「豪雨の予感」第10話(第二寝屋川の支流と寝屋川・大川への流れ)
第二寝屋川は大阪府を流れる淀川水系の一級河川で、生駒山系に降った雨は八尾市で恩智川、東大阪市で玉串川と楠根川に注ぎこみ第二寝屋川に合流、大阪市城東区で長瀬川と平野川が合流する。みおの自宅はちょうど平野川と合流するあたりにあり、コンクリートで頑丈に護岸補強された20メートルほどになる両岸と川底をゆっくりと西に向かって流れる。そこから第二寝屋川は大阪環状線の下をくぐり大阪ビジネスパークの南をかすめた後、中央区の大阪城外堀の北側で寝屋川に合流、その寝屋川も合流点から約500mで旧淀川(大川)に流れ込む。みおの眼下にある川の流れは、すでにいくつもの上流から注ぎ込んできた雨水を束ね大きな流れとなり、ゆっくりと揺蕩い寝屋川、大川に向かって流れている。
川の向こうの浄水場まではみおの自宅横から橋が架かっている。その橋は“上城見橋”と名付けられていて、“城見”がつけられている下流の新城見橋、下城見橋のうちの一つであるが、この橋からだけは大阪城を見ることはできない。最近家族の中ではこのことが話題になる。
「やっぱり城は見えへんな。それに普通“上下”をつけるなら城に近い方が上じゃない?実際は下城見橋の方が城に近いのにな」
この春夜桜を見にいったとき、愛子は上城見橋を渡りながら“城見”が着く橋が他に2つあり、どこに架かっているかをマップで調べながら言った。健斗はそれを聞くと、他の2つの橋からは大阪城が見れるんだと言う。その通りである。
「今度新しくできる公立大学から京橋駅にいく道路、えっと疎開道路って言うんやったっけ、ここに架かってるのが新城見橋、もう一つの下城見橋は大阪環状線を抜けて階段を上がったところにある玉造筋に架かっていて大阪城公園駅にいくときに渡る橋」
前回この橋の話題になったときに、健斗は気になったので残り2つの橋から城が見えるかどうかを見にいって確かめていたようだ。健斗は今年で11歳で愛子は18歳、姉と弟で七つも離れていると話しは噛み合わなさそうだが、どちらかと言うと愛子の話題に健斗がうまく合いの手をいれることで会話が続いている。健斗は愛子よりも背が高いこともあって、側から見ると健斗が愛子の兄のような印象を受ける。
「へー、あの橋は下城見橋って言うんねんな、健斗よく知ってるな!てことはこの橋達は三姉妹やな!」
「三姉妹って!なあちょっと愛ちゃん、橋って女性名詞やったっけ?」
愛子は地図で見つけた下城見橋が実際に通ったときの記憶と重なったようだ。それにしても愛子の突飛な例えにも健斗はうまく返している。二人の会話は聞いていて面白い。
みおは眼下の川の流れを気にしながらリモートワークを始めたものの、気もそぞろになりこの春のエピソードを思い出していた。
第11話に続く
(このストーリーはフィクションです。一部実在する名称を使用しています)
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