すきま

西日の眩しい午後以降、コンビニのガラスは内側からロールカーテンで覆われている。

太陽は暮れて、まだ夜になりきれず、空と山の色がごちゃまぜになって、うっすい青色だか空色だかクリーム色だか薄紅色だかなんとも言えない、でこぼこで、まだらなグラデーション。

そんな時間帯は仕事帰りの車が駐車場にならび、部活帰りの学生の集団が自転車をとめて、コンビニは忙しなくなっている。

買い物に行く前にスマホをいじる、買い物を終えたのにスマホをいじる。コンビニでの用は済んだのに車の中にいる人のうちの一人は私だ。

ロールカーテンの隙間から、コンビニに出たり入ったりする人間が見える。下半身しか見えてないのに、服装でなんとなくの年齢や職業がわかる。靴下、スカート、黒くて重そうなリュック、それについてるキーホルダー、スマホを持つ手、女子高生。紺色の薄汚れたズボン、がに股、手ぶら、工場か土木系の仕事の40代。黒いスラックスが何本も、リズムも合わずばたばたとそれぞれが意思を持って歩く、どこか落ち着かない、部活帰りの男子高校生。膝下のタイトスカート、ストッキング、ヒール、小さな手提げカバン、わずかに見えるベストとシャツ、事務系の女性。

それらをボーっと眺めて、ただ車にいる。もう夕飯は15分前に買ったのにまだいる。迷惑な客だが、似たような車が数台。いずれも運転席で電話をしてるか、スマホをいじるか。

会社でもない、自宅はまだ先、帰路の途中。
仕事終わりだけどまだ帰宅もせず。中間地点が、夕方のコンビニにはある。

そしてこの文字を打っていたら、さっきまででこぼこしていた空も辺りも段々群青色が深まって、どんどん赤とか黄色みたいな色が減っている。コンビニの明かりがより鮮明に見える。
あっという間に夜が来ている。

レジ袋の中の冷麺が冷たい麺でなくなる前に、さて、あと一日踏ん張るか、なんて思いながら車のエンジンをつける。

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