誰かに何かを
誘われて見る、という体験をこの土日はしていた。
土曜日は美術館でモネ展、日曜日の今日はお笑いライブ。
自分で美術館に足を運ぶことはあるし、お笑いも好きでライブに行ったこともある。が、今回は友人や会社の後輩に誘われ、自分の好みとは全く関係ないものを見た。こういう言い方はなんだか失礼に聞こえるが、あくまで自分が好きなものを自分で決めて自分が行く、ではない真逆の体験をしたことを指している。
絵画のことは詳しくないが、モネは印象派らしい。飾られている絵はタッチがほわほわとしていて、どれも線の輪郭が曖昧なものが多かった気がする。色も淡めで原色も少なかった。写実的、の言葉の対局的な感じでいいのかはわからないが、写真のようにリアルに描かれている絵とは真逆の、言葉通り印象という曖昧なものを絵にした、ぼんやりとした印象を受けた。なるほどなあー、なんて感心しながら見て、楽しかったのだが、それらを見ながら「ああ、私はもっとくっきりした絵が好みなんだなあ」と考えていた。
お笑いライブは、自分が好きな組が2組、それ以外は全て初見のコンビやトリオのネタを見た。普段自分が見ている年齢層のコンビより若く、荒削りな印象を受けたが、それもまた新鮮で面白かった。それにコントを生で見たのは初めてだった。漫才もコントも含め、10組以上のネタを3時間位で20個以上見た。お笑いインターバルみたいだった。全組それぞれに感想を持ったが、その中でも自分が気に入ったのはやっぱり漫才のコンビで、何を気にして気に入ったのか考えると、テンポとか、台本ぽくない自然な会話のような漫才とか、予想できたボケでもツッコミでもなんかこう聞き続けていたくなるような掛け合いとか、そういうところだった。
当たり前だけど、自分じゃない誰かに誘われて行ったことで、普段なら見ない聞かないものを浴びて、再確認をしたり、気付かされたりした。私は自分のことをわがままであまのじゃくだと思っているので、人から指示されるのも勧められるのも得意じゃない、本当に厄介で性格の悪いオタクなのだが、そんな自分が他人に誘われて行くのも悪くないなと思えた。かなり貴重な土日だった。
それと、最近酷く熱を上げてのめり込むようなオタク生活をしていないからこそ他人の誘いを受け入れられたのかもしれない。自分がないから何かが入り込む隙間があったのだろう。
それはそれとして、盲目になれるようなことがないと、虚無で悲しいし落ち込んでてつまんねえなあとは思っている。わりかしこれまでの人生は何かに没頭していることが多かったため、久々に力の抜けた期間が長引くとこれだ。定年後の人間が何をしていいかわからない、みたいなそれみたいな。(みたいな)
帰りの新幹線でとりあえず言語化しとくか、しとかないとただでさえ虚無なのにますます悪化しそう、てことで無理矢理書いてるんだけども、やはり自分は聴覚人間なのか、日本語の歌詞が聞こえる歌を聞きながらnote書くと何を書いているかわからなくなって文章がおかしくなるな…とか思っていると終着駅まであと15分を切っている。休日の終わりが迫っている。鼻の横にできたニキビ、いや吹き出物による違和感を覚えながら、明日からまた始まる労働をぼんやり思い浮かべながら、新幹線をおりる準備をしている。