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【番外編】アデリア王国物語#11

城内の地下通路で王妃はドレスをたくし上げながら国王は息が上げながら走る。煉瓦の壁は途中から掘り進めた洞穴に変わり、リアーナも暗い世界へと足を踏み込む。

がらりと行き先の雰囲気が変わる。全く明かりがないので進行方向をランプで照らす。長い洞穴を永遠と歩き、青の洞窟みたいな水溜りが先にあり、そこには簡易的な小船が浮いてる。

「国王様、先に行って下さい。」

一回目では叔父とリアーナは乗れなかった。国王と王妃また、叔父の妻達は乗り込んだ。

山奥の洞窟から出るとまるで幽玄の森の崖で小船は水流に揉まれながら川を下ると船が降りられる場所まで行った。

「森の先に広い草原がございます。目的地までの気球がございますので。」

執事のレオナルドは川へ戻った。次に叔父やその妻、最後にリアーナもギリギリだが乗り込んでオールを漕ぐ。

森を分け入り、腰まである草原を進んで、建物に入る。そこには気球があり、執事は移動させて、草原に気球を置いた。

ゴォーーーという音と共に萎んでいた気球が大きく膨らむ。

安全具を外して飛び立つと、ふわりと草原から離れ、雲の断層をゆっくりと登り、北西の国境まで飛ばす。

遠くでゼウス帝国がアステラス国の飛行船を撃破する。機体が斜めに落下し、王城の真近に墜落した。距離がある空でも轟音が響く。

「国が・・・。」

そう国王は呟いて小さな街を見つめていた。

国王達は一時、ゼウス帝国で保護された。

ゼウス帝国の王城は近未来的なツインビルだった。その近くの迎賓館に通された。

「お待ちしておりました。国王殿下。」

「アルバートです。入管手続きを含め、国防省と臨時会談の日程は調整して置きますので。」

国防省関係の官僚がお出迎えした。

国王の預かり知らぬ所でゼウス帝国が「アデリア王国」の為に援護してるが国王が考えてる程、世の中は甘くない。

そもそもゼウス帝国は「アステラス国」と同盟関係にあったのだ。

国王は軍事ビジネスの渦中の人物だ。

弱い獲物が目の前に居て何もない訳ではない。

ゼウス帝国の各社の新聞記事の見出しは踊った。

国王は権威は失墜。亡国援護の名の下に行政改革、王位剥奪か?海洋権は委任決定。土地の資源は貿易会社が賛同、編入は事実上の実効支配の可能性も。

リアーナは海外要人専用のホテルに居たが新聞記事に溜息を吐いた。

まだバイレードとアシルは王城に居る。

それなのにアデリア王国は崩壊の記事だ。

許せなかった。

数ヶ月掛けてゼウス帝国とアステラス国は停戦した。アステラス国としてはゼウス帝国が参戦するとは思っても見なかったからだ。

NL-07飛行船が帰還し、搭乗口からバイレードとアシルが降り立った。後ろにはレベッカとリアーナの両親が居る。

「お帰りなさい。」

リアーナは破顔の笑顔で駆け寄った。バイレードはリアーナを抱き留める。

兄のアシルは微笑みながら肩に乗る伝書鳩を見つめる。

「お腹、空いたよな・・・?」

アシルは毛づくろいをする伝書鳩に同意を求める。

伝書鳩は両翼をバタつかせ、リアーナの頭に飛んだ。

「わっ髪の毛が・・・。」

リアーナの真横で国王が体を揺らしながら笑った。

「キッシュはリアーナが好きだからねぇ。」

伝書鳩はリアーナの髪の毛を突っついて地肌に嘴が当たる。

ゼウス帝国はバイレードを復興大臣として入閣し、アデリア王国の再建を任された。

そしてアステラス国は国際裁判で刑事告訴となった。

捕虜になった軍部は戦犯として処罰された。

しかし、それは末端の人物だけで幹部や国王は適用出来なかった。

世界会議でアステラス国の態度に非難が噴出した。諸外国は安全の脅威を議論、アステラスの常任理事国の罷免権を決議し、本日可決に至り、世界史に載る歴史の転換期を目撃したーーー・・・。

【終わり】

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