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【短編小説】仮)アデリア王国物語#04
部屋の燃える勢いは止まらない。
リアーナは執事を呼び、急いでリネン室からホースを持ち出し、庭の噴水までホースを引いた。
すぐに警察が代わりに消火をするが鎮火しない。
煙を吸い、咳き込む。火の粉がリアーナのメイド服にも飛び移り、慌てて払った。警察は全員に避難指示を命令した。
一室は鎮火はしたが、リアーナはこの事件をきっかけで両親の実家へ戻る事になった。
隅々まで大空が広がるワイン畑、葡萄にとって気候が適温で素晴らしい農作地帯だ。
長閑な田舎風景を見ながらゆったりと馬車で到着した。
古めかしいが歴史のある我が洋館の近くには大きなワイン醸造所がある。
「たたいま戻りました。」
「お帰りなさいませ。リアーナお嬢様!!」
女執事のレベッカが温かみのある笑顔で迎える。
玄関ホールから二階へ続く真っ赤な絨毯を敷いた広い階段がある。
「心配だったのよ、リアーナ!!」
飛び出す様に客間から出てきたのはカトリーヌである母親。抱き締めて離さない。客間のソファーには父親のアンドレアが居た。リアーナが実家に帰ってきてからは父親は機嫌が悪い。
「ただいま帰りました。お父様。」
荷物は執事が二階へ持っていき、ソファーの前で佇む。
「あいつ、娘に毒を飲ませおって。」
深くソファーに座りながらもイライラしながらも赤ワインは手放さない。
「お父様。仕方ありません。そこはキルケー家の信用に関わるものですから。」
バイレードの手前、毒味をするのは当たり前だと説明した。
「死んだらどうするんだ?我が愛娘を毒味させるなんてとんだクズだ。あの屋敷には一切、我がワインの購入を停止する!!解禁日のパーティーも呼ばん!!」
父親の怒りはキルケー家に向かっていた。無理もない。
「でもお父様、冷静になって?毒味を勧めてきたバイレード大佐は今年もパーティーに招待するのでしょう?」
すると、父親の表情が急に元の表情に収まる。そして目を泳がすのだった。リアーナはやっぱりと目を細め、父親を睨み付けた。
「お父様、酷い。娘の命よりもバイレード大佐ですか!?」
娘のリアーナは帰ってきて初めて怒った。
「軍人には敵意は剥き出しには出来ない。どれだけ事業を努力してきたか、娘には分からんだろ!?」
いつもの父親だ。これがアンドレア・ロネ・ドゥオモ家の父親。テレサワイン王の考えるかなビジネス至上主義である。
「娘の命より、ご自分の事業の方が大事ですか!?」
リアーナはこういう階級におもねる俗物の父親が嫌いだった。
「父を責めるでない。手塩に掛けた娘を育てて、今年のパーティーでお披露目して耳目を集めるのが先決だ。これはリアーナの将来の為だぞ。」
ますます、親子はヒートアップする。これは母親も手が付けられず、頬に手を当て、困ってしまう。
「将来なんてまだ早いわ!!それに帰ってきてばかりの娘を労る前にまたパーティーの話なのね!!」
だから家を出ていった。知り合いのキルケー家のメイドとして働いたのは窮屈な家庭だったのが原因だった。
「何を言う!パーティーは毎年参加しろと口酸っぱく言ったのに何故、言う事を聞かないんだ!!」
赤ワインの唾を口から飛ばして言う。頑固な親父で融通が利かない。
「毎回、そうゆう事を言うからこの屋敷を出て行きたくなるんですよ!!娘の気持ちはお分かりですか!?」
この客間にあるワインを自慢気に持つ肖像画の父親もリアーナは昔から嫌いだった。二人のやり取りに困ったカトリーヌが一言、告げる。
「今回、バイレード大佐が来るかは分かりませんわ。身の安全を考えて、今年は何処のパーティーに参加しても危ないと警戒するかも知れません。」
冷静な口調で現在の情勢と今後を考えてた。父親はハッとして気が収まったのが少し反省した表情だった。
「今年こそ・・・機を熟した娘をバイレード大佐に差し上げる計画が。」
頓珍漢な父親にリアーナはビックリした。
突拍子もない計画だった。
ましてや軍人と結婚なんて。
「バイレード?」
リアーナは口の中の舌に重りがあるみたいに呟いた。
あのヒリヒリと痛い視線を向けて毒味しろと言った冷淡で伏し目がちの軍人と?
権力の為に・・・結婚?
「娘を人質にして権威と影響力の為に結婚なんて嫌です!!」
リアーナは踵を返して、自分の部屋に戻った。二階の落ち着いた部屋は景色が一望できるアンティークな窓と本棚とベットが置いてある。
「・・・もう、最悪・・・。」
リアーナはふかふかのベットにダイブして寝転がった。
後日、フェルマー刑事が話してくれたのは、捜査権限は王族の特殊機関に委譲されたとの話だ。
公に出来ない機密情報を警察から聞いた。
行方不明のサルトルの情報は目的地であるホテルには滞在して居らず、別ルートの国境を出たのではないかと推測、養子環境における問題なのか、元々の性質、殺人願望を持つサイコパスなのか、フェルマー刑事は考えていたのだが、ルート変更の国境がヴァルハラのスラム街だとの目撃情報があり、歴史的にここは危険地帯であるアステラスの領土の飛び地である。
つまり、サルトルはアステラス領土のスパイだとの結論に至った。
【続く】