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負け犬

「室井慎次 敗れざる者」を観た。
今回の映画は2部作で次回は
「生き続ける者」だそうだ。

タイトルは「敗れざる者」だが
劇中、室井慎次は
ひたすらに、わかりやすく、はっきりと
「負けて」いた。
本人の言葉にも
「俺は負けたんだ」という台詞があった。

警察を改革することが出来ず
組織を辞め
田舎で里子を引き取って、暮らしている。

負け犬。
約束を守れなかった。
やり遂げられなかった。
結果がすべてだ。
その為に何を賭したとしても。

この映画は
世界中の負け犬たちの為の
映画ではないのか。
「俺は負けたんだ。負け犬だ」
室井慎次という人が
その言葉を吐いた時
何故か救われたような気がしたのは
わたしだけではないと思う。

ああ。
そのはずだ。
負けるはずなんだ。
だって、室井さんはちゃんとやったんだから。
ずっと正義を通して
現場を大切にして。
それならば
負けるはずなんだ。

涙は、何の涙だったんだろう。
自分にはまだ
この映画を観る資格が
あるような気がしたのかもしれない。
それが嬉しかったのかもしれない。

世界中の負け犬たちへ。
何度でも負けよう。
負けることこそが正義だから。
負けることにしか
現代における真実はない。
そんな当たり前のこと
わたしは本当は
自分ひとりで言い切らなくてはならなかった。

室井さんに助けてもらわないと
言えないようでは
劇中の新人警官のように
「大丈夫か?」と言われてしまうだろう。

わたしもまた、負けた。
だからこそ。
負けきった今だからこそ。
出来ることがある。

それは舌の根の乾かぬうちに
瞬きの速さで
また「負ける」ことだ。

何度でも何度でも
この命尽きるまで
「負けよう」

そうしてわたしも
いつかずっと先に
室井さんのような
人間になりたい。

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