見出し画像

日記8/28 台風、一目連、雷門

 台風が頻繁に報道される今日この頃。

 あまりにニュースで「恐ろしい」「恐ろしい」とまだ上陸前に報道するのは、実際の威力はともかく、台風が畏怖の対象として神格化されやしないかと思う。

 風神雷神といえば、俵屋宗達の日本画だけれど、自然現象の雷や暴風は世界各地で神と結びつけられた。
 日本でも日本神話から民間伝承まで、様々な雷神や風神がいる。

 一方で古来の神々は、実際の自然現象以上み摩訶不思議な現象を起こしたり、人間の助けをすることもある。

例えば一目連(いちもくれん)という神がいる。

水木しげる「一目連」

 一目連は、全国に祀られたり伝承を持っている。
三重県桑名にある多度神社にいる一目連は、「一目連」という山から雲と共に現れ、数百件の家々を覆  い潰し、地中に埋めてみせたという。
 他に一説として普通の台風と違い、一目連の風が通るのは一本の路のみであり、それ以外には全く風の跡がない、などといった妖怪っぽい話もある。

 静岡県では、「悪禅師の風」と呼ばれる袴を着た人型の風が現れ、一目連の同類として紹介される。
 悪禅師は武芸を使う僧侶のことだけれど、大体は鎌倉幕府にいた阿野全成のことを指す。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にも登場した。最後は源氏の後継者争いに巻き込まれ、誅殺させられた。


 ドラマ版では、普段は愉快で尻に敷かれがちな悪禅師であった。
 しかし終盤、死を悟った彼が命を賭して念じると文字通り雨風が吹き荒れる演出があり、あれは「悪禅師の風」と呼ぶに相応しかった。
 もし彼がその後、「悪禅師の風」として上記の巨大な一つ目の存在になったとしたら、私としては複雑な心境だ。


 話を一目連に戻すと

 伊勢では一目連が日本神話に登場する天目一箇神(あめのまひとつのみこと)という、鍛治と台風の神と同一視されている。
 ここでは村人の祈りを聞き届け、願いを叶えてくれる存在ともなる。
 大雨で村が水没しかける中、一目蓮に村人たちが助けを求めると水が引いたなどという話がある。

https://tadotaisya.or.jp/%e5%88%a5%e5%ae%ae%e3%83%bb%e4%b8%80%e7%9b%ae%e9%80%a3%e7%a5%9e%e7%a4%be/


 雷や雨は完全悪というわけではない。雷のことを稲妻(いなづま)、春分の末候を「雷乃発声」、水田に雷が降ると豊作となるなどと言われるように、畏怖であると同時に吉兆の知らせでもある。
 風が土や水を掻き回すことで、山川から農耕地にかけて栄養がうまく行き渡ると言う話は、台風の本によく書いてある。

 現在の科学社会、経済社会では、電車が止まる方が大地が慣らさせることより損である。
 温暖化などで威力が強まってはいるけれど、二酸化炭素と一目連と無為自然は円環を作るものとして連想されない。

 それでも、いくら科学により風速や進路や実況をしたところで、台風はカオス理論、即ち決定論的カオス。
 「最初のデータが少し違うだけで結果が大きく異なるせいで、方式は立てられるが予測不可能(カオス)」。
 ただただ恐怖のみが現代社会の都市部でも解説され、実況者は神々の恐るべき業を現地まで赴いて全国へ伝える。
 たった1人の僧侶の想いで、大きく変わってしまう天候だというのに

 そうして晴れの日には、外国人旅行者が増えたとして、浅草の「雷」門を映しているのだから、報道員が意図してないとはいえ我々は日々風神雷神の偉業をメディアに示されているわけである。


 そんなこんなで、夏も終わりだが台風が日本列島を大きくなぞってくるらしい。
 ただただ恐れるよりは、我々も一目連も、自然の理にいる存在だと、過度に恐れず、けれど対策は万全にしたいなと思う今週の後半であった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?