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「豪雨の予感」第19話(落雷と地響き)

地上への階段の途中まで人だかりができている。ざっと30-40人が雨が止むのを待っている。雨といっても傘がないと外を歩けないほどの雨である。

京阪電車で通学する途中、京橋から天満橋に向かう車窓からは小雨程度だったのが電車を降りて改札から地下を通る10分くらいの間に空模様は一変していた。愛子は幸いにも父からのアドバイスで傘を持ってきていた。母のみおも大雨を心配して早く帰ってくるようにとも言っていた。

「佳奈ちゃん傘もってきてないんや。相合傘していこう!」
「オッケー、愛子と相合傘かー、、笑」
「えー、それどういう意味なん!もー、いれたらへんで」
「あ、ごめん!きゃー愛子と相合傘きゅんきゅんするわ、めっちゃ嬉しい!」
「そこまで嬉しがってるようには見えないけど、、笑」
「笑」

愛子は佳奈と目を合わせ先を促した。

「すみませーん」
「通してくださーい」

人だかりを掻き分け階段を上がりきったところで西の空を仰ぎ見た。黒い雲が空を覆い、すぐには雨は止みそうにない。愛子は持ってきた透明のビニール傘を開いて佳奈と一緒に駆け出した。地下鉄を出ると高校までは大阪国税局などが入る大阪合同庁舎第三号館に沿って歩道を東に進むが、歩けば歩くほどどんどん雨足が強くなっていく。

「佳奈すこし濡れるけど走るよ!」
「分かった!!」

屋根のついた高校のエントランスに着くと、足元は膝下までしっかりと濡れてしまっていた。靴の中に雨が入り靴下も乾いてる部分がなく、膝上のスカートの裾の辺りまで濡れてしまっている。

「濡れちゃったな、靴下も履き替えよ」
「そうやな、替えの靴下持ってきてよかったわ」
「せやけどすごい雨やな、帰るまでに止むんやろか?」
「どうやろか、雨も嫌やけど雷めっちゃ苦手やねん、さっきからゴロゴロゴロゴロいうたんびにさぶいぼが立ってきて、ほら愛子みてここ!」

佳奈は自分の腕を愛子に見せた。鳥肌のことを関西ではそう呼ぶ。佳奈は幼い頃から稲妻が苦手である。特に今日は近くで断続的に鳴ってるので鳥肌が収まらない。駅を出たところからゾクゾクしている。

「愛子、今日はもうあたしムリ、授業集中できひんと思うし、早く帰りたい」
「ちょっと佳奈、今来たとこやん!それに雷が佳奈に直撃するわけないし」
「それは分かってる!ゴロゴロがムリやねん、愛子が大丈夫なんほんま信じられへ…」

ゴロゴロ!ドーン!バリバリ
近くに落雷があった。落雷で地響きを感じたのは愛子にとって初めての経験だった。流石の愛子でも思わず頭を抑えるほどの恐怖を感じた

第20話に続く
(このストーリーはフィクションです。一部実在する名称を使用しています)

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