【ショートショート】夢の国
この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。
経済成長が急速に進んだある国。
労働力不足を解消するために、移民政策を大幅に緩和し、世界中から希望に満ちた人々が集まってきた。
豊かさと自由が謳われ、まるで夢の国のように見えた。
しかし、現実は甘くなかった。
移民たちが到着すると、まず「特別区域」と呼ばれる隔離された場所に送り込まれた。
そこは理想とは程遠く、劣悪な生活環境と過酷な労働が待ち受けていた。
政府は「短期労働プログラム」として、移民たちを安価な労働力として使い捨てにしていた。
「こんなはずじゃなかった!」と一人の男はつぶやいた。
彼は家族を養うためにこの国に来たが、現実の厳しさに絶望していた。
ある夜、彼は決心して特別区域からの脱出を試みた。
「よし、脱出作戦開始だ!」と意気込んだ彼は、夜の闇に紛れてこっそりとフェンスを越えた。
しかし、無情にもセンサーが鳴り響き、彼は捕まってしまった。
彼に待ち受けていたのは、政府が用意した「再教育プログラム」だった。
「再教育って…ただの洗脳じゃないか!」と叫んだが、施設の中で彼の声は誰にも届かなかった。
数ヶ月後、再び現れた彼は、もはや以前の彼ではなかった。
目には生気がなく、ただ無言で働き続けるだけの存在となり果てた。
かつての夢や希望はすっかり消え失せ、ただ機械のように働く日々が続くだけだった。
政府は移民政策の成功を誇示し、「夢の国」としてのイメージを守り続けた。
しかし、その裏に潜む闇を知る者はいなかった。
夢の国の真実は、誰にも語られることなく、静かに闇の中に葬られていった。
そして最後に、この国は自らを「最高の人材輸出国」と誇った。
誰もが「このロボットたちは、元は夢を抱いた人間だった」とは気づかなかった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。