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大切な三人

母方の大好きだった祖母が亡くなったのは、私が二十代の時。
生まれて初めて、人の死を経験した時だった。
こんなにも悲しいものなのかと思った。
祖母が亡くなったと連絡があって、父の車で親子三人、母の実家へと向かった。
母の実家に着いて、玄関を入って部屋に入る手前で母はショックのあまり倒れそうになった。そんな母を私は抱き抱えた。
和室に寝かされていて、白い布を顔に掛けられた祖母の頬に手を触れた時のあの冷たさはきっと一生忘れないのだろうと思った。
母はその後、一年間おかしかった。
無気力であまり笑わなかった。
数年後、母方の祖父が救急車で運ばれて病院にいると伯父から連絡があり、病院へ駆けつけた。
祖父は酸素マスクを付けて寝かされていた。
娘である母が病室へ入ると、身を乗り出し頭を上げ、何か伝えようとしていた。
けれど、何を伝えたかったのか聞き取ることは出来なかった。
その夜だった。
長男の伯父一人が付き添いで病院へ残り、祖父の最期を見送った。
その伯父が癌で長くないかもしれないと連絡が入った。まだ七十代前半だった。
色んな病気に罹り、その度に治療を頑張ってきた人だった。私はその時、子供がお腹に居て、身重の体だった。そんな体だったからだろうか、お見舞いへ行くと「早く帰れ」と急かされた。
けどね、伯父さん、あなたと一緒に居られる時間があと少ししかないの。だから、帰りたくないよ。
もっともっと一緒に居たい。
子供好きな伯父に産まれてくる子をどうしても会わせたいのに。それは、叶うかなぁ。
その年の夏、伯父は静かに旅立った。
そして、その年の冬、子供が産まれた。
私の願いは叶わなかった。
伯父に子供を会わせられないまま、伯父は逝ってしまった。
私は母方の祖父母、伯父が大好きだった。
三人共、本当に大好きな人だった。
小さい頃から、すごく可愛がってもらって、
私の中の一部は三人に可愛がってもらった愛情からも出来ていたと思う。
だから、私は、今まで何かある度に一人でお墓へお墓参りに行った。
そこで一人泣いてきた。
そして、お墓をあとにする時、いつもまた来るねと行って帰っていた。
最近、お墓参りへ行けていないなと思う。
また、三人に会いに行こうと思う。

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