雑音
シャワーを浴びましてから、
「いけねっ、着替え出してねえや。おおい、わるいんだけどパンツ持ってきてえ!」
なんて。
けっきょく素ッ裸でパンツを取りにいく、チャッキチャキの独身です。
ツカミにてご承知のように、なんら有益な情報を発信しない、というかそんな意識すらない蒙昧なペンペン草の戯言でありますので、洟でもひっかけるくらいがちょうどよろしいかと思われます。
先日、法事のために田舎の山のほうへ出張ってまいりました。
お寺さんに到着しますと、ご住職が急な他家のご不幸によりそちらに出ざるをえず、その代わりに若いお弟子さんが法要をお務めになりました。
「たいへん、えぇ、恐縮では、えぇ、ありますけど、えぇ……」
アア、着慣れない袈裟にくるまって緊張してらっしゃるんだなァ、と。それを受けて大人でありながら大人になりきれない伯父と私で、
「さすけねえ」
だの、
「ゆっくりやらっせ若え衆ィ」
だのと声をかけました。
若え衆……?
袖で額を拭いながら、なんだコイツらと言わんばかりに、より困惑したような微笑みを浮かべてお弟子さん、お経を詠みはじめます。
終わってから木魚のビートが合ってないだの、般若心経は「ギャーテイギャーテイ」までいかず、「ムーケーゲームーケーゲー」止まりだっただの批判される始末ではありましたが、供養された祖父はきっと、愉快に笑っていたことでしょう。
その晩に泊まった宿で、久しぶりに会った従兄に平素のコンディションの悪さを訴えつつも、盃を楽しくやったりとったりして。
左前なのは私の経済で、右肩上がりなのは中性脂肪とΓーGTPの数値なんだ。
だの、
「お酒」と書いて「お嫁」と読み、「お嫁」と書いて「お酒」と読むんだ。
だの、
そんなことばかり言ってついに従兄を呆れさせ、これまた久しぶりに会った父が、孫に背負わせるランドセルはいつ買ったらいいんだ、なんてことを言うもんですから林修先生よろしく間髪入れずこれに答えて、
今でしょ。仕事用のリュックが壊れて困ってるんだ
なんて。
ああ、なんたる不孝でありましょう。手を拍ち叩いて快哉を歌うのは、ひとしく独身の伯父ばかりという。
誰しもが味わうであろう長距離ランナーの孤独ではありますが、たいていの方が折り合いをつけてゴールテープを切るでしょう。しかし私は、走るのをやめてしまった。
なぜ立ち止まっているのか、それはまた、いずれコンディションのわるいときにでもお伝えしましょう。
しかし私は、火星に置き去りにされたラジオ。
ということで、皆さま、安全にご通過ください。
では、また。
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