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童貞の恋の旅

2023年、初恋の人に2回会った。

何度か会っているのだけど毎度、緊張を隠せず目もろくに合わせられない。
食事も食事も喉を通りにくくなる。中学生でもあるまいに~。
クレイジーケンバンドのガールフレンドか。

彼女を目の前にすると
一瞬にして童貞になってしまう。
実際、童貞だった期間の方が人生長いし。
20年くらい童貞だったし。

彼女とは、半年ほど付き合い、
バトミントン、無料の動物園、自転車2人乗りなどをした。

とあるデートの時には、自転車でブレーキを急にかけてしまい、後ろにいた彼女の胸が背中に当たり下半身などが硬くなったりした。

慣性の法則に感謝し、
その法則だけはテストで間違えなかった。

彼女とはどうして別れたのだろうかと遡ると
手を繋いだ後にハグをしたりすることができず、
なんの刺激もない!つまらん!と思われた可能性が高い。
背中に当たる胸に満足していた僕が悪すぎるし、気持ちも悪すぎる。
中3なんてそんなものだと自分を慰める。

たしか別れた理由は部活が忙しかったから。
だった気がする。

今からよく分からない事を言うが、
「部活が忙しいから別れよう」を基準として仕事と比較した場合、
「仕事が宇宙だから別れよう」
になるのではないかと思う。
いや、でもその当時は仕事の宇宙さを知らないし、
しょうがないか。しょうがない。

まぁ、そんなことは机の引き出しにしまって、
鍵を閉めて、鍵を川に投げ捨てて
年始にLINEを送ってみたら、会えるとのこと。

メッセージも、いいよ〜と「〜」を使ってくれる事に感動した。
嬉しかった。童貞爆発。
ここまで来たら、
もう童貞なんじゃないか?自分。

1回目はいい感じに終われた。
唯一ダメだったのは、
彼氏がいるので一人暮らしの彼女のお城に行くことを諦めたこと。
お、童貞じゃなくなってるかもしれない?自分。

そう思えたのも束の間。
数日後の逢瀬で童貞を遺憾なく発揮してしまった。
これを僕の中で童貞事変と呼ぶ。
彼女の他に、2人の男の子。
計4人で渋谷で飲むことになった。

まず、40分遅刻してしまった。
童貞というか、人間として終焉を迎えた。人間事変。
自ら巻き起こした愚行により、童貞がより顕著に出現してしまった。

数日前、彼女と少しでも繋がりたくて
「本当に行っていい?」と聞いて、「良いに決まってるよ!」
と言われるのを分かっていながら、LINEのメッセージを送ったのにこの暴挙。

さらに何を血迷ったのか、開口一番にセーフ!間に合ったわ!
と世界一つまらないセリフで大すべり。
どうしたのだい。
タイムマシンがあるのならこの日に戻りたい。

遅刻したのは、服装に気合をいれすぎて集合時間になっても下北沢で服を選んでいたという童貞理由。

彼女に少しでも良いと思われたい。
好きになってほしい。
久しぶりのこの気持ち。
試着しながら鏡を見ながら、彼女を思い浮かべる。
試着室で思い出したら本気の恋。
みたいなキャッチコピーを頭に思い浮かべる。
だが、遅刻はマジでよくない。
彼女が好きすぎるのに、遅刻して嫌われるっておもしろすぎないか。
さすがに、しっかりしてくれ。

下北沢では下北沢を100万周した。
何を着ていけばいいか永遠に掴めなかった。
最終的に纏った服は、
黒のチャイナのアウターに、
黒のコーデュロイパンツ。
まだ服との関係値を充分に築いていない状態で、
さっき買った服で、飲み会に参加した。

似合っているか、浮いてないか、
それだけが気になって、彼女に語りかける事も目を合わせる事もできなかった。
普段通りの服装で、リラックスして行くべきだったと悔やまれる。
服装に気合を入れて、
いつもの自分にはあまり似合わないような服を着ていくのは、
まじで童貞がすぎるて。
本当は似合っているのかもしれないのに
着ている本人がそういう表情をしていると、
それがもうダサさにつながる。
背伸びするな。身の丈に合え。

そしてさらに、下北沢を100万周した後
顔面ムダ毛チェックで時間がかかり
トイレに引きこもり、鼻毛が出ていないか、
変な髭が生えていないか
確認に確認を重ねてしまった。
前日からやっておくべきだった。

映画RRRの良さについて熱弁してしまったのだが
チャイナ服が語るインド映画ってやばくないか。
という自意識が働き、うまくプレゼンできなかった。

また、どうして旅に出るのかの理由で、
彼女と話した時は、人生3回あったら、
1回はM-1目指す、2回は海外で旅する、3回は今の人生
今、旅しちゃえば人生2回あるようなもんじゃん、とプレゼンしたのだが
それをチャイナ服似野郎が話して大丈夫か?
の意識が働き、「転職の狭間だから」
という軽薄な理由を述べてしまった。

私と話したことと違うじゃん。
と思われたかもしれない。
彼女に同じ話を2回してもつまらない顔するかな?
とかその刹那で考えた末の結果なのよ。
と言い訳したい。
全ての選択で悪い方を選ぶ。

大すべり1軒目を終えた。

なぜなのか分からないが
2軒目はカラオケへ。

久しぶりに会った友人たちとカラオケって
どういう事変?なに事変?東京事変?

僕の十八番である和田アキ子「古い日記」での滑り出しは良かった。
が、それ以外の全てで緊張。

好きな人の前で歌、歌ったことありますか?
めちゃめちゃ緊張しますよ。

他の男の子2人は、まぁお歌が上手で。
僕はボチボチ。古い日記以外声震えてたのでは?

今の今まで他の男の子が登場してこないのは、
カラオケに入って、2人が歌い出すまで
存在を認知していなかったからなのです。
非常に申し訳ない。恐縮事変。


この会の翌日の夕方、川沿いを走った。
ランニングのつもりだったが、
中学生が抱くような
どうにもやりきれない気持ちが
中学をとっくに卒業した自分に湧いてきて
ランニングではなく、途中から全力疾走をはじめていた。
1キロ2キロ、全力疾走したのではないかと思う。
走っても走っても疲れなかった。
わーーーーと声を出しそうになっていた。
流石に出さなかった。危なかった。
相変わらずの気持ち悪さだと、自分を諦めるしかないと悟った。

いやしかし、全ての過去を棚にあげて、
もう一回会いたいな。
この前Instagramのストーリーで
ウッチャンナンチャンのオールナイトニッポンを投稿したら、いいねを押してくれたので可能性はあるかもしれない。

もちろん僕は彼女のストーリーの全てにいいねをしている。
気持ち悪すぎるが、
見る角度を変えれば純粋という見方もできる。
そういうポジティブシンキングを持っていて本当によかった。

何遍も〜恋の辛さを味わったって〜
イェーイ、イェーイ、イェイ

童貞の恋の旅は続いていく。

結婚だけはしないでー。

確か中学の時もメールで別れないでねー。
と言った記憶があります。

これはきっと伏線ですね。
伏線事変。

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