値上げの時代は、ダイナミックプライシングが重要になってくる。
『プライシングの奥深さ』について
社会派ブロガーちきりん氏著書。
”マーケット感覚を身につけよう”という本があります。
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10万部売れており、今でも増刷されたり、ロングセラーで、ベストセラーです。
非常に人気の高い本です。
この中で語っている一つが、『プライシング能力を身につけましょう』ということです。
私たちが普通に生活していると、人が考えた商品を購入しています。
商売をしている人は当然、自分の商品やコンテンツをいくらで売るかという価格設定を判断しなければなりません。
しかし、
会社員で給料をもらっているような人は、価格設定を行ないません。
商品の価格は誰かが決めて、自分はそれを買うかどうか判断するだけという感じになります。
価格を自分で設定することがないため、”物の価値”が自分にとっての適正な価格が分からなくなります。
これは、「正しい答えがあると思い込む」と同じ話ですが、ある物がいくらが正しい価格なのかと考えてしまう間違いを犯してしまいます。
このプライシングは本当に奥深く、考えることが多いです。
今日はそのことについて、いくつかの事例を出しながら取り上げます。
ダイナミックプライシング
まずは、ダイナミックプライシング。
これは、新幹線や飛行機の公共交通、ホテルでは以前から始めており、最近はディズニーランド、ユニバーサルスタジオなども始めています。
ちきりん氏は、10年前からこれをもっと導入すべきだと話しています。
これは、需要と供給のバランスに合わせて価格を柔軟に変える方式で、飛行機やホテルなどは昔から”それ”でやっています。
お正月などは非常に運賃が高く、ハイシーズンでない時の平日などは非常に安い価格になります。
しかし、
新幹線は飛行機と同じ用途で使われるのに、お正月でもお盆でも殆ど価格が変わって来ませんでした。
今後は変わっていくと思いますが…
JR等の鉄道会社は、価格をあまり上げないので、需要調整が働きません。
結局、飛行機は年始年末にかかると非常に運賃が高くなるので、それを避けて帰ろうとする人が出てきます。
価格によって需要をバランスさせると、全体としては売れる席が増えるようになります。
それくらい価格を変えていかなければいけないのに、今までは、あまり意味がない位の価格設定に感じることもありましたが…
これも少しずつ変わっていくと思います。
ディズニーランド等でも、例えば土日やゴールデンウィークなど非常に混む時だけ、その価格を大幅に上げるというのは意味があります。
そうすると、
平日に休みを取れる人は平日に行こうというインセティブが発生する為、土日の混雑が減り、ディズニーランドは利用しやすくなり、全体としての売り上げが増え、みんなで待ち時間が減って全員がハッピーになると思います。
また、
並ばずに済む為、ファストパスのような有料オプションを利用することも、ダイナミックプライシングの一つになります。
長い列を待って入る人とは違い、例えば1つのアトラクションに2000円出すと並ばずに済むというのも、日本のディズニーランドで始められています。
5〜6年前から、イタリアの有名な美術館などは、特定の日に並ばずに入れる権利を1000円や2000円で販売していたと思います。
このようなサービスは、特に日本から遠く離れたフランスまで行く人にとって、限られた滞在時間を有効に使うための貴重な選択肢になります。
1000円や2000円という価格は、その時間を購入することを考えると非常に安いと感じられます。
この事例からわかるように、”同じものであっても、人によって感じる価値は大きく異なる”。
これが、ダイナミックプライシングの本質なのです。
『北陸応援割』や『元気キャンペーン』短期のプライシング戦略は、市場を歪めてしまう。
コロナ禍での「Go Toキャンペーン」や「旅行支援」。
最近も、能登半島地震の観光支援対策として「北陸応援割り」といった短期間の支援が始まっています。
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このような、短期間だけのプライシングは、「旅行支援の期間中だけ旅行をして、それ以外は旅行をしなくなる」その為、市場価格のバランスを歪めてしまいます。
このような旅行支援も、平日だけ還元率を高くして、休日は低くする等の変動価格にする必要があるのです。
また、上限を変えることで、以前は高級ホテルが満室になっていた状況を変えたり、出張での使用を制限したり、補助金による短期的なプライシングによる様々な問題を引き起こす事も考慮する必要があります。
旅行支援が始まると知れば、人々はそれが始まるまで旅行を控え、支援期間中にのみ旅行することを選択するようになってしまいます。
これにより、時期によって需要が大きく変動し、市場のバランスが崩れることになるのです。
また、
地域限定のキャンペーンや、特定の条件下でのみ利用できる割引なども、短期的な価格変動を引き起こす例です。
物価高に困っている人を支援する対策の一環として、『TOKYO元気キャンペーン』が始まっています。
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また、
「行政Pay」のようなもので、特定の地域、例えば「世田谷Pay」のように、世田谷の人が経営している店だけで使える仕組みもあります。
このような仕組みでは、特定の期間だけ何%かの還元があります。
すると、セブンイレブンでタバコを1年分買い占めるような人が出てくるかもしれません。
その人はタバコを安く買えますが、その分のお金は世田谷の税金で賄われているため、これが正しい税金の使い方かどうかという疑問が生じます。
このような施策は、一時的には利用者にメリットをもたらすかもしれませんが、長期的には市場に悪影響を及ぼす可能性があります。
短期的な補助金支援は、価格を歪めるという様々なデメリットも生じるため、注意が必要です。
まとめ
これらの例から分かるように、価格設定とは単に数値を決めることではなく、その背後にある価値を理解し、適切に評価する能力が求められます。
マーケット感覚を身につけることで、自分自身のコンテンツに価値をつけたり、他人の価値観を理解したりすることが可能になります。
特に、メルカリのようなプラットフォームで出品者となる経験は、この能力を養うのに役立ちます。
最後に、消費者としては、特別な割引に飛びつく前に、自分にとってその商品やサービスがいくらの価値があるのかを冷静に考えることが重要です。
マーケット感覚を身につけることで、必要ないものにお金を使うことなく、本当に価値のあるものに投資できるようになります。