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【ギフトシネマ会員インタビューvol.2】筑井 康敏さま

途上国の子ども達に映画を届けるNPO法人World Theater Project(以下、WTP)は、団体発足以来、多くの方々に支えられ活動を続けてまいりました。
どのような方達がどのような想いで支えてくださっているのか。 活動を支えてくださる大きな存在である「ギフトシネマ会員」の皆さまに、お話を伺っていければと思います。
第二回目のゲストは、筑井 康敏(つくい・やすとし)さん。
普段は商社に勤めながら国内や海外を飛び回っている筑井さんが、WTPを知り、支援しようと思った背景には、筑井さんの心に残る思い出がありました。

(聞き手:教来石小織、取材日:2023年7月5日)

カンボジアのお祭り
小さなテレビで映画を観た夜

―筑井さんはもう10年近くWTPにご支援くださっています。差し仕えなければ、支援に至るきっかけを教えてください。

WTPと出会った時のことは鮮明に覚えています。ある時Facebookを見ていたら、タイムラインにWTP(当時はCATiCという名前でした)の活動が流れてきたのを見たのです。カンボジアで映画を届けている活動と知って、脳天をぶち抜かれたような衝撃を受けました。

僕は2003年から1年間、カンボジアに住んでお寺で日本語教師のボランティアなどをしていたのですが、その時に生徒が故郷のお祭りに連れていってくれたんです。

カンボジアに住んでいた頃の筑井さん


寺院で行われるお祭りで、出店は子ども達が博打をやるようなお店ばかりでした。そのお祭りで、ある時間になったら映画が上映されるというのです。

野外上映会のような大きなスクリーンでの上映会を想像していたら、出てきたのは26インチくらいの小さなテレビ。流れていたのはカンボジアの昔の映画か何かだったと思います。昭和の時代、日本人が街頭テレビを囲んで観ていましたが、あんな感じです。

あんなに小さなテレビ画面を、カンボジアの子どもから大人までが食い入るように観て、皆が同時に笑ったり驚いたりしていました。その光景を見ながら「いいな」と思いました。「人が集まるっていいな」と。

その記憶があったので、WTPの活動を知った時に脳天をぶち抜かれたというわけです。
僕がカンボジアを好きで、カンボジアに何かしたいと思っていたので、すぐに支援したいと思いました。

―ありがとうございます。筑井さんのご支援で弊団体は成り立っています。その後筑井さんは、カンボジア現地での移動映画館にもご参加くださいました。実際に映画を届けている現場を見ていかがでしたか?

想像していた以上に大変だなと思いました。
上映に使っていた発電機が止まって、村の人に借りに行くというトラブルがあったり。

小学校での上映ということでしたが、学校に行ったら生徒が誰もいなかったんです。先生の連絡ミスということでしたが、伝達もちゃんとできなかったり、できて当然でしょということができなかった国だったなと思い出したりしました(笑)。

その時は皆で村を回って子どもを呼んで、呼ばれた子どもがまた友達を呼んでくれたりして集まってくれましたが、大変でしたね(笑)。
知らない人は、「移動して映画上映してるだけじゃん」と思うかもしれませんが、現地に行ってみないとわからない大変なことがたくさんあるなと実感しました。

上映風景。(撮影:筑井康敏)

―「子ども達の笑顔が良かった」などの感想を言っていただけるかなと思ったら、また違う視点からの感想でした(笑)。ありがとうございます。
続いて筑井さんのパーソナリティについてお伺いしたいのですが、筑井さんって、普段は何をされているのでしょう? 実はお仕事のことをよく知らなくて…。国内のあちこちや海外に行かれてますよね。

僕は商社で、海外からガスを高圧に圧縮する機械を輸入して販売しています。最近だと、トヨタがMIRAIという水素で走る車を販売していますが、たとえばその車に圧縮機が必要になったりします。

ロケットなんかも同じで、宇宙に飛ばす時にガスを小さくした方が長距離を飛べるのでガスの圧縮が必要になります。

ガスを圧縮するとすごい力になるから、配管とかバルブもそれに耐えうるものを使わないと壊れてしまいます。そうした機器も輸入して販売しています。

ガスを圧縮するのが必要な場所にはどこにでも行くので、JAXAや自衛隊にも行ったりします。
海外で機械のトラブルが起きた時、誰が行くかという話になるのですが、だいたい海外好きの僕に声をかけていただいている感じです。

走ることを続けるために寄付をする

―筑井さんは、お仕事だけでなく、マラソン大会でもあちこちに行ってらっしゃいますよね。しかも、ギフトシネマ会員費とは別で、大会で走った距離数×100円を弊団体に寄付してくださっています(泣)。
走り始めたきっかけと、走った分を寄付するというアイディアはどこからきたのか教えてください。

走り始めたのは今から7,8年前ですね。この年になると体力が落ちて体重は増えてくるので、何か運動しなくてはと思いました。とりあえず、てっとり早くランニングをやることにしました。でもただ走るのはつまらないので、マラソン大会を目標にしようと思いました。

