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【1982】日本がエネルギー供給を再生可能資源によってまかなうことは極めて現実的である。
【1982年の卒論回顧】代替エネルギー開発におけるソフト・エネルギー・パス理論の有効性(6)
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2、 ソフト・エネルギー・パス推進の理論的根拠
今後ますます厳しさを増すことが予想される国際エネルギー情勢の下において、わが国も、エネルギーの安定供給の確保に万全を期さなければならない。〔表Ⅰ-1参照〕
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そこで、まず、わが国のエネルギー供給構造の特色を概観してみると、まず、第一に、エネルギーの海外依存度が非常に高い。「各国のエネルギー輸入依存度」に示すとおり、わが国はエネルギー供給の86%(注1)を海外に依存しており、これはアメリカの21.8%(注2)、西ドイツの57.1%(注3)、イギリスの19.8%(注4)、フランスの75.8%(注5)と比較しても明らかなように、主要先進国中で最も高い数字となっている。このことは国内エネルギー資源に乏しい我が国にとって、エネルギー供給の大半を海外に依存しているという状態は、非情に問題がある。〔表Ⅰ-2参照〕
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エネルギー問題を考えるにあたり、どれだけのエネルギーが必要とされているかという問題がある。
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省エネルギーをする際に考えられる方策として、必要とするエネルギー量を減少させる方法と、エネルギーを生産的かつ積極的に使うことによって、低エネルギー消費で供給する方法の二通りの考え方があるが、ソフト・エネルギー・パスは、ライフスタイルの変遷をしないことが前提となっているので後者を選択しなければならない。
これを実現するためには、現存の技術によって、エネルギー効率を高めなければならない。つまり、機能を低下させずに、最終用途エネルギー、総一次と一致させる必要がある。
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米国の省エネルギー対策責任者ロジャー・セントの「最小コストのエネルギー戦略」によれば、1986年から十年間の間に最も安いエネルギーシステムをとったら、どのようになるかを計算すると、省エネルギーが最も経済的で、「石油消費」28%(注6)減、「石炭消費」34%(注7)減、「電力消費」43%(注8)減になり省エネルギー対策資金は省エネルギーをしなかった場合のエネルギー施設の建設と比して17%(注9)安いとした。
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つまり彼によれば68年に省エネルギーが進められていたなら3分の1(注10)のエネルギーの浪費が防げ、資金面も17%(注11)節約できたことになる。
ところが、わが国ではエネルギー供給面での開発は盛んであるものの、ソフト・エネルギー・パスの中心となる省エネルギーについてはほとんど行われていない。
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たとえば、「昭和56年度資源エネルギー関連予算」によると、「電源脱石油化の推進」1024億円(注12)、「石油代替エネルギー開発・導入の推進」557億円(注13)、「石炭対策の推進」1387億円(注14)となっているのに対し、「省エネルギーの推進」3億円(注15)と、きわめて少額である。
エネルギーの量が限定されてくると、いかなる種類のエネルギーが必要とされるかという質的な面が問題となる。
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日本では、最終用途のエネルギーの約68%(注16)が熱の形態で、その温度はそれほど高くない。そのうちの半分以上(注17)は数百度で十分なものである。また、約20%(注18)は自動車等の燃料の可搬液体燃料で、残りの12%(注19)が電力が不可欠な用途に使われている。〔表Ⅰ-3参照〕
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実際にはエネルギー需要の16%(注20)が電力で4%(注21)の差が生じている。この4%(注22)は、電力を使わずにすまされる分である。
電力需要の増大により、発電所を作ることよりも、熱交換、断熱材、温室暖房、バイオマス等により、需要を満たすことをせねばならない。
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つまり、電力でなければならない部門に対する供給は、現在の発電所で十分になされており、冷暖房等の需要は、より安い断熱材や熱交換器によって十分にまかなうことができる。
さらに、諸々の悪影響を最小に抑えることができる。
従って、最も安価で安全なエネルギーを得るために各種の要素を検討すると、大規模集中型プラントの建設の前に、現在ムダに使用されているエネルギーの節約、既存の古い建物の断熱か建築への建て換え、電気器具のエネルギー効率の改善、産業用熱電力併給、小規模水力発電、風力発電、太陽電池、ソーラーシステム等を考えねばならない。
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日本の場合、その自然的、気候的条件から見て、再生可能なエネルギー資源に恵まれた国のひとつといえる。従って、日本がエネルギー供給を再生可能資源によってまかなうことは極めて現実的である。
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デンマークのベント・ソレンセンやカリフォルニア州のエド・コン社研究によれば、風力、小規模水力、太陽電池を組み合わせてゆくと、相互に補完し合うため、非常に信頼性の高い、安定した電力供給等のエネルギー供給システムを作り得るとしている。
(つづく)マガジン「ソフト・エネルギー・パス理論の有効性」に編綴