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哀しみはメディアなんだ。
愛とは哀しみである。
愛する人たちよ、どこにも世界は存在すまい、内部に存在する他は。
天使が人間に似ているのではない、人間が天使に似ているのだ。
コトバとは、音、色、光、声、イマージュ。
今この瞬間にも新しい命が生まれています。
生者によって「死」と呼ばれる新生。
見る、話す、触れる、立つ。
不安定とは、その人にとっては存在を懸けた、立つことに向けた試みが今なされていることを意味していないか。
傷を愛せないわたしを、あなたを、愛してみたい。
傷を愛せないあなたを、わたしを、愛してみたい。
さまざまの断片を繋ぐ
最後のピース。
わたしは果たしてどうするのか。
何を選び、何を選ばないのか。
ニガテだ。昔から。選ぶことが。
吐き続け、泣き続けた過去よ。
わたしに教えて欲しい。
わたしは今、何を選んだらいい。
どうしてこんなに先が見えない。
何重にも絡まりあった
愛という名前のしがらみの中で
はじめはそうではなかったことを
思い出している。
幸せとはもっと
簡単な言葉だった。
芸術とはもっと
まっすぐな直線だった。
以前ならわたしは言っただろう。
わたしの手は汚れたのだと。
今はそう思わなくなった。
だから話は複雑だ。
人間には嘘があり
嘘が誰かを守るネットになることもある。
ただ真正直で清廉なだけでは
つくってこられなかった
沢山の作品のことを思った。
つくるとき
わたしは傍若無人で
優しさより感覚を得ることを
優先したことが
確かにあったはずだ。
綺麗事で、もう自分を誤魔化せない。
それだけでつくれる
今回は作品じゃない。
でもどうせわたしの口は
綺麗事しか語れない口だ。
昔から。嫌になるほどの
偽善者の口だ。
とっくに岸辺に乗り上げて
乾きはじめた船の中で
わたしはもがいている。
愚かだ。滑稽だ。
せめて水の中で進んでいるなら
少しはマシだったろうに。
わたしはわたしが嫌いだ。
誰かなんと言おうと嫌いだし
そのことに理由なんかないし
それは生死の問題なんかじゃなかった。
わたしは、可哀想でも
優しくもなくて、ほんとうは…
ただ我儘で傲慢で
どうしようもない愚か者で…
わたしがわたしに思うのは
ただそれだけだ。
それだけだ。
愚か者。
考えるな。
考える暇なんかない。
君が偽善者でも、汚れていても
君を求めてくれる人がいる。
今のところは。
だから出ていくしかない。
船は水に浮かべなければならない。
わたしにはもう答えがわからないのだ。
己が何者であるのか。
どうすることが正しかったのか。
もうわからないのだ。
ずっと考えてきた。
苦しんできた、つもりだ。
それでも、わからなかった。
それでも、間違え続けることしか
出来なかった。
この海をひとりで抱えることはもうできない。
だからあなたに、海をあげる。
わたしにわかっているのは
こんなに醜い自分にも
こんなに迷っている自分にも
今やっている芝居だけは
すごく上手くいくことが
はっきりとわかっているということだけだ。
その喜びがわたしを支えている。
わたしの醜さから
気をそらせてくれる。
だからあなたに、海をあげる。
ほんとうの気持ちはいつも言えなかった。
それは芝居でだけ許されることだったから。
わたしは
いつか許されるだろうか。
今はただ海の中にいる。