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コンプレックスをちぎれ

腕振りがダサい走り方ってめっちゃダサく見えません?


もう一目で分かるじゃないですか、ああこの人昔運動部じゃなかったんだなとか、この人は綺麗だから陸上とかやってたのかなとかこの人は巨人の奇行種の元ネタになった人だなとか。
大人になって走ることは減ったけど、数少ないランニングチャンスで、その人がデキるかどうかがジャッジされる。世間とはそういうものです。恐ろしいものなのです。

仕事がデキるかどうかよりもそう、

大事なのは走り方。


ランニング中、家や店通り過ぎる時にガラス戸はいくつもあります。僕はガラス戸に自分の姿が映っているのを何度となく確認します。足は上がっているか、背中が丸まってないか、腕はしっかり触れているか。
2年前から走り続けているので鏡に映る自分の走り方も大分様になってきました。職場で子どもと共に園庭をマラソンしてたらこう言われました。

「走ってる時すごい姿勢良いね!」

これを言われたらもうその時点でエリートコースに乗ったようなものです。地元のフルマラソン大会にも出場し完走出来たことも大きな自信になりました。
自分に自信が持てるようになると人の事にも口出ししたくなるのが人間というもの。街中を走る自分以外の人のフォームも気になるようになってきました。自然とこの人僕より絶対走りこんでるわーとかこの人はランニング始めたてかなーとかが分かるようになります。上手い人からは教えてほしいくらいですが、始めたての人にはもうちょっと足が上がると前に進みやすいな、腕をもう少し振るともっとスピード出るかな、とか心の中でダメ出しまで出来るようになってきました。そのうち「これだけやれば速くなる!走り方チェックポイント」シリーズをTiktokやYoutubeのショート動画にあげて「あれ、この人顔もまあまあカッコよくね?」となりバズった結果、走る系Youtuberの方ともコラボしまくり、各地のランイベントにも引っ張りだこなインフルエンサーになってしまうかも。

んー、やってみよー♪♪



話を元に戻させてください😡(おめーだよ)
この季節になると保育園では運動会があるんです。運動会に向けて園でもかけっこ練習が始まる時期。子どもの憧れに大人がなる、というのが私の職場の理念。子ども達のかけっこ練習を終わるとすかさずリーダーの先生に「先生、走るよ!」そう言われました。子どもや他クラスの先生達も見守る中突然始まった40前半と30手前の大人の真剣勝負。見守る方も無意識のうち手に汗握ってしまうような、そんな張り詰めた空気が園庭中を包みます。

「よーい、ドン!」

さあ掛け声とともに走り出した二人の大人。スタートダッシュ出遅れたのはチャイティーソルジャー。差は2馬身といったところか。ここから差を縮めていけるか。レースは30mの直線、短距離なだけに純粋なスプリント力が試されます。勝負は一瞬だ、徐々に差を縮めてきたのはチャイティーソルジャー、差し切れるか?残り10mを切ったところで追いついた、逃げ切れるかリーダー、巻き返すかチャイティーソルジャー・・・!!


結果、

超ギリッギリで勝ちました。


まじで危なかったです。でも勝てて良かった、短距離走は練習してないとは言え自分は走り続けているというプライドもあります、僕はホッとしました。面白がった他のクラスの先生がその様子を動画で撮っててくれたので昼寝の時間にみんなで見返しました。そこにはハッキリと進撃の巨人のあの奇行種特有の腕がブランブランしてる走り方と全く同じ走り方で全力疾走する僕が映し出されていたのです。

え、きもちわる。


てか腕振れよ、よおこれで勝てたわ。
思わず僕は自分のフォームのダサさからそう口に出しました。するとレースを見ていた先生は僕に向かってこう言ったのです。

「まあ、お世辞にもカッコいいとは言えないよね~(笑)」


・・・


許せない!!!


