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25漬物・4(不得意な、ぬか漬)

上気画像は、日本海に向かって流れる由良川が洪水で河口に近い地域がひどい水害に見舞われて、収穫が遅れてしまい出荷時期を逃してしまった大根の購入を持ちかけられ、義捐の気持ちで購入した青首大根を自身が食す為だけに、下漬(コロシ)を行い、さて本漬に移行しようとする、大根ぬか漬を製造した時の漬け込み途中の画像である。葉付きで無着色で昔ながらの塩辛いが懐かしいシワシワ・カリカリ・ポリポリの塩辛い大根部と、細かく刻んで数滴のお醤油と少々の七味で発酵した酸味を醸し出した葉部で温かい新米ごはんが食べたくて、自作した時の画像である。
対して下記画像は、その状況から工程が進んで、重石を置く前の画像。ぬかを隙間なく詰め込んで平らにならし、冷蔵庫の隅で重石を置いてじっくりと寝かす事にした。

たっぷりとぬかを隙間に詰め込んで、重石をかける直前の画像。
本来、青首大根を使用するのではなく、理想系の白首細長形品種を選ぶべきなのかもしれない。
首部が固くて太すぎるし大きすぎるので、沢庵漬類の製造には不向きな品種である。
しかし、この時は、義損で購入した不揃いの青首大根の加工方法を「さてどうする?」が
生じていて、あまり思慮する事無く、視野の中から消し去るだけが早急な目的で、
「サッサと漬けちゃえ!」の気分だった。

しかし、冷蔵庫の隅に置いたのは良いのであるが、その存在を忘失していた訳ではないのであるが、毎週の冷蔵庫内整理清掃の時には、邪魔になっていてついつい管理をしないで、そのままの位置で放任となっていた。しかし、2年後、重石を移動する必要があったので、どうなっているかを確認する機会が有り、少量を切り出して食してみた。その時は、塩辛いだけのまさに田舎の素人農家の味であった。そして、忘れ去られる事=漬けこんでから4年目。不思議だが塩辛さが薄らいでいて、何となく甘味も酸味も感じるようになった。ここで、試作に対する意欲が出てきて、このまま、もう2年放置をしてみようと決意をした。さてさて、漬け込んでから6年目、1本を取りだし食してみた。色は、薄灰色に変色した大根。葉は飴茶色に変化していた。味は抜群。酸味と甘さが絶妙であの沢庵独特の香りを盛大に放つ。
通勤電車に乗るには流石に躊躇する臭いだ。(例=私は、阪急電車内で551豚まんを買ったのが、あのおばちゃんだと分る時がある。)

《料理人の声》
自身が消費するだけの試作であったし、余りにも日数を要する製造期間である事と、たぶん食品衛生上の問題(生菌数が強烈に多く、食べる人の体調に影響を与える場合が有るかも?と推測できる。)で、販売には適さないとして試作品として、自身が食して樽の底で残った僅かな本数を料理人数名だけに評価をしてもらいたくて配ってみた。全ての料理人が購入を申し出てきた。そして生産を行えと言う。6年間の製造期間を考慮してくれる価格ならしても良いと言うと、1本5000円の契約で年間1000本の入用で、お店がまとまって共同購入契約を申し出てくれる事があった。樽1丁が100本入りだから1丁50万円(笑)。総額5百万円のお仕事である。お店では特別のお客様と贈答用に使用すると言っていた。しかし、私の技量では無く、偶然のなせる産物なのかもしれないし、同じ品質のものができる自信が無くてお断りをさせていただいた。何より、大根のぬか漬け1本が5000円という価格がバカげている。しかし、料理人は何かを感じて求めようとしたのであろう。祇園・木屋町・先斗町辺りでトレンドを作れたかもしれない。そして、自己消費分は作り続ける事にしたのであるが、二度とその時のようには完成しなかった。やはり、偶然の産物であったのだ。

上部を密閉して虫や異物の混入を防ぐ目的と、空気に触れる事を防止する為にビニール袋をかけて押し蓋をして重石を置いた。10日間ほど水は上がらなかったが、
その後、隙間から水が上ってきては、6年間で数回排水した記憶が有る。
しかも、その時期は、定期的に行う事を意識したのでは無く、
冷蔵庫清掃時に「これが、こぼれたら嫌だな。」と気付けばという程度のずぼらな頻度で行った。
重石を含めたら総重量100kgを超える重量物が冷蔵庫の隅を邪魔に6年間占拠していた。

《ぬか床と原料野菜の事前処理の事》
ご家庭で、代々昔から受け継がれていると言われるぬか床が存在する。
毎日、手を入れて混ぜる事を欠かさないで、ぬか床が維持継承されているのである。私はぬか床を管理するのが得意でなく、すぐに品質を劣化させてしまう。
詳しくその原因を追求する事は無い。なぜなら、新しくぬか床を作成する方が手っとり早くて製品品質の一定化が確実であるからである。長年、管理されてきたぬか床には相当数の生菌が住みバランスを保っていると推測されるので、条件が変われば仕上がりの品質変化が激しいと考えている。
ぬか床の中には、漬けこみ原料の風味を決定する菌に、好気性(空気に触れる事を好む)と嫌気性(空気に触れる事を嫌う)菌が存在する。麹発酵は空気を好み、乳酸発酵は空気を嫌う。これらの菌の生育環境のバランスを保とうとするのが混ぜるという作業である。で、ぬか床の上部は平らにして軽く抑えて密閉する。その点から考えてみて、乳酸発酵の方がデリケートなのかもしれない。釘を入れると発色がよくなるとか、輪切りトウガラシを入れると虫を寄せ付けないとか、色々とその工夫が言われてはいるが、私は、そのような状態になるまでに変色する野菜(特に水ナス)をぬか漬けにする時には、十分につけ込む前に変色を防止し色の流れを防ぐ処理を施してからぬか床の差し込んでいる。キュウリもそうで、キュウリはしっかりと洗浄を行わないと雑菌を大量に持つ。これもぬか床の品質を著しく劣化させる原因である。ぬか床には、*酒粕ペースト*を一定量添加していた。塩角が取れて、ぬかの風味がよく乗る試作の経験が有って以降からだ。
*酒粕ペースト*
ワンカップ大関の酒造会社が、酒粕をもう一度発酵させてアミノ酸を大量に含んだ調味料として業務用として販売していた。
今も販売しているのであろうか?
当時は、酒造会社は販売量の減少に対抗して、自社が所有する発酵技術を用いた各種製品(基礎化粧品・食材・調味料等)を開発し販売していた。

ぬか漬の製造技術を極めて製品品質の向上と食味の一定化を実現するのは、至難の業である。そもそも、製品化しても消費期限はすこぶる短い。また、製品化した後もパッケージ内での品質変化も著しい。
店頭でもぬか塗りではなく、ぬか漬の漬物製品を見る事は極端に少ないのは、それが理由であろう。

本日はここまで。
ではまた。次回。





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