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FM802の『はなむけ』
「見えなくなるまで見ていてね」
集団登校が終わり、ククがひとりで学校に行くようになって数日目。数歩進んでは振り返るククに、何度も大きく手を振った。無事に学校に着きますように。今日1日いやな思いをしませんように。
小学1年生の歩幅は小さい。それでもやがて、ここを曲がったらもうお互いが見えなくなるというところまでたどり着く。そこで最後にもう一度振り返り、私が両手を大きく振ったのを確認して、ククはぱっと駆け出した。危ないから走らなくていいのに。小さな背中に覆いかぶさった水色のランドセルが、角の向こうに消える。
……だんだん遠く小さくなっていくククを見つめていると、名実ともに親から離れていってしまうようで、あとを追って学校までついていきたい衝動に駆られます。曲がりくねった住宅街にククを送り出すのは毎朝勇気が要り、せつなくて不安で、そしてさびしい。
そんなふうに感傷的になっていた親の胸になんとも刺さる歌がラジオから流れてきました。SUPER BEAVERの柳沢亮太さんが作詞・作曲し、GLAYのTERUさんを含め8人のヴォーカリストが参加しているFM802のキャンペーンソング『はなむけ』です。
おはよう いってらっしゃい
またね またね
好きなことを 好きでいてね
嫌でもどうしても嫌なことだってある世界で
あなたは何を選んでいくだろう
お守りを持たせるように、「いってらっしゃい」と毎朝ククに言っていること。
「男の子がかわいいものを好きなのはおかしい」と言われてしまったことのあるククが、小学校という新しい環境でも、その先でも、自分の好きなものを好きなままでいられますようにとずっと祈っていること。
ククには面と向かって伝えてはいない私のそんな気持ちを代弁してくれるような歌詞に、ついつい涙がこぼれてしまいました。
偶然ではありますが、『はなむけ』のミュージックビデオに出てくる白い帆を張った船が、「自分で船をこぐようにして人生の荒波を渡っていけますように」という思いを込めてつけたククの本名とつながっているように感じられ、よけいに胸がいっぱいになりました。
新しい出会いと別れの季節、この歌はたくさんの人に寄り添ってくれるだろうなと思います。