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「なんか結局、ふつうの家になりそうだな…」

こんにちは。
毎日推し建築家の設計した住まいを紹介している、一級建築士のこじこじです。

「なんか結局、ふつうの家になりそう。」
「こうなるのが一番いやだったのに。」

家づくり終盤に差し掛かった方のそんな声がSNS上で見られたので、私が個人的に思うことを勝手気ままに書いてみます。

「ふつう」の3つの意味


そもそも、「ふつう」には3種類あると思っています。

1.いつもの(usually)という意味の「ふつう」
2.中くらい(middle)という意味の「ふつう」
3.平凡な(orginary)という意味の「ふつう」

1のふつうは、習慣的なもの、という文脈で使われます。
「我が家では朝食は普通ご飯なのに、今日はパンだった。」とか、「ふつうに考えたらこうするよね。」とか。

2のふつうは、グレードやサイズが中くらい、という文脈で使われます。
「急行列車」に対する「普通列車」とか、レジ袋のサイズを聞かれて、「ふつうのでお願いします」とか。

3のふつうは、凡庸と感じたものを形容するときに使われます。
高級レストランの料理を食べて、「思ったよりふつうだったね。」とか、「イケメン」に対して「フツメン」とか。
どちらかというと少し否定的なニュアンスですね。

3つの「ふつうの家」

1の意味での「ふつうの家」は、いい家だと思います。その家族にとっての普通がしっかり押さえられている=暮らしやすい家ということだからです。しかも、誰かにとっての普通があなたにとっての普通とは限らないので、そういう意味でも住まい手自身にとっての「ふつうの家」というのはいい家と言えるでしょう。注文住宅を建てるひとつの意義と言えると思います。

2の意味での「ふつうの家」は、物理的な大きさや建材のグレードが平均値の家ということになります。
これは良いとも悪いとも言えません。広ければ広いほど良い家とは限りませんし、使う素材が高級かどうかは必ずしも住まい手の満足度に直結しないからです。一方で、住まい手の心持ち的にはお金をかければ簡単に解決できるとも言えます。

3の意味での「ふつうの家」というのは、平凡な家というニュアンスです。
これは個人的にはあまりよくないと思います。平凡でつまらないと感じてしまってるということは、愛着や誇りを持てないということになりかねないからです。愛着が湧かないものは大事にしようと思えず、すぐ取り壊されてしまうか空き家として放置されてしまいます。
しかも、愛着や誇りというのはお金をかければかけただけ理想に近づく、という単純なものではありません。人それぞれの繊細な感情が複雑に密接にかかわることだからです。これは2と違うところです。

「ふつうの家が一番!」の意味

「ふつうの家が一番!」って言葉、よく聞きますよね。
これは1と2の意味で使われています。
「家なんてのは使いやすくて、ほどほどにお金をかければよくて、そんなにこだわってもすぐに飽きるし、良いことないよ?」というメッセージです。

対し、主題の「ふつうの家」は、2と3の意味で使われているように見えました。特に3の意味合いが強い。
減額調整に次ぐ減額調整で、理想の家からどんどんレベルが下がっていく…という意味での(ここでいう2の)「ふつうの家」というだけであれば、「お金が足りなかったんだね」で話が終わってしまうのですが、どうやらそれだけとは思えない。
もっとわくわくするような、愛着が湧いたり、お気に入りの居場所があったり、友人を招いて自慢したくなったり。写真を撮ってSNSにアップしたくなるような。誇りを持てるような。そんな家を夢見ていたのに、なんか結局(平凡な、つまらない)ふつうの家になりそうだな…

という感情なんだろうなと。

この悪い意味での「ふつうの家」にならないようにする方法は、ひとつしかありません。

その唯一の方法を、以下に詳しく解説していきます。

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