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友(強敵)との再会。15年後の貴乃花」の巻

赤坂でラーメンを食べていた27歳の時、私は何か落ち着かずにいた。
慣れない「赤坂」という街がそう感じさせるのか?
カウンターしかない店内は、体重100キロを超える私には狭く感じるからか?
そのどちらでもない「何か」ということはわかっていた。
私の中の細胞が、店にいることを拒否してくる。
怯えている?私の細胞が何かに怯えている。何に?何かが来るというのか?とんでもない強者が?
いや、落ち着け!
別に元横綱、貴乃花親方が突然ドアを開けて入ってくるわけでもないだろう。
ドアが開いた。
元横綱、貴乃花親方が入って来た!!!
これか!ずっと感じていた「何か」の正体は!
現役引退後、親方となり、だいぶスラっとした体形になったとはいえ、ビリビリと伝わってくる覇王色の覇気。相変わらずだ。

15年振りの再会。
この出会いは偶然か、必然か?
神のイタズラ?いや、神のご褒美だ!
私はこの時をずっと待っていた。
15年前、何も出来ずに敗れたあの日から‥
あれから中学、高校、大学と柔道に明け暮れた。
日々強くなることだけを考えていた。
後に金メダリストとなる方々とも戦った。勝負の怖さ、勝利する喜び、負ける悔しさ、負けることでしか学べないことの多さ、努力と才能、秩序と矛盾、閃きと葛藤の日々だ。
何が言いたいかって?
お陰で強くなれた。

決着をつける時が来た。
「光司、表で待っているぜ」
「のり、良いのか?俺は今、ここでも構わないんだぜ」
「こっちは15年もアンタを待っていたんだ。邪魔が入ったらつまらない」
「15年か‥随分待たせた。ファンサービスも横綱の仕事だからな」
そんなような話を心の中でした。
(勝手な妄想です)

昂る気持ちを抑え、私はラーメンを食べ終え早々に店を出た。
店の横で15分くらい待っていた。食べ終わった貴乃花が店から出て来た。
時は満ちた。
行くぞ!ビビるな!

私「あの〜すいません。私、親方の大ファンでして、握手して頂けないでしょうか?」
親方「良いですよ」
私「ありがとうございます。昔、千葉の鴨川で親方と、ちびっ子相撲で対戦させて頂いたことがありまして、ずっと応援してました」
親方「ありがとうございます」
私「あと写真もお願いして宜しいでしょうか?」
親方「良いですよ」
優しかった。強くて優しい。最高の人だ。
15年前、サインも写真も貰えなかったから、スゴく嬉しかった。

しかし、その後がまずかった。
外国人の団体旅行客がいた。
親方に気づいた通訳が相撲の横綱、「グランド チャンピオンがいる」と言ってしまった。
テンションが上がった外国人旅行客に、あっと言う間に囲まれてしまった。
私のせいで親方にご迷惑をおかけしてしまう。申し訳ない気持ちだ。
ん?あれ?おかしい、囲まれているのは私だ。
「take a picture」
どうやら太っている私を横綱と勘違いしたようだ。

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