ただ意志が弱いので、大会に出ても途中でダメになってもいいやと思う可能性があるなと。そんな時、友達がソウルマラソンに申し込むというので便乗しました。さすがに海外まで行って途中でリタイアするのはなしだろうと。

プラスして、大会で走った距離をWTPに寄付することで、自分の好きなカンボジアに何かするためには、走るのをやめてはダメだという気持ちになれます。自分が走ることを続けるために寄付している感じです。

このアイディアは、一緒にマラソン大会に出たりしていたゆーや君(上村悠也さん。WTP前理事)が、大会で走った距離分を寄付したと言ったのを聞いて、「それいいじゃん!」と便乗したのが始まりでした。

大会に向けての練習風景(撮影:上村悠也)

―ありがとうございます(泣)。個人的に、フルマラソンに出るのって一生に一回あればいい方だと思うのですが、筑井さんからはフルマラソンに出場された際のご寄付を毎月のようにいただいていました。何故あんなに頻繁に大会に出られているのでしょう?

最初にソウルマラソンに出た時に、一気に痩せたんです。終わってしばらくすると、また体重が戻ってくる。やばいやばいと思ってまた申し込む。ということを繰り返しているうちに、これならもう毎月大会にエントリーして走った方がいいんじゃないかと思ったんです。

毎月大会に出ていると、フルマラソンくらいだと練習しなくても走れるようになり、ダイエットとは関係なくただ走っているだけになってました(笑)。
そんな時に、ウルトラマラソンの存在を知って、100キロに挑戦するようになりました。

―100キロはやばい世界ですね。
やばいですよ。やっぱりこういうのに集まってくるのって、やばくて面白い人ばっかりだなと思います(笑)。

そうだ。マラソンを始めたのにはもう一つ理由があって、小学校の時から長距離が苦手だったんです。小学6年生の時に、市主催で、各小学校から上位10人が参加するロードレース大会が行われたのですが、僕の小学校は男子が10人いないような小さい学校だったので、遅くても出なくてはいけなくて。

そして圧倒的ビリになりました。あの時のトラウマを払拭するために走っているようなところがあるかもしれません。

―長距離が苦手なのに今こんなに走ってるのがすごいです……。
でもやっぱり遅いんですよね。「なんでそんなに走ってるのにそんなに遅いの」とよく言われます。それならもう君たちの知らない世界にいくよと、どんどん挑戦する距離がどんどん伸びているのかもしれません(笑)。

でも、100キロは関門があるんです。この時間までにここに来ないとリタイアさせられるという。いつも80キロ地点の関門で締め切られるんです。
それで関門がない大会を探していると、200キロとか300キロになるんですよね。

南伊豆町ウルトラマラソン100キロ完走
7年間で出場した大会は約40

―200キロとか300……。
7月に挑戦するのは、5日かけて新潟県の糸魚川から富士山を超えて、静岡県の田子の浦までを走ったり歩いたり登ったりする大会です。

人が経験していないことに魅力を感じる

―え。日本縦断して富士山に登るんですか? やばくないですか? 募集要項に「命の危険があります」って書いてありますよ?!

このくらいになると、参加者はぐっと少なくなってくるのですが、人が経験しないものに魅力を感じている自分がいます。今思えば、海外どこに行こうと思った時にカンボジアを選んだのも、当時カンボジアに一年住むような人がいなかったからだなと思います。

―なるほど…。とにかく、無事に帰ってきてくださいね。ああでも、筑井さんの奥様は診療看護師なので安心ですね。

そうですね。もし僕が倒れたらアップルウォッチから妻のスマホに連絡がいくようになってます。まあ妻、スマホ見てないんですけどね(笑)。

自分の思う道を突き進む

―ダメじゃないですか(笑)! では最後に、筑井さんの好きな映画があったら教えてください。

好きな映画は、『スタンド・バイ・ミー』です。ドラえもんじゃない方の。
大冒険をして帰ってきた時に、町が小さく見えたというのがすごくわかるんです。いろいろなことを経験すると自分が成長して、いろいろなものが小さく見える感じが。小説も読んだのですが、その出だしがとても良くて。

「自分の経験したいろいろなことを周りに共有したいのだけど、自分の言葉の表現力が乏しくて、陳腐な話になってしまう」というような出だしなんです。

僕はまさにカンボジアに一年いて帰ってきて、その体験を皆に話すのだけれど、皆の反応を見て、自分の経験を伝えきれていないもどかしさを感じました。やはり、体験した大切さを描いた『スタンド・バイ・ミー』は自分が感じたものを表現している映画だなと思いました。

もう一つ、好きな映画は『世界最速のインディアン』。実話で、とても感動します。自分の思っている道を突き進むのはすごくいいなと思わされます。僕もこれからも、自分の思う道を突き進んでいきたいなと思います。


YASUTOSHI TSUKUI
商社にて国内や海外を飛び回り、
週末はウルトラマラソンに挑戦している。
今の夢は、160キロのトレイルランニングと
250キロのサハラ砂漠マラソン制覇。



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