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時間の感じ方3 時間と音楽

オヤジブログ怪気炎 vol.100

一昔前、アダージョカラヤンというアルバムが世界的にヒットしました。adagioはイタリア語で「ゆるやかに」の意味。せかせかと時間に追い立てられている現代人の心に、響く何かがこの間アルバムにはあったのでしょう。
けれど所詮は西洋音楽。adagioでもlargoでも曲が一定のテンポで前進していくことに変わりはありません。
ところがアゴーギクという振れ幅を逸脱した何ともまったりした音楽が日本にあるのです。我田引水のようですが、無拍の琵琶楽です。一つひとつの言葉や琵琶の音色が、ゆっくりと周囲の空気にとけこんでいく。盲僧琵琶系の流派では、舞台では合わせもの(=合奏)より独奏のことが多く、その速さが奏者次第なのは、ピアノの独奏と同様です。けれどピアノ独奏が概して速い演奏が多いのに比べて、琵琶楽は決して先を急ぎません。表現者鑑賞者ともゆったりとした時間に身を浸しているのです。
奏者が見ている詩文には、速度記号も何も書いていなません。作者や楽譜指定による縛りがないからこそ自由でのびやかな表現が可能になったのかもしれません。

