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コラム15 心の中に続く阪神淡路大震災の余震 ~微力だけど決して無力ではない~
阪神・淡路大震災から、もう30年。
当時の惨状を知っている行政職員、警察官、消防隊員も少なくなったといいます。
現場の状況を生で体験し、語れる人も少しずつ少なくなっていきますね。 それは支援に入った人も同じでしょう。
あの震災を体験した人、支援をした人たちの心の中の余震はいまだ続いていると言えます。
当時私は、大阪で結成された高齢者支援隊のメンバーとして、神戸に救援活動に入りました。
その時の記録は、私個人のものとして、「瓦礫の街から」と題名を付け、今もデータ化して残しています。今まではあまりオープンにはしてこなかったのですが、やはり次世代に語り継ぐことも必要と考え、何らかの機会に文章を整理して掲載していきたいと思っております。
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つい先日再放送で安克昌医師の「心の傷を癒すということ」のドラマを見たのですが、本当に被災者の声を聴く、思いを聴くというのはとても重要なことだと思います。
決して一人にさせないこと…
もしかしたら救援活動中、どこかで安医師とはすれ違っていたかもしれません。
そして、心の傷は被災者もそうですが、その支援をする人たちも負っていくのですね。
ドラマの最終話はずっと泣きっぱなしで見ていました。(本はじっくりと読ませていただきます。)
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私自身、避難所を回る中で、数多くのそれぞれの人のドラマを聴きました。今すぐどうかしたくてもどうにもできないもどかしさもあり、つらさは増加していきました。
一番つらい話は、瓦礫の中でまだ助けを呼ぶ声がしているのに、火の手が迫り、助けられなかった話… いやそれだけではなくて…
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高齢者の多い避難所では、認知症の人にどう対応したらわからない、おむつの交換の仕方がわからない、でもわからないなりに頑張っているボランティアたちもいました。それはひとつの光明でしたが、避難所にはケアのエキスパートは誰もいなかったのですね。
多くはありとあらゆるお願い事や悩み事が中心でした。当たり前ですね。過酷な生活状況だったのですから。
テントが張られたある公園。
小さなテントの中に、寝たきり状態の母親と、その息子が暮らしていました。母親の容態はよくなく、四国から派遣されていた医師からの、入院を促してほしいとの要請を受け、冷たい雨が降る中、そのテントを訪問したのです。
しかし、家も家財もすべて失い、唯一の絆である息子とは離れたくないので入院はしないとの言葉でした。息子も同様でした。
暖房もない寒いテントであっても、唯一残された家族の絆は失いたくなかったのです。
そのことを医師に伝えると、医師も頷くだけでした。
その後この親子がどうなったかはわかりません。
しかし、冷たい雨がテントに情け容赦なく降り続けていた情景は私の記憶に深く重く残っているのです。
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余りにも多くのつらさを見聞きし過ぎたのか、明かりが消えた神戸から、橋を渡り大阪に戻った時、ごく普通にネオンが輝いているその情景に、悔しさや哀しさや怒りやら多くの感情が溢れ出て、号泣しながら帰ったことを覚えています。
私たちの活動は、大したこともできませんでしたが、最近能登に入った若いボランティアの言葉、「微力だったとは思うけど、無力ではなかったと思う。」という言葉になんとなく救われたような気がしました。
「微力であっても、決して無力ではない。」 何事にもそのようなことがあると言えるでしょう。仕事においても。
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いつか再び来ると言われている大地震。
当事者となるのか、支援者となるのか、或いは両方なのか、それはわからないけれど、私たちにはその時に対しての「構え」を持たなければならないと言えるでしょう。
その一つとして、当時の記録「瓦礫の街から」は、整理して掲載したいと思います。
合掌
グレツキ「悲歌のシンフォニー」を聴きながら…
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