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ときどき日記(655)公務員の異動はいつもいつも転職みたいなもの
日経夕刊(2024.9.26くらしナビ)に「増える『管理職』転職、失敗も」という記事があった。
自分は政令市の地方公務員として30数年奉職したので転職ではないが、市税の滞納整理、市街地再開発事業、用地会計、防災、庁舎管理、介護保険の認定事務、産業廃棄物対策、庶務労務に一般職員の立場で従事し、最下級管理職に昇任してからは、家庭ゴミの収集事務所の事務方、入庁時(昭和)とは全く様相を異にする電子化された市税滞納整理、同じ滞納整理とはいえ福祉の世界に属する国民健康保険料の徴収に従事した。
異動のたびにゼロから学ばねばならず、こんなの異動じゃなくて転職だよと思っていた。
公務員人生ラスト10年はまさに「管理職転職」であった。
記事見出しには「失敗も」「ミスマッチ」とある。自分は転職ではないが同じだとおもう。
政令市ともなれば、組織も大きく、それぞれに異なる空気感がある。だから「転職者が企業文化や人間関係になじめず」と同じ事が発生する。部下側から見ても「だが入社から2ヶ月ほどで周囲からクレームが出始めた。能力が伴わず、任せる仕事がない」的な状況は職員時代何度も見てきたし、最下級管理職になってからは部下からの不満がひしひしと伝わってきた。特に国民健康保険料の滞納整理の時は、自分が何もできていないことは十分認識していた。制度そのものを1から独学で学ばねばならず、前任者が無能だと資料といえるものは何も残っておらず、ゴミ屋敷に引っ越してきたも同然だった。ゴミ屋敷で独学で1から勉強はさすがに堪えた。年齢的なものもあったのだろう。燃え尽きとか心の定年みたいなものもあったかもしれない。
「転職者からも不満が漏れる」的状況だ。「入社して2日目には転職を後悔した」どころか、着任前の引き継ぎの時にはブタをつかまされたことを悟り、異動を恨み、心当たりがないのに何の報復人事だろうかとさえ思った。
国民健康保険料の滞納整理などは特に「企業文化に慣れる間もなく、結果を求められた。『上司の要求には応えられず、部下にはなめられて』1年半後には転職した」どころか、メンタル障害を惹起し、病気休暇の取得を余儀なくされ、これにより下位昇級に甘んじることとなった。
自分で主体的に転職しても「55%が『転職で後悔・失敗した経験がある』と答えた。」という。生殺与奪を握られ受動的にさせられる人事異動はもっと多くの割合の人が異動を恨むと思う。
「最も多かった理由(複数回答)は『組織の風土・文化が合わない』の30%。『やりたい仕事ができない』(23%)や『上司との人間関係』(22%)などの回答も目立った」ともいうが、これらも腑に落ちる。
30年間の職員生活で全く携わったこともなく、見聞も全くない国民健康保険に配属されるは「組織の風土・文化が合わない」に近似していると思うし、最後の職場では上司からパワハラに遭うなど、まさに「上司との人間関係」だった。
「管理職の転職ミスマッチを防ぐには」としていくつか提言してくれている。これは公務員の異動に置き換えられると思う。「転職希望者と企業文化を擦り合わせる機会を持つ」「上司・部下となる社員と話す機会を設ける」「管理職として担ってもらう仕事を明確に伝える」どれひとつとして公務員の世界にはない。
「管理職として担ってもらう仕事を明確に伝える」ひとつだけでもあればどれだけ良かったろうかと思う。
政令市の仕事は広く、事務職ひとつとってもいろいろな畑があり、様々な技術職や技能職も居て、事務職が少数派どころか1人みたいな職場もある。民間における管理職転職のように「必要な数の人材を採用することも大事だが、入社後に活躍してもらうことが重要」だ。役所用に換言すれば、定期的な人事異動も大事だが、異動後に活躍してもらうことが重要だと思う。
もう定年し、自分にとっては知ったこっちゃない話でもあるが、私のような悲劇を生まないためにも、この日経夕刊の記事を行政も参考にして欲しい。