努力すごいねw
あたしそんながんばるの無理だわw」
と言ってきたりするのである。

ほんとうにうざい。


普通に街を歩いているだけなのに
男性から卑猥な言葉を投げつけられたり、
知らんおっさんから顔をじっと覗かれて
「ウン……きれいな顔だ」と批評されたりする。

後者については
ただのおもしろ話ではあるのだが、

いずれにせよ
普通に暮らしているだけなのに
誰かの好意あるいは悪意にさらされる、
という点では同じことだと思う。



サングラスをしたり
イヤホンをしたりしないと
外出できない時期もあった。


顔をじっと見られたり
卑猥だったり
変な言葉だったりを
急にあびせられることがあって
怖かったのである。


とはいえ
僕は梨花さんのように
仕事の上で
容姿しか見られないから辛い、
という風に考えたことは無かった。


むしろ仕事や私生活でも
容姿のおかげで採点を甘くしてもらったり
親切にしてもらったりすることが多く、
「助かる~」「あっす」としか思っていなかった。

仕事の出来るタイプではなかったため
キャリアとは無縁だったのもあるし、
殿方に庇護されることで自身を守ってきたので
梨花さんのように真面目に思い詰めなかったのだと思う。


そして、不美人としての視点
主人公・知子さんの考えや意見、
今まで味わってきたことに対しては

僕は、なんとも言えないというか
胸が痛いのだけれど

そう感じること自体
僕が容姿的に恵まれているからで
つまり知子さんの立場を見下しているからで
ああああこの感情どうとらえて処理したら

みたいな非常に複雑な気持ちになった。



僕は、梨花さんのように
美人には美人の苦労もあるよ、
とは思えなかった。
知子さんのように
不美人である人が抱える苦しみや
苦悩のほうが、ずっとずっと重たいと感じたからだ。


僕にだって前述したような苦労や
怖い思いとか、嫌な思いをした経験はある。
けれど、それを知子さんが
味わってきたことと比較したら
軽く感じられたというのが率直な気持ちである。


でも、梨花さんの思う、

ブスなんていない
皆に自分を好きになってほしい
そのために社会を変えたい

という気持ちにはとても賛同している。


僕は主人公の知子さんを
顔の造形は確かに個性的だけれど、
性格は健全できちんとしているし
なによりおもしろくて魅力的だなと感じたし、

梨花さんもきっと
同じように思っているだろうと思う。


むしろ、顔だけが見られ
評価されがちなことに
振り回されてきた自分と比べると
知子さんには強さが、魅力があるよ
という風にすら思っているかもしれない。


そして、数か月前だろうか。

夫が
「さくらと同じシャンプーだと
夕方には髪の毛が脂っぽくなっちゃうんだ」
と打ち明けてくれた。

(それは確かにその通りだ。
男性と女性では違うものな。
今まで気づけなくて申し訳なかった)


意気揚々とドラッグストアで
男性用のシャンプーを探してみたとき、
女性用のそれとのラインナップ
品ぞろえの違いにすごく驚いたということがあった。


男女平等とか女どもがわめいてるくせに、
どこが平等だ!
女がめっちゃ優遇されてんじゃねえか!

と憤ったことをよく覚えている。


『ブスなんて言わないで』の中では
割合としてそこまで大きいわけではないが、
男性側の抱える苦悩や葛藤も描かれており
それもとても良かったと思う。


だからなんでしょうね?


僕はこの漫画を通して
ギフト、才能、努力、環境、社会
いろんなことに思いをはせ、

そして、

僕だからこそ
社会に向かって
そこで生きる女性や男性に対して
何か、小さくてもいいから
出来ることがあるのじゃないかと
真剣に考え始めている。


そういう機会をくれたこの漫画に、
本当に感謝している。ありがとうございます。

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