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「豪雨の予感」第12話(豪雨稲光と震災被災の記憶)

豪雨は“バリバリ”と音をたてながら地面に大粒の雨を打ちつけていた。その弾ける雨粒は小さいしぶきになって宙に跳ね返り、あたりの風景を白くしていく。みおが外を眺めている窓ガラスにも容赦なく雨粒が打ちつけ、まるでガラスが割れるのではないかと思うような衝撃音をたてている。真っ白になった景色のなか稲光が光りほぼ同時に雷鳴が轟く。その時間差からするとみおの自宅からそう遠くはないはずだ。みおはその光景に吸い込まれるように高校1年の被災前日の記憶の世界に入っていった。

その日は暗く冷たい夜だった。家族団らんの後はいつもみおは2階の部屋のベランダで明石海峡を行き来する船をぼんやりと眺めていた。その日も眼下の大型船が須磨のあたりで『ボー、ボー』と汽笛を鳴らして航行していた。暗闇の中、船の灯りがゆっくりと東から西に動いていく。

その先の空にいつもはない炎のような青い煌めきを認めた。

「なんやろあの青い火柱みたいなの?なんか気持ちわる」

プレートの歪みなどで電荷の“充電スイッチ”が入った玄武岩や斑れい岩に地震波がぶつかると岩石内の電荷が解放され、一種のプラズマのような状態になる。これが地表ではじけて空中放電を起こし光になるのがこの光のメカニズムといわれている。この翌朝、みおは阪神淡路大震災で被災した、稲光を見るといつもこの記憶が蘇ってくる。『あの時のような惨事にならなければいいけど、、』一抹の不安を感じたとき、LINEがきて現実に戻った。

「長濱さん、お疲れ様です。リモートは中止して警戒レベル3がでたら安全な場所に避難できるよう今のうちに避難の準備を始めてください。今日はリモートワーク勤務として出勤扱いになるので知っておいてください。」

上司の西岡からだった、豪雨が気になり仕事には気もそぞろだった。リモートワークにしたもののこの状況では仕事にはならない。上司からこのような避難準備の指示があると行動しやすいし、勤怠の取り扱いも考えてくれているのですごく助かる。了承の返事を返した。

第13話に続く
(このストーリーはフィクションです。一部実在する名称を使用しています)

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