【ショートショート】地方創生のカリスマ
この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。
人口減少と高齢化が進む小さな町。
そんな町に、野心的な若手市長ヤマダが現れた。
「地方創生?お任せください!」と自信たっぷりに、都会からの若者を呼び込み、町を再生するプロジェクトを次々に打ち出す。
カフェを開き、観光施設を作り、IT企業まで誘致――町は確かに活気を取り戻し、ヤマダは「地方創生のカリスマ」として全国的に名を馳せることとなった。
しかし、ある日、町の中心に建てた観光施設が突然崩壊するという大事故が発生。
町民たちはパニックに陥り「ヤマダ市長、これ一体どういうことですか!?」と詰め寄る。
ヤマダは動揺を隠しながらも現場に急行し、調査を進めると、崩壊した地面の下には、豪華な地下都市が広がっていた。
そこはヤマダが密かに建設した、彼自身のための「隠れ家」だったのだ。
「こ、これはですね…危機管理の一環として…」と、ヤマダは弁明しようとするが、町民たちの冷たい視線はそれを許さなかった。
しかし、町の再生という成果は確かなものであり、彼を追及しきれない町民たちは、不本意ながらもその場を収めることにした。
だが、数日後。
ヤマダが地下の豪華なリビングでくつろいでいると、突然、照明がすべて消えた。
驚いたヤマダがあたりを見回していると、どこからともなく声が響いてきた。
「ヤマダ市長、地下の電力は町のエネルギー会社が管理しているんですよ。町にもっと貢献していただけないと、今後このような『不具合』が頻発するかもしれませんね」
ヤマダは額に汗を浮かべながら「も、もちろんです。町のために…」と弱々しく答えた。
その瞬間、照明は再び点灯したが、ヤマダの心に安らぎは戻らなかった。
それ以来、ヤマダは町民たちの目を気にしながら、昼も夜も休まることなく、町のために働き続ける羽目になった。
だが、彼がどれだけ頑張っても、地下都市の電力は時折「不具合」を起こし、その度にヤマダは冷や汗をかくことになった。
「地方創生、ちょっとやり過ぎたかもな…」と、ヤマダは独り言を呟くが、その声に耳を傾ける者はいなかった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。