そのトラリピ、「有効証拠金」はちゃんと増えていますか?
トラリピをはじめとする「リピート系FX」、人気ですよね。
毎日少しずつ決済されて利益が積みあがっていくのは見ていて楽しいです。
でもそのトラリピ、「有効証拠金」はちゃんと増えていますか?
資産運用は「時価評価額」=「資産価値」が最重要!
資産運用をするなら、「時価評価額」、すなわち「資産価値」がちゃんと増えていくかが最重要です。
トラリピでは「有効証拠金」が時価評価額=資産価値です。
「預託証拠金」ではなく「有効証拠金」です。
運用終了して引き出そうとしたときに口座に残るのは「有効証拠金」なので、「有効証拠金」がちゃんと増えているかが重要です。
たとえば100万円の元本で今年の利益30万円!年利30%!などと言っている人をSNSでよく見ますが、その利益は「有効証拠金」がちゃんと増えている利益ですか?もしかして決済益だけ?
「預託証拠金」だけ増えて、その裏では決済益以上の含み損を抱えていませんか?
含み損が増えるスピードに決済益が増えるスピードが追い付いていないなら、その設定は「有効証拠金」すなわち「資産価値」をすり減らすだけです。
リピートFXの含み損は無くならない
含み損は待っていれば無くなると思っているかもしれませんが、無くなりません。理論上は無くなりますが実質無くなりません。
なぜならトラリピを撤退しようと思うタイミングは大半が想定以上に含み損が増えた時だからです。
含み損が0や少ないということは運用が順調ということですので、撤退しようとはなかなか思えないです。
想定以上の含み損になったとき、はじめて撤退したいという心理になります。
トラリピをはじめとするリピートFXは、レバレッジをかけた証拠金取引である以上強制ロスカットの可能性がありますので、現物取引のように塩漬けにしておくことが難しい問題があります。
ロスカットが近いと一刻も早く撤退したいという思いが強くなるはずですので、含み損が無くなる前に損切りやロスカットしてしまうという状況になります。そうなると含み損は確定損に変わります。
もちろん含み損が増えるスピード以上に有効証拠金が増えていけば何も問題ありません。
しかし残念ながらSNS上には含み損が増えるスピードに決済利益が増えるスピードが全く追い付いていない劣悪な設定が散見されます。
このような設定では「有効証拠金」=「時価評価額」=「資産価値」をすり減らしていくだけですので、「有効証拠金」が増えているかどうか、きちんと確認することが大切です。
もっと言うと、このような劣悪な設定でロスカットが近くなった時、含み損が減るまで耐える、追加入金でロスカットを避けるという選択肢をとれる忍耐力がある方は、株式インデックス投資の方が向いています。
S&P500やオルカンなどの株式インデックス現物なら○○ショック等で下落してもロスカットはないため、忍耐強く待っていればほぼ確実に元の水準まで戻りますし、下落時に追加購入できればリターンも増やせます。
その設定、株式インデックス投資より優れていますか?
こちらはトラリピのマネースクエア公式が提供している戦略リストです。公式ですので、パフォーマンスもきちんと有効証拠金の増減額で表示されています。
金融のプロが考えた戦略だけありどれもプラスで、AUD/NZDダイヤモンド戦略は167.05%とすごい成績を出しています。
でもこの戦略、株式インデックス投資と比べるとどうなのでしょうか?
AUD/NZDダイヤモンド戦略は2020年11月26日に100万円の元本で設定され、2024年3月頭時点で167万円に有効証拠金が増加しています。
これと同じ期間、人気のS&P500に投資した場合どうなるか計算してみます。
S&P500の2020年12月の始値は3645.87ドルで、2024年2月の終値は5096.28ドルなので、139.8%のパフォーマンスということなります。
これだけ見るとダイヤモンド戦略の方がよさそうですが、トラリピはこの期間中、NZDの対円レートが大きく上がっているため、リピート1回あたりの決済益が大きくなる円安メリットを受けています。
同じように、S&P500も円建てで考えるとどうでしょうか?
2020年12月のドル円レートは104.296円ですから、この時のS&P500のレートは円換算380,250円です。
同様に2024年2月のドル円レートは終値149.986円なので、この時のS&P500のレートは円換算764,371円です。
つまり、この期間の円建てのS&P500は201%のパフォーマンスとなります。
2020年12月頭にS&P500に100万円投資していれば、2024年2月末には201万円になっていました。
なお一括投資ではなく毎月一定額を投資するドルコスト平均法積立の場合、毎月の始値で積み立てたと仮定して、2020年12月から2024年2月末までの平均取得価格は円換算527,137円ですので、145%のパフォーマンスということになります。
レバレッジをかけない現物取引でこのパフォーマンスですので、レバレッジをかけてロスカットの可能性があるリピートFXを運用するなら、本当にインデックス投資を超えられるのかよく吟味したいところです。
ちなみにその他の代表的なインデックスの、NASDAQ100、オルカン(ACWI)、日経225、TOPIXのパフォーマンスは次の通りです。
マネースクエア公式が推奨する世界戦略の通貨ペアである、EUR/GBPは2021年5月13日から、USD/CADは2022年5月16日から設定されていますが、同じ期間のインデックス投資と比較すると、すべての指数に一括投資どころか積立投資にもパフォーマンスで劣っています。
為替リスクもロスカットもない日経225やTOPIXの現物にパフォーマンスが劣る設定を、レバレッジをかけて運用するメリットは何なのか、よく考えた方が良いのではないでしょうか。
なぜリピートFXが人気なのか
上にあるデータをみると、マネースクエア公式が推奨している設定ですらインデックス投資に勝てる可能性があるのはAUD/NZDダイヤモンド戦略のみです。
ではなぜリピートFXが資産運用として人気を集めているのでしょうか。
それはアフィリエイト報酬の高さと見た目の利益率の高さにあるのではないでしょうか。
アフィリエイト報酬とは、商品(この場合FX会社やサービス)の広告記事を書き、広告読者が口座開設や取引を行うと報酬が支払われるシステムのことです。紹介料と言い換えても良いです。
このアフィリエイト報酬ですが、SBI証券や楽天証券などの大手の場合、紹介料は1人当たり数百円~という報酬しかもらえません。(何百人何千人と紹介する大手アフィリエイターは別ですが)
一方でリピートFXのような高リスク商品の場合、紹介料は1人あたり1万円以上~と文字通り桁違いの報酬がもらえます。
このため金融系アフィリエイター達はこぞって高リスク商品の広告を書きます。
しかもリピートFXは、どのような設定であっても決済益の利回りだけ見ればインデックス投資を超えているように見える場合が多いです。
含み損が大きく実際は資産価値が減っていくような設定だったとしても。
決済益は実際に発生している利益で含み損は未実現の損失のため、決済益こそが重要だと言葉巧みに言われれば信じてしまうことでしょう。
このため決済益が大きくなりやすいリピートFXは人気を集めているのだと思います。
しかし上でも書いた通り、事実上含み損は実際に発生している損失そのものであり、決済益から含み損を引いた利益こそが真の利益であり真の利回りです。
真の利回りを見た時、インデックス投資の利回りを超えていれば今後のリスクはどうなのか、超えていなければそもそも投資する意味は何なのか、よく考えるべきです。
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