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地下アイドル界隈の人間関係の難しさ―女オタから見た地下界隈―

地下アイドルにはまってライブハウスに通い詰めていた頃私は、こんなに人間関係大変な場所があるのか? と思うことがありました。もちろん楽しいのですが。
地下って人との距離感が近いので、なんかもう年がら年中揉めていますよね。

友人にその話をしたら「東京は分断された街だ、世界一かも知れない」と教えてくれたんです。
東京ではたくさんの人に出会えるようで、実は自分と違う価値観の人とは出会えない。経歴や収入が大きく違う人と話す機会はない。
違う価値観の人とは住んでいる場所も、行くお店も行動範囲も全然違う」というようなことを言ってくれた。
彼女は学生時代の友人で教師なのですが、そのせいか例えるのが上手でいつもさりげなく心に響くようなことを話してくれるんです。
ライブハウスというのはアイドルという共通の趣味でわりあい色々な価値観の人が集まっている場所なのではないか? ということみたいなんです。

そうか、バックグラウンドが違って価値観違う人たちがあんなに密集していればそりゃあ年がら年中揉め事も起こるわけだよね……と私は納得しました。

思い返すと楽しいことばかりですが、実は私もまあまあろくでもない目にあったかも。
でもいちいち話し合おうとするのも周りを巻き込んで怒るのもマナーを守って下さい! とSNSでお気持ち表明するのも全部時間とエネルギーの無駄だと私は感じていました。
理解し合えない人はたくさんいる、色々な人がいる、そういうことです。
私にできるのはなるべく人との距離感に気を付けること、疲れたら無理しない、それくらいだなと思っていました。

アイドルさんの大変さに愕然としたし、飲み会やオフ会は困った時に逃げ場がなさすぎると感じたので1回で懲りてしまって行かなかった。
もちろん、ファンは常識的な人の方が多いと思います。でもたまに困ったことが起きてしまう。

そして変なことに気付いたんです。
私は趣味で読書とか映画の会に行っていたことがあるのですが、そっちは人数が多くなっても表面的には平和だった気がする。
よく話してみると、割と自分と似たような経歴の人が多かったんです。大学のゼミの先輩と偶然再会したことさえあった。
同質性が高い集団はコミュニケーションが円滑で関係が良好になりやすい反面、異分子が排除されやすくなるようです。
同質性が高ければ高いほど、より細かい差異が気になってくると思う。職場とか学校もそうですよね。

よく考えたら、地下でも話せるようになった人って少し自分と共通点があるように感じることが多かったです。
アイドルさんは教育の仕事をしていたと教えてくれた人もいるし、お母さんが司書だから本をよく読むと言っていた人もいる。カフェ巡りが好きで、銀座のカフェの話をしたら喜んでくれた人もいました。
ファンの人も話せるようになってよく聞くと出身地が近かったり、映画や本や美術館が好きだったり、文章を書くのが好きだったりしました。

ちょっとうまく言えないのですが、価値観が合わない人に自分の意見を押し付けず、無理に分かり合おうとせず、でも想像力を働かせる、色々な考えがあることを理解する、適切な距離感でやっていく、ということがいいのかなーと思ったり。難しいけど。
そうしているとふいに良い話を聞けたり、中には最終的に仲良くなれる人もいるような気がする。

私は現代美術が好きなのですが、東京都現代美術館の展示会「MOT Annual 2022」に行った時に「異なる背景を持つ人に目を向ける」「わかり合えない他者を受け止め、許すことはできるのか?」みたいな内容でタイトルがずばり「私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ」だったんですよね。
そういうことなのかな、と思いました。



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