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【ギフトシネマ会員インタビューvol.9】家山 英宜さま〈後編〉

途上国の子ども達に映画を届けるNPO法人World Theater Project(以下、WTP)は、団体発足以来、多くの方々に支えられ活動を続けてまいりました。どのような方達がどのような想いで支えてくださっているのか。 活動を支えてくださる大きな存在である「ギフトシネマ会員」の皆さまに、お話を伺っていければと思います。
第9回目のゲストは、チャネルオリジナル株式会社代表の家山 英宜(いえやま・ひでのぶ)さん。後編では、支援に対する考え方について伺いました。

(聞き手:教来石小織、取材日:2023年8月25日)

考えたくないことを考えるのが経営

―すごいなぁ…。国税庁の数字によると20年続く会社は0.4%と言われていますが、今振り返られて、続いてきた理由はなんだと思いますか?

(しばし考えて)感性の面と理性の面があると思っています。まず感性の面でいうと、やりたいことの志が崩れないということ。「日本の街並みを変える」という志を34才で持ってしまった暁には、そんな簡単にやめられませんよね(笑)。

理性の面でいうと、どうしたら会社が潰れてしまうかを常に考えています。会社が大きくなって社員が増えていく以上、会社を死なせるという選択肢はありません。なので常に、このケースとあのケースとこのケースが起きたら会社は潰れるということを想定しています。考えたくないことを考えるのが経営だと思っています。

ただどれだけ考えても、予想外の地獄絵図のような出来事は散々起きたりもするのですが、その時の対処方法はこのカードとこっちのカードをこう切ればいいなと考えながらカードを揃えています。どうしたら潰れるんだろうを常に考えている、理性でね。これを感性でやったら病んでいると思います(笑)。

なので会社を続けてこれた答えとしては、感性の面では自分の志が常にあり、理性の面で常に自分を追い込んで考えてきたからかなと思います。

志と熱量に対してお金が循環し巡っていく

―深い……。身につまされる思いです。では次の質問です。家山さんの中に自然というテーマがあるので、Play with the earthさんなどの支援をされているのはわかるのですが、なぜ自然に特に関係ないような「映画を届ける」という弊団体にもご支援くださるのでしょう?

僕は基本的にはBlowin' In The Wind(風に吹かれて)、Like A Rolling Stone(転がる石みたいになって)の精神で生きてるので、これも偶然というか。WTPにサポートさせていただくというご縁をいただけたのも、一つのめぐり逢いなんだと思っています。ただ、めぐり逢いに対して反応するかっていうのは別の話で。

WTPの活動に僕が反応したのが何故かというと、単純にいい話だから。大人になってから「人の夢をつくる」なんてテーマに出会うかというと、なかなか出会わないですよね。僕はWTPとは別にワールド・ビジョンというNGOにも寄付しているけれど、途上国を支えましょう、助けましょうという団体はたくさんあって、それはそれで素晴らしいことで。でも、「人の夢を作りましょう」というテーマで活動している団体なんてほとんど存在してないですよね。だから反応したんだと思います。

―たしかに…。あまり聞かないかもですね…。
 
あともう一つ、WTPの皆さんは「ご支援ありがとうございます」という謙虚な姿勢でいるけれど、僕としては逆なんです。年柄年中、仕事仕事の話の中で、何かをサポートする機会にめぐり合えるというのは有り難いことなんです。なんでこんな素敵な活動してくれてるんですか、有難うございますという気持ちです。僕はお金というのはどう巡らせるか、循環させるかが大事だと思っています。

シネマキャラバンの志津野雷君達の紹介で栗林隆君というアーティストに出会いました。僕は3,4年前に、北陸の入善町にある潰れた製材所を買い取って、新しい倉庫と営業所を作ったのですが、時を同じくして、彼が入善の下山芸術の森発電所美術館で作品を発表することになったんです。それが「元気炉」という作品。

3.11以降、彼はずっと志津野君と福島に通っていて、ネガティブな原発問題をただネガティブに伝えるのでなく、ポジティブに変換した表現で伝えたいと考えていたそうです。そして見た目は福島原発の形をしているけれど、実際は木で作られているスチームサウナで、出ている湯気、中の熱、その熱源である木、水、ハーブにより、人間のエネルギーと循環は素晴らしい!というテーマの作品が生まれたのです。

