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【ショートショート】紙の本 vs 電子書籍
この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。
静かな図書館。
紙の本を手にした老人と、最新の電子書籍端末を持つ若者が向かい合っていた。
「紙の本には、歴史の重みが詰まっているんだ」
と老人は言った。
「この香り、手触り、ページをめくる音…それが本当の読書体験だ」
若者は肩をすくめ
「まあ、それもいいけど、この端末には千冊が収まってるんだぜ?どこでも読めるし、重さなんて気にならない」
と得意げに反論する。
老人は目を細め
「千冊か…だが、その未来がどれほど続くかはわからんぞ」
と、不吉な笑みを浮かべた。
その時、図書館の灯りが突然消え、二人は暗闇に包まれた。
若者は焦って端末を操作するが、画面は真っ暗。
「バッテリーが…切れた?」
老人は静かに笑みを浮かべ
「結局、最後に頼りになるのは紙の本だな」
と誇らしげに言う。
しかし、彼が手にしていた本のページが湿気でベタつき、次第に崩れ始めた。
「なんだって…?」
老人は驚いた。
若者は笑いながら
「耐久性を誇るなら、ちゃんと管理しないとね」
と軽く肩をすくめた。
その時、二人は足元に目をやった。
そこには、古びた石板が静かに置かれていた。
石に刻まれた文字は何千年も前のもので、今もなおはっきりと読み取れた。
老人はしばし石板を見つめ
「…本当に頼りになるのは石だったか」
と、しぶしぶ認めるように呟いた。
若者もため息をつき、二人はただ静かにその石板を見つめ続けた。
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最後まで読んで頂きありがとうございました。
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