寿司、強欲、大麻
寿司というものは魚介類を余すことなく、使った飲食業である。そのため、チェーン店では価格競争を制するために、いかに安価な魚を仕入れるかということに力がそそがれていた。大手回転ずしチェーンの「シャブ三昧」は売り上げ状況が芳しくないことに頭を悩ませていた。主に、東南アジアから代用魚を仕入れていることが業界ではマストであったが、シャブ三昧の代表 ベロベロはアフリカルートの開拓を狙っていた。
「社長、アフリカで代用魚が盛んな国は以下の通りでした」
部下のツァルケンシータ晋平はipadに自分がまとめた資料を映した。画面上にはソマリア、ジブチ、リベリア、ケニア、タンザニアが表示されていた。五つの国の中で最も漁獲量が多かったのはソマリアであった。
「ソマリアかぁ…」
ベロベロはソマリアでの事業開拓を渋っていた。というのも、ソマリアでは紛争が絶えず、今でも海賊がたくさん存在している世界でも有数の治安の悪い国であったからだ。しかし、治安の悪さというのは主に仕事がないという状況から来ており、ジャキは海賊の彼らを自社で働かせることによって、チープな労働力を確保でき、海賊という社会問題を解決できるのではないかと考えた。
数か月後、ベロベロはボーイング737に乗って、単身ソマリアに乗り込んだ。政府と交渉し、海賊との交渉をした。結果は成功。彼は東南アジアルートよりも安く、質のいい代用魚を確保するルートを開拓できたのである。この成功は新聞にも載り、回転ずし業界には激震が走った。
資本主義というのはいわば競争社会である。誰かが一位になればそれを必ず引きずり落そうとするライバルが現れる。そうして、日本の回転ずしチェーンはこぞって、ソマリアの進出したのである。
世はまさに大航海時代!!!
ソマリアでの代用魚の漁獲量は世界一になった。インフラは徐々に整備され、失業率も回復していった。シャブ三昧の雇用による海賊問題の解決は海外メディアにも報じられ、ベロベロはノーベル平和賞を受賞した。しかし、ソマリアが完全によくなったかと言われるとそうではなかった。依然として、麻薬ビジネスだけは横行していた。いつまでたっても、麻薬を撲滅させることはできない。それどころか、先進国の企業に安い賃金で働かされる漁師たちは麻薬にのめりこんでいった。ある日、シャブ三昧は誤って、寿司に使う大葉と大麻を入れ替えて寿司を販売してしまった。焦ったベロベロは証拠の隠ぺいを図った。
麻薬の混入させたのが世間にバレるのは時間の問題だろう
そう考えていたベロベロはソマリアに逃亡する準備を進めていた。だが、いつまでたっても大麻を混入させていたことはバレなかった。それによって、魔がさしたベロベロは徐々に麻薬ビジネスにのめり込む。まずは、もともと海賊をやっていたソマリアの従業員を使い、他の麻薬組織を潰し、大麻やコカイン、ケシの花の畑を一つずつ、確実に我が物としていった。ソマリアにあるベロベロの会社はホールディング化されておらず、社長もベロベロではなかったため、国際社会にシャブ三昧の企業が麻薬組織のトップをしているとはバレなかった。
数年後、ベロベロは麻薬ビジネスを成功させ、莫大な富を築くことに成功した。政府や情報機関も買収でき、将来は安泰だった。ソマリアで200個ほどの別荘を持ち、部下も数千人規模で持っていた。夏の暑さが真っ盛りなある日、ベロベロは麻薬ビジネスの右腕であるリョヘとプールサイドで寛いでいた。
「ここまで組織をでかくできたのはお前のおかげだよ。日本でのシャブ三昧も今ではすしチェーンてはトップの売り上げを誇っているよ」
「いえいえ、すべてはボスの手腕がすごかったからですよ」
「お前はまた、謙遜か?まぁ、とにかく、今日は飲むぞ!」
リョヘは肩をポンポンと叩かれ、ベロベロは酒を取るためにバーカウンターに向かっていった。すると、その瞬間、リョヘが腹に隠していたデザートイーグルを取り出し、鉄の球をボスの腹に三発ほどブチ込んだ。
「お、おまえ、なぜこんなことを?」
「なぜって?あんたのしたことを考えてみろよ」
「おまえは俺のおかげで莫大な金を手に入れたではないか、何が不満だったんだ」
「たしかに、あんたのおかげでお金は手に入れた。でも、まちをみてみろよ、海をみてみろよ。あんたの商売のせいでソマリアに海賊は戻り、麻薬組織だってはびこっているよ。あんたさえこなければ海賊だけで済んだんだよ。」
「いまさら、何を」
「口を開くな、ベロベロ。ところで、お前の顔面はさわやかイケメンだな。」
「ど、どういうことだ」
「どういうことか、教えてやるよ。」
そういうと、リョヘは引き金を引き、ベロベロの顔面を蜂の巣にした。リョヘはベロベロの死体から流れる血で以下のような文字を書いた