写真左・栗林隆さん、右・家山さん。
「元気炉のテーマは僕が説明したものよりもっと深いと思いますが」と家山さん。

彼の「これを創りたい」というタイミングと、僕がちょうど入善のプロジェクトを始めたタイミングが「同時」で「出会い」があって「じゃあ、この製材所の木材で作れば」となり、そうして完成したのが元気炉の初号機なんです。

そのエネルギーの塊みたいな彼と話しているときに聞いたのが「お金って循環だと思う」と。「お金そのものに意味があるっていうより、それが循環して、何かが生まれることに意味があるじゃないですか。循環させることによって、こういうぶっとんだものが出来上がって、世の中が面白くなることはいいことじゃないですか!」って。

やりたいこと、表現したいことがあってそれにはお金がかかるから、そこに「経済の循環」があれば世の中よくなるって考え方を、普通に話すんです。自分が何がしかで稼いだお金を循環させて、映画になって、子ども達の夢を作るために循環させるのと、投資信託にいって10倍になるの、どちらが嬉しいのかは人それぞれ。ただそれだけの話だと思ってます。

彼のやってること、WTPがやっていること、ジャンルは違うけれどそれぞれにインパクトと熱量がある。道徳的な善もそうだし、隆君みたいなぶっ飛んだこともそうですが、ポジティブなエネルギーに対して、その熱量が本物ならば、それに見合ったお金が循環していくというのは、ごくごく自然な話なんじゃないかと思います。高貴なことでも何でもない、ごくごく自然なこと。

Blowin' In The Wind、Like A Rolling Stone

―お金は循環させるもの、自然なこと…。家山さんの寄付や支援に対するお考え、目から鱗でした。家山さんには弊団体が窮地に陥った時などかなり莫大なご寄付をいただいてきましたが、そうしたお言葉をいただけて胸がいっぱいです。いつもありがとうございます(泣)。ところで家山さんて、どんな子ども時代を過ごされたのでしょう?小学生とか中学生の時とか、夢とかありました?

この仕事をしていると、「家山さんて元々森の近くに住んでたんですか」とか「昔から環境問題に関心があったんですか」など聞かれることがありますが、全然です。子ども時代か………。

僕らは本当の貧乏を経験した世代ですよね。1K風呂無し、共同トイレに家族4人とか、そんな感じでした。でも多感だった、そんなイメージかな。中学に上がって、普通に「多感ゆえに」、所謂「ぐれる」もあって、初恋の人に「煙草吸う人嫌い」って言って振られて、中二の時に喧嘩で補導されました。校庭にパトカーが入ってきて捕まったこともありました。

だけどそのあとひょんなことから、生徒会役員になったり。あとはバスケットボールやりながら、フォークバンドとロックバンドふたつやっていて、井上陽水をコピペしながらもレッド・ツェッペリンもコピペしてました。という感じでしょうか。もう支離滅裂。
 
先程も伝えたように、僕は常にBlowin' In The Wind、Like A Rolling Stoneな感じなので。若い頃から志を持ってとか、学生の頃から目標を持ってとかは一切なく、夢もなくて出会い頭。その時その時の巡り合わせに沿って、ただ真剣にやってるだけですので、凄い人達と並べないようにしてくださいね。普通にただ生きてるだけ。

なので、WTPに賛同したのって、もしかしたら子ども時代に夢がなかった自分にとっての憧憬というか、異次元というか。そんな素敵なことほんとに出来たら凄いことじゃない?という思いがあるんだと思います。

―不良なのに生徒会役員…一番モテるやつじゃないですか。ちなみに今は夢ってありますか?

今夢を持てと言われたら、世界は平和になってもらいたいなと思います。実はちょっと思いついたことがあって、今その夢に対して、人生を変えるような新しい挑戦をしようと思っているところなんです。言いませんけど(笑)。

―えっ。教えてくださいよ!…ああ、でも時間が来てしまいました……。家山さん、本日はインタビューにご協力くださり本当にありがとうございました!

偉大な経営者であり、哲学とユーモアと優しさを持ってお話くださる家山さんに弊団体はいつも助けられてきました。通常取材は断っているけれどあなただから受けたんだよと笑いながらおっしゃってくださった家山さん、本当に本当にありがとうございました!


Hidenobu Ieyama
東京都町田市出身。ポパイ・JJ世代。
チャネルオリジナル株式会社代表取締役社長。
駐在時代のあだ名はハリー。
好きな映画は『カラーパープル』。


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