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罪とは何か

人間のおかす罪とは何だろう。
どこからどこまでを罪と呼べるのだろう。

法律で定められたものが罪。
刑法か民法か、それともこの世の法か。

法律で罰せられるものだけが罪だろうか。

行為を伴わないいじめ。
そこはかとない空気としての無視。
誰が書いたかわからない掲示板の悪口。

長いものに巻かれてゆく生き方。
それによって切り捨てたもの、葬ったもの。
かつての恋人にした約束は
もう永遠に果たされないということ。
亡くなった人に
謝りたくて、叶わなかったこと。

罪なんて毎日おかしている。
少なくとも、わたしは。
息をするのと同じように
小さな罪が降り積もってゆく。

人には感情がある。
それが人生を複雑にさせる。

例えばわたしならば
資格をとる、大学へ行く、就職する。
そんな曲がり道もあった。
でも曲がれなかった。

感情があったからだ。
そのときわたしは家族のことしか
考えられなかった。
自分の将来のことを、したり顔で
誰かに話せるような状態になかった。

あの頃我が家は毎日
水浸しだったり、ガラスが割れていたり
誰かがいなかったりした。

それでも、自分の将来だと
そう思えるような性格ではなかった。
まだ十代だったけれど
こんなぐちゃぐちゃの部屋で
大学の願書がどうの、公務員試験がどうの
そんなものを書くことは
絶対にまともじゃない。
不思議に澄んだ頭でそう考えていた。

後で損をする。
そのこともわかっていた。
わかっていたけれど、そうなればいいと思った。
頭が良い悪いや
信用できる人間かどうかや
才能のあるなしを
今ここでしか決められないと言う誰かが
この先も決めるというのならば
決めればいい。

彼らのタイミングに
合わせることは出来なかった。
わたしは自分の家族が崩壊したものを
どうにかしなくてはならなかった。
大切なのは、何度考えても
そっちだった。

罪を抱えた女性を
いま演じようとして思う。
身体中がひりひりすると。

身体の中にいつ爆発するかわからない
爆弾を抱えているようだ。
火を避け、トラブルを避け
言葉を選び、穏やかなふりをして
やり過ごす。

でも無駄だ。
爆弾というものは
必ずいつか爆発するものだからだ。

人間に感情がある限り
規定通りにはいかない。
決して。

法律や科学や
ルールブックで
人間を縛ることは永遠に出来ない。
必ずどこかに
ネズミの抜け道があり
アリの巣穴がある。 
それを作り出すのは
どこまでも人間の感情だ。

わたしの爆弾は何だろう。
あなたの爆弾は何ですか。
そんなことを共に
正直に感じられるような。
そんな役にしていきたいと思う。

何もかもなくしたと
感情的になっている彼女を見て
あなたはまだまだこれからだよと
わたしは思っている。

形のあるものすべて失っても
わたしたちは
心と愚かさを失えない。

そうである限り
この世界に
息ができる隙間はある。

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