「豪雨の予感」第4話(消防士・健太郎と防災イベント)
健太郎は大阪の北消防署で勤務する傍ら、防災士の資格を活かしてオフの日は地域の防災活動にも積極的に参加していた。
防災活動は城東区の区役所を中心に行われていて、実際に災害が発生した時の避難経路、避難所での受け入れ態勢、在宅避難者への支援などを役所と住民が予め連携しておく目的に行われる。さらに市民の方々へも伝えるため年2回イベントが行われる。健太郎は普段、防災活動の運営を行なっているがシフトの関係で消防士として参加することもある。その時は消防車を広場にとめ、市民の方々と記念撮影をしたり、消防車に乗ってもらうなどの体験活動を行う。
愛子や健斗が小さい頃、みおは2人を連れて健太郎を見にきていた。というのも妻のみおがその消防士の頼もしい姿に勇ましさを覚えたからである。健太郎は愛子と健斗を抱き抱え写真を撮ってもらっている。
『こんな幸せな時間が来るなんて』
みおは3人をみつめながら神戸での震災被災に思いを馳せていた。
「奥さんも入ってください、わたし写真撮りますよ!」
志尊類(しそんるい)は上司の健太郎の妻を慮ってそう言った。目を輝かせた2人の子どもと健太郎にみおも加わり4人で記念写真を撮ってもらう。
「いつもすみません」
子供たちにとっては防火帽が大きすぎるが、志尊に向かって笑顔でポーズをとっている。
「健太郎さんもみおさんも笑ってださい」
志尊はそう促して4人の微笑ましい写真が撮れた。
「今度また半年後にするのでまたきてな」
志尊は子供たちに伝えると健斗は大きく頷いた
「うん、また来るな」
あれからもう10年が経つ、当時7歳だった愛子は今や大学受験を控え、健斗は5年生になった。防災活動で4人の写真を撮るのはそれが最後になっていた。愛子は多感な年齢になったこともあり、健斗も姉が行かないなら行かないと、最近はみおと健太郎の2人だけが参加するようになっていた。
第五話に続く
(このストーリーはフィクションです。一部実在する名称を使用しています)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?