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外に手を伸ばす
今新しい作品に取り組んでいる。
ケア。エンパワー。アウトリーチ。
そんな福祉用語が、書評の中に飛び交う。
力を、与える(エンパワー)
外に、手を伸ばす(アウトリーチ)
主体としての
自発的なケアとは何か。
ケアは相互作用に依るものであり
文化であり、救いだ。
そんなことを強烈に
わたしに思い出させてくれる
そんな脚本だ。
こんなに染み込んでくるような
台本を手にしたのは
人生ではじめてかもしれない。
大事で大事で
早く台詞を覚えて
自分の言葉として発せられるようになりたい。
ほんとうなら
公演が終わってもずっと
その言葉を手放したくない。
その人物がどんなに傷んでいても
その人になりたい。
骨の髄まで。
脳の神経のひとつひとつまで
彼女になりたい。
そんなことを思ったのは
人生ではじめてだ。
本番で緊張するとか
台詞がどうとか
そういう余計なことで
お客様にこの物語を届けられる
至福を
乱したくない。
自分のすべてを削って
この作品をやりたい。
削れ、削れ。
もう出ないと思ってもまだある。
どこまでも。果てまで行く。
この作品が
ほんとうの姿を
あらわしてくれるまで。