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【ショートショート】説明の迷宮
この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。
タナカは、新しい企画書を手に会議室に入った。
「説明」という言葉がこれほど恐ろしいものだとは、会社に入るまで思わなかった。
「タナカ君、この企画書だけど、ちょっと説明してくれるかな?」
部長の声が、穏やかに響く。だが、その響きはまるで「トラップドア」の開閉音に聞こえた。
タナカの心の中
「これが失敗したらどうしよう?」
「いや、落ち着け。自分はちゃんと準備してきた。」
「…準備、してきたはずだよな?」
「えっと、この企画書はですね…画期的なアイデアでして…」
タナカの声が、かすかに震える。
「画期的、ね。それ、具体的にはどういうこと?」
部長の質問は的確だったが、それがタナカをさらに追い詰めた。
「えっと、それはですね…つまり…たとえば…」
話せば話すほど、自分の言葉が空中で霧散していくように感じる。
部長のアドバイスが飛ぶ。
「タナカ君、説明ってさ、聞く側の頭の中に地図を描くようなものなんだよ」
「地図…ですか?」
タナカは目をぱちくりさせる。
部長はうなずく。
「そうだ。地図が複雑すぎると、聞く側は迷ってしまう。シンプルで、明確な道筋を示すことが大事だ」
会議室を出ると、同僚たちが待っていた。
「どうだった?」
タナカは肩を落とし、ポツリと言った。
「俺、多分、みんなを迷子にさせた…」
翌日、社内掲示板にはこんなルールが貼り出されていた。
「説明は一枚の地図を描くように――複雑すぎる道筋は禁止」
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最後まで読んで頂きありがとうございました。
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