鈴木エイト氏とは何者か①:ズブズブの論拠は何か
安倍元首相暗殺事件の犯人、山上徹也が動機を統一教会への恨みと供述していたこともあり、事件後間も無く、統一教会に詳しいと称する紀藤正樹弁護士やジャーナリストで前参議院議員の有田芳生氏がテレビに出演し、統一教会について解説するようになった。しかし、統一教会をよく知る者なら分かることだが、彼らの情報はかなり古い。30年前の情報をあたかも現在進行形であるかのように語っていただけだった。
カビの生えた情報ばかりの中で登場した鈴木エイト氏
彼らの情報を鈴木エイト氏(ジャーナリスト、活動家)流に表現すれば、黴(カビ)の生えた内容ばかりだ。それはきっとエイト氏も感じていたのだろう。エイト氏は自らを「統一教会と安倍晋三元首相のズブズブの関係を明確な論拠で語ることができるのは私以外にいません」とツイッターでアピールし続けた。
その甲斐もあってか、7月末頃から彼は頻繁にテレビに出演し、統一教会について解説するようになった。たしかにその真偽はともかく、紀藤氏や有田氏のようなカビの生えた情報ではなかった。
ところで、エイト氏は、ツイッターで主張していた「統一教会と安倍晋三元首相のズブズブの関係を明確な論拠」を提示できたのだろうか。
まず、山上が読んでいたかもしれないとされる鈴木エイト氏が主筆の『やや日刊カルト新聞』の中から、宗教と政治に関する特集記事『【衆院選2021】総力特集・カルト候補ぜんぶ載せ!』を見てみよう。
この記事の中で言及されているが、エイト氏が扱ってきたのは統一教会で、他の宗教は『やや日刊カルト新聞』総裁の藤倉善郎氏が扱ってきた。
統一教会の情報は集めてきたが…
記事によれば、宗教(記事ではカルトと表現)と関わりのある候補者の中で、統一教会と何らかの関わりがあった政治家は95人(うち自民党が85人)と他の宗教と比べて、その数は一番多い。その次に多いのが、「不二阿祖山太神宮」で、51人(うち自民党が42人)の候補者と関係があったとされる。
ところで不二阿相山大神宮は、私の理解ではあるが、統一教会のような全国に支部や教会がある全国組織ではない。その点を考慮すれば、統一教会と比べ、不二阿相山大神宮の政治家との付き合いは、かなり活発と捉えることもできる。
次に、「政治家への献金」はというと、深見東州が教祖の宗教団体「ワールドメイト」が、献金回数は99回で合計金額は1,490万円と回数も金額も突出している。次は統一教会、とはいうものの献金回数が5回で合計金額は41万円とワールドメイトと比べるとかなり少ない。
また記事から分かることだが、一人の候補者が統一教会ともワールドメイトとも関係があったりするように、一人の政治家が複数の宗教団体と関係を持つケースは結構ある。
以下の小川寛大氏(宗教ジャーナリスト)による東洋経済の記事には、多くの政治家が「多種多彩な宗教団体と接点を持ってきた」現実について書かれている。
エイト氏はなぜズブズブと思い込んだのか
宗教学者の島田裕巳氏はというと、統一教会と自民党がズブズブとは思っていない。
エイト氏はズブズブと思い込み、島田氏はそうではない。その違いはどこから来るのだろうか。
一つには、エイト氏が知る情報、及びその理解についての偏りが挙げられよう。エイト氏の宗教と政治に関する情報は統一教会に関わるものが殆どで、他の宗教に関する知識は乏しい。
一方、島田氏は統一教会だけではなく、創価学会をはじめ、その他多くの新宗教の実情、及び政治との関係などについても幅広く知っていると言える。
この違いが同じことを「根拠」としても判断の違いとなって現れる。それは鈴木エイト氏の世界観の狭さ、つまり世間知らずであることに起因しているといえそうだ。それが脆弱な「論拠」による「思い込み」になっているのかもしれない。
もう一点、エイト氏の著作や記事を読むと、彼は自分の中で決めつけたある前提に基づいて考察する傾向が強いことが分かる。
弁護士の徳永信一氏は、エイト氏について「彼こそ、眼前にある事実が自分が奉じる図式と矛盾すると図式ではなく事実を否定するカルトそのものだ」とツイッターで述べているが、まさに的を射た表現だ。
多くの議員が「参加した」「挨拶した」「祝電を送った」「選挙応援を受けた」「数万円の献金を受け取った」。賢明な読者なら分かると思うが、いずれもズブズブの論拠にはなり得ない。いまだにエイト氏はズブズブの論拠を提示できていないのである。
つまりエイト氏が「ズブズブの論拠」とするのは、狭い世界観の中での事実をカルト的思考で膨らませた「思い込み」によるものといえそうだ。
エイト氏は、まだ明らかにしていない自分だけが持っている情報があると言うかもしれない。しかし、たとえその情報が明らかになっとしても、そこから導かれるのは、彼の狭い世界観の中でのカルト的思考の産物でしかないことは容易に想定できる。エイト氏に、今後もズブズブの論拠を語ることは困難であろう。
<続く>
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