国連事務次長・中満泉さんのお話
NHKアカデミアで、国連にて軍縮の仕事をしていらっしゃる中満泉さんの回を見ました。
以下、特にこれからも記憶に残しておきたいと感じたところをメモしました(上記URLから実際の映像をご覧になれるほか、同サイトのテキストのページよりお話の書き起こしを読むこともできます)。
・ボスニアに赴任した際、4世代にわたって家族を戦地に送った女性から「戦争というものは本当に恐ろしい。決して無理をしないように」と気遣われたときに、「人間は残虐でもあり恐ろしい行為をする存在であると同時に、とてつもなく強靱で勇気と良心を持つことができるのもまた人間である」と気づいた。そういう良心、勇気をかき消していくのが戦争。
・ふだん大言壮語、威勢のいいことを言っている人ほど極限状態に弱いということを何度も目撃してきた。極限状態で本当に頼りになるのは、穏やかな紳士で戦争の恐ろしさをしっかり理解している人。常に冷静な人。威勢のいい発言を無責任にする人は基本的に信用しないようにしている。
・ボスニア、クロアチアで勤務したあと、倒れてしまったこともあった。PTSDとの診断を受ける。この経験から、紛争地で活動している国連の同僚たちの過酷な状況を常に思っている。
・人々が命を落としている戦地での仕事を経て結婚をしたあとの、仕事と子育ての両立について。スーツの下にTシャツを着て出勤し、帰宅したらすぐに、汚れを気にせずお子さんたちをハグできるようにしていた。お子さんたちが「愛されている」と実感できるようにすることを意識し、接してきた。お子さんたちが、「自分たちの幸せ」で完結するのではなく、世の中の人々に思いを寄せ、恵まれない立場に置かれている人々の境遇を想像できる人になってほしいと思っている。
NHKアカデミアは、講師が一般の参加者に向けてオンラインでお話しする形で構成され、参加者からの質問に回答する場面もあります。子どもたちや学生さんから軍縮やSDGsについて「私たちにもできることは」と問われ、中満さんが「戦争、平和、そして紛争地にいる子どもたちに心を寄せることが最初の一歩」とおっしゃっていたのが心に残りました。昨年、猛禽類保全やインターカルチュラル・シティに関するシンポジウムに参加した際にも、登壇された方々が私たち一般市民ができることとして、寄付や支援よりもまず「(猛禽類/多文化にツールを持つ人々の)存在を知り、心を寄せること」を挙げていたからです。野鳥と人間を同列にするような無礼な物言いかもしれませんが、知ることが保護・支援・社会改善の第一歩であり、「知る」ことができるか否かは自分の意識次第であるという点は、根底に共通しているように思われました。知ることを起点とし、心を寄せて、さらに具体的な行動につなげること。いまの自分に何ができるか、子どもたちに何を残していくか。あらためて考えるきっかけを中満さんのご講義からいただきました。