僕の中の菊池風磨が心の中でそう叫んだのが分かりました。
そう、風磨はみなの心の中に生き続けます。風磨の怒りは僕自身の怒り、僕の心に火が付いた瞬間でした。
さらに話し合いにより運動会当日はなんとお家の人にも参加してもらって競争することに決定しました。ここまでになんとかフォーム改造を成功し、カッコいいフォームで1番を取らなければなりません。僕の修行の日々が始まりました。思い知ったのは長距離と短距離じゃ走り方が違うってこと。短距離の走り方を教えてくれるYoutube動画を見漁り、そのアドバイスを元に練習を始めました。

正直僕は運動が嫌いです、思い通りに体を動かせないから。自分はダメなんだなって実感するような思い出しかないから。運動してると出来なさ過ぎて自分が嫌いになるんです。小学校で逆上がりは出来なかったし、野球部ではコントロールも悪ければ肩も弱かったのでキャッチボールが大の苦手でした。筋トレも長くは続かず、ガリガリな身体がコンプレックスだったし、短距離走なんてもちろん苦手で女子にも抜かれてました。
でも、ランニングをするようになって分かったことがあります。
それは、

ちゃんと練習をすればこんな自分でもちゃんと結果が出るってこと。


去年から今までの自分が出来なかったこと、やらなかったことにリベンジする企画を勝手に一人でやってたんです。
逆上がりにキャッチボール(壁当て)、筋トレ。ランニングもその一つです。自分の中で目標を決めてそれを達成するまで続ける。そうしてやっていたら逆上がりは連続10回(止まってもいいから地面に足を着かずに)、バッセンのストラックアウトでは10球中9球ストライクを、筋トレでは懸垂が7回まで出来るようになりました。そして初挑戦のフルマラソンでは目標の5時間を大きく上回り4時間半で完走することも出来たんです。どれも別に誰にも誇るものでもありません。だけどやり続けてたらちょっとずつ良くなることを感じられて、それが嬉しかったんです。自分の体を動かせるようになってくると自然と自分にも少しずつ自信が持てるようになってきます。だから短距離走も練習すれば絶対目標に届くはずとそう信じて練習をしました。

そうして訪れた運動会当日、

こちらの呼びかけに応じてくれたお父さん3人と僕とリーダーの先生5人の命を懸けた死闘(レース)。


結果は3位でした。
1位はお父さん、そして2位はリーダー先生。

超負け。


めっちゃ負けました。まず1位のお父さん、現役消防士でした。

んなもん勝てるかい。


ほんで先生速くね?まさかと思うけど俺より練習してきたん?

普通に超悔しかった。おかげで次の目標が出来ました。もうこのメンバーでかけっこはおそらく出来ないでしょう、機会がないので。しかし短距離走について少し調べるうちにある一つの数字が目に入りました。

みなさんは、成人男子の100m走の平均タイムをご存知ですか?
平均で14秒だそうです。自分のタイムを計ってみると16秒でした。

みんなめっちゃ速くない?

2秒差って相当よ?でも今の自分が最低なんだったら練習すれば絶対にイケるという確信もありました。
誰も僕の足の速さなんて興味ありません。でも僕にとってこれは意味があることだったんです。学生時代のコンプレックスの一つを払拭できるかどうか、これが今の僕にかかっています。多分学生の時だって練習すればどれも克服出来たことなんです、やり方とか調べて実践してを少しずつ積み上げていけば。でも当時の僕はやりませんでした。よくいう負け癖ってやつが染みついてしまっているんだと思います。だから諦めてきた自分とまた一つオサラバするためのこれは儀式なんです。
やる前から無理って思ってたら出来るわけないんです、ちょっとぐらい自分に自信持って生きたいですよ。別に誇れるもんとかないけど。そしたら自分の嫌なところと向き合わないといけない事が出てくるんだと思います。そればっかじゃ辛いけど、そういう時も必要なんだと思います。それにそういう経験は書くことのネタになってくれます。
この目標を達成したところで誰も喜びません。僕しか。
でも達成したことで得られたナニカはきっと僕の文章にも何かをくれるはず、達成すれば今より少しだけ自分を好きになれる気がしています。今までもそうだったように。

選ばれなかったからって卑屈になりすぎる事なんてない、自分の出せる全力でやって失敗すればいい。失敗するのが通常運転。腕の振り方がキモくたって誰も気にしません。誰も僕に興味なんてありませんよ。だから何に取り組むかなんて何でもいい、自分で決めればいいんです。そこに自分がいればそれでいいんです。自分で選んだ事に自分が挑めていれば。

ダサくても走りましょう。何とかして前に行きましょう。止まってる方が何倍もダサいですから。


倒れるかよ、倒れるとしても前のめりだ

アニメ「スクライド」のカズマより

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