嘘のような本当のはなし・・・早期の肺がん
2022年12月15日(木)
12月9日に撮ったCTの結果を聞きに行く。
まだまさかと言う気持ちが大きい。
消えていて欲しい、もしくは何か違う良性のものであって欲しいと願った。
呼ばれて診察室に入ると、先生が画像を見ながら、
「これが3ヶ月前、これが今回撮ったたもの。
ご覧の通り、大きさは変わっていないんですが、消えてないですよね・・・
そうすると早期の・・・肺がん?」とおっしゃった。
右肺下葉に結節影があるのだ。
ちょっとギザギザしている。悪い顔してるな・・・と直感的に思った。
「何でもなければ、これは消えているものなんですか?
何か違うものの影と言う事はないんですか、結核とか?」
私も必死に聞く。
「そうですね。その場合はまたちょっと違うと思います。」
「ガーン・・・」と本当に頭の中に鳴り響いた。
「・・あ、そうなんですか。」と淡々と答えていた。
頭の中では、なんで私が?とか、これからどうするんだろう?
どうなっちゃうんだろう?とか、いろんな思いがぐるぐる回っていた。
先生は、「早期の肺がんであれば胆石の手術と一緒ですよ。手術も胸腔鏡手術で4日位で終わるんです。アメリカであれば医療費が高いのでもっと短くて3日で退院するくらいですよ。」と簡単に冷静にしかもにこやかにおっしゃる。
あまり重く受け止めずに済んだ。
私が、「これはレントゲンでは写ってないものなんですか?CTでしかわからないものなんですか?」と聞くと、
「そうですねレントゲンではあまり写ってないので、CTでよく引っ掛けてくれたなぁという感じです。ほら、ここ横隔膜の所、こういうふうに隠れてるところなので・・、まぁよくひっかけたなぁって思いますよ。」と、先生。
素人目に見て、どこに影があるのか?見せられている画像がいったいどこなのか?全くわからないけれども、先生がそのようにおっしゃるということは、
本当によく引っ掛けてくれたと思う位まだ小さなものなのかなぁ、
と思いたかった。
「じゃあ次はペットCTを受けてもらいましょうか」と言われる。
これは転移があるかどうかを見るためのものらしい。
12月23日(金)に予約をとってくれた。
診察室を出るときに、「何か生活上気をつける事はありますか?」と聞いたら、
「特にないですよ、風邪をひいたりコロナにかかったりすると、検査ができなくなるので、それだけ気をつけてください。」と言われた。
診断がついて思ったより明るく診察室を出たはずなのに、
この日からすべての日常が遠のく気がした。
すぐには帰れず、病院の中のカフェの前でカプチーノを飲んだ。
まずはこの事態を受け止めよう。
この日からペットCTまでの間が1番辛かったように思う。
人の声が遠のき、風景は全てグレーになり、電車に乗っても、
「あぁ周りに立っているこの人たちの体には、どんなに調べてもがん細胞はないんだよなぁ、私の体の中にはあるんだよなぁ」と思った。
家族には何と言おう。
よく聞くように、本当に何気ない日常が遠ざかって、
遠くのほうでキラキラ✨輝いているようだった。
家族で過ごしている日々、全てがめちゃくちゃかけがえのないもので
キラキラしたもの✨がたくさんつまった宝石箱のように思えた。
そして、このイメージは後の入院中も繰り返しずっと頭の中で思い浮かんでいた。
意外と仕事には集中はできた。でも会社にはどう言おう、社長や上の人にはどう言おう、同僚や部下にはどう伝えよう?
せっかく役員になったのに、せっかくこれから自分の仕事ができるのに、どうしてこんなタイミングで病気になっちゃっているんだろう。
この2年間で大学院にも行き、修士論文も書き、
これから博士課程にも進もうと思っているのに。
これからどんどん研究も充実して先生たちのご協力も得てどんどん深められていく時・・・。
それなりの体制が整えられようとしている時にどうして病気になっちゃうんだろう。
せめてうちの犬たちよりは、長生きしたいなぁ、とかいろいろ考えた。
それに・・・
まだもうひとつ消化器系でひっかかった膵臓の検査が残っている。
これでペットCTをやったら体中にがんがあるなんて事はないだろうか?
考えただけでも恐ろしい。
でも体調が全てを物語っている。体調はここ数年絶好調なのだ!不調は無い。
だからそうそう、体中に転移してることなんてないだろうと、
そう思って自分を慰めた。
考えると不安で押しつぶされそうだった。
いろんなパターンを3択で考えた。
①早期で済んで手術する時。
②肺がんも膵臓も何か問題がある時。
③どちらも気のせいだった時。
この日、会社のみんなと東京タワーや丸の内のクリスマスイルミネーションを見た。でもそれはどこか遠い世界のようで、自分だけ別の世界にいるようだった。
世の中が全てグレーになった。