バスの中に座っている夢の話(禍話リライト/忌魅恐NEO)
夢って、寝てるあいだ実際に起きていることを脳がキャッチしてて、それを夢として認識している、っていうことがあるらしいです。
いつも見ている同じ夢があるなら、それは就寝中によく周りで起きていることの反映なのかもしれないですね。
ある人が「止まったバスの中で目が覚める」という夢を何度も見るという話をしてくれたんです。
一人暮らしの男性の方で。二、三年前から繰り返し見ている夢だそうで。
その夢はいつも決まったパターンをなぞっているそうです。
気付いたらバスの右側の座席に座っていて、車内には誰もいない。
周りを見るとバスは広い駐車場のようなところに停車しているそうで、
たぶんバスが営業後に入る車庫みたいなところだと思う、とその人は言っていました。
現実では運転手さんが起こしてくれるはずなのでありえないことだと思うんですけど、
寝過ごして降りそびれたたままバスが車庫に戻っちゃったのかな、って夢の中では思っているそうで。
困ったなあと思いつつ、なぜか立ち上がることができないそうです。
すると左斜め後ろくらいから咳払いが聞こえて、身動ぎするような気配がして。
もう一人バスの中にいるみたいなんです。
さっき周りを見たときは誰もいなかったはずなんですけど。
彼自身はバスの前方の席に座っていて、気配がするのは結構後ろのほう、
具体的に言うと、バスって車体の中間に乗降口があるじゃないですか。蛇腹式にドアが開くタイプの。
その乗降口を挟んでさらに後ろあたりに気配があるんだそうです。
かなり離れた席なんですけど、もう一人の気配に気付いた時点で急に怖くなって、振り返れなくて。
するとそのもう一人の乗客が、何かをブツブツ呟き始めるんです。
「△△さんが乗ってくるなら良いけど、×××さんだったら嫌だなあ」
みたいな内容で。
それは中年男性の声で、独り言みたいなんですけど、
なんだか「わざとこちらに聞かせている」ように感じるらしくて。
それがすごく怖いんだそうです。
ちなみに「△△さん」「×××さん」というのは、私やその人が意図的に名前を伏せているんじゃなくって、夢の中でも聞き取れないそうで。
それぞれ違う名前だっていうことぐらいしかわからないらしくて。
独り言はどんどん大きくなっていって、
「「△△さんなら良いけど×××さんだったら嫌だなあ!!」」
もはや大声と呼べるくらいの声量になるんですけど、
そこまでになっても肝心の名前の部分は聞き取れないんです。
うわ嫌だな嫌だな、って思ってると
背後の蛇腹式のドアが急にバン!!っと開いて
人がぶわあああっと乗ってくる気配があって
その人は振り返れないんですけど、人がたくさん入ってきた熱気みたいなのが伝わってきて
「うわああ、乗ってきた!!もうだめだ!!」
そう思ったところで目が覚める。
それがずっとなんです、と彼は言いました。
「昔一人でバス寝過ごしたことがあるとか、そういう経験ないんですか?」と聞いてみたんですけど、特に心当たりはないようで。
なんか気持ち悪い夢で、嫌だねって。
最近、同じ人からまた連絡があったんです。
「引っ越しました」って。
学生時代から十年以上同じ家に住んでいたと聞いていたので、あれ、なんで急に?と聞いてみたんですけど
「最近になって、あの夢の内容が変化してきたんです」、って。
自分がバスの右側の座席に座っていて、左後方から声がするところまでは同じなんだそうです。
ただ、今までだったらドアがバン!と開いていたんですけど、そこからが少し違っていて。
バスの降車ボタンっていうのかな、
あれが「ピンポーン」って鳴るそうなんです。
完全にエンジンも切られてるバスなのに。
左後ろのやつが押してるんです。
変な独り言の後に、「ピンポーン」「ピンポーン」「ピンポーン」って、繰り返し。
それからバンバンバン!って、大人数が蛇腹式のドアを叩く音がするんですって。
流れとしては、「△△さんなら良いけど×××さんだったら嫌だなあ!!」の後に、「ピンポーン」「ピンポーン」、ドアがバンバンバン!!って。
でもそのドアが開くことはないみたいで。
もうやだ、入るんなら入ってきて!!って、余計に怖くなって。
その人、寝るのが怖くなっちゃって、軽い不眠症みたいになったらしくて。
最近ではもうその夢が始まったら「夢だ」って気付くようになったらしいんですけど、
どうしてもクライマックスまで目が覚めないそうで。
それもまたキツくて。
ここまで聞いて「あれ、引っ越しの話は?」って思ってたんですけど、
その続き聞いて合点がいきました。
ある日、またバスの夢を見たそうなんです。
大声が来て、「ピンポーン」が来て、バンバンバン!が来て。
でもその日はそこまで来ても目が覚めなくて。
ふっと「ピンポーン」が止んだんだそうです。
あれ、止まったな?って思ったら、
一拍置いて、一際大きく「ピンポーン」が鳴りました。
それでぱって目が覚めて。
初めて気付いたんだそうです。
あ、今まで鳴ってた音、これ降車ボタンの音じゃないって。
これ、うちのインターホンの音だって。
自分が住んでる部屋のインターホンが鳴ってたんです。
それで「あれ、これ鳴ったの夢か現実かどっちだ?」
って混乱しながら起き上がって、
その時やっとすべてに気が付いたそうです。
その人、ベッドで寝てるんですけど、
ベッドの右側が壁にくっつくような配置にしてて。
で、ベッドに寝た状態から左後方っていったら、玄関になるんですって。
なんで気付かなかったんだろう。
ベッドがある居室と玄関の間にはバスルームがあって、
バスルームの扉は蛇腹式なんです。
バスの乗降口みたいな。
あ、これ、この部屋、って思った瞬間
後方でドアがバン!!って開いて、
少なく見積もっても六、七人がバタバタバタ!!ってなだれ込んでくる音がして
その瞬間さすがに気を失ったそうです。
ぱっと目が覚めて、あれ、今の夢!?って
ベッドから飛び起きて部屋見回したら、中扉が変な感じで開いてて、
バスルームのドアも、寝る前に絶対閉めたはずなのに開いてて。
「あ、あの夢は現実に起きてたことを自分の中で勝手にバスっていう設定に置き換えてたんだな」って気付いて、もう引っ越しましたよ。
そう言ってました。
気になって調べたそうなんですが、住んでたマンションは事故物件でもなんでもないらしくて、変なことは起きていなかったそうです。
ただ何かあったとすれば、そのマンションでじゃないんですけど、以前に近くででっかい事故があったらしくて。
それから引っ越す時、普段行かない駐車場の裏に行ってみたそうなんですけど
そこに何かの供養塔みたいなのがあって。
でも書いてある日付はその大きな事故とは全然違う日付だったそうです。
正確なことはわからないけど、きっと方角とかの関係で
ちょうどあの部屋が「よくないもの」が全部来る位置だったんだなって。
「それに気付かず、僕はこの二、三年ずっとバスの夢だと思い込んでたんです」
あなたには繰り返し見る夢はありますか。
この記事は、禍話インフィニティ 第二夜(2023/07/08配信)より忌魅恐NEO「バスの中に座っている夢の話」(45:02頃~)を再構成・加筆したものです。
記事タイトルはwiki(https://wikiwiki.jp/magabanasi/)からお借りしています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?