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【ショートショート】アートの真実

この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。

画家のヤマダは、今日も巨大なキャンバスに向かっていた。

彼の新しいプロジェクトは、社会の矛盾や不平等を鋭く風刺するもので、完成すれば世間を騒がせること間違いなしだった。

彼の作品は、あっという間に注目を集め、メディアでも取り上げられた。


ある日、ヤマダのもとに一通の手紙が届いた。

政府からの依頼で「国を代表するアート作品として展示してほしい」という内容だった。

ヤマダは少し戸惑ったが、政府の支援を受けることでメッセージがより広まると考え、依頼を引き受けた。


しかし、展示当日、ヤマダの目の前に現れたのは全く別の作品だった。

政府の手によって都合の良い部分だけが切り取られ、元の作品の意図は完全に歪められていたのだ。

「これは一体…」

ヤマダは驚愕し、怒りに震えたが、抗議する術はなかった。


その後、改変された作品は、政府のプロパガンダとして利用され、世間の賞賛を受け続けた。

ヤマダの本当のメッセージは、闇に葬られたままだった。

彼自身も、そのシステムに取り込まれてしまったのだ。


ヤマダは深い無力感に襲われたが、諦めることなく新たな戦略を考えた。

彼は自分のオリジナル作品の画像をSNSで拡散し、その本来のメッセージを訴え続けた。

「本当の作品を知ってほしい」とコメントを添え、作品の意図や背景を詳しく説明する投稿を毎日続けた。


ヤマダの投稿には様々な困難が待ち受けていた。

政府からの圧力やSNSプラットフォームの規制、さらには世間の無関心と戦わなければならなかった。

それでも彼は諦めず、毎日投稿を続けた。

そして、次第に真実に気づいた人々が声を上げ始めた。


「これが本当の作品だ!」とネット上で話題となり、ヤマダのオリジナル作品は再び注目を集めた。

人々は政府の改変に怒りを覚え、抗議運動が広がった。

メディアもヤマダの本当のメッセージを取り上げるようになり、彼の作品は本来の意図を取り戻した。


ヤマダは静かに息を吐いた。

「これで終わりじゃない。真の変革はこれからだ」

彼は新たなキャンバスに向かい、更なるメッセージを込めたアートを描き始めた。

その背中には、まだ見ぬ未来への希望が静かに宿っていた。

ヤマダの決意が、今度こそ世界を変えるかもしれない。


しかし、今度は政府が「安全のため」と称して堂々と監視カメラを設置し、ヤマダの一挙手一投足を監視する体制を整えていた。

ヤマダは次の一筆を描く手が震えたが、それでも決意を胸に秘めてキャンバスに向かった。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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佐藤直哉(Naoya sato-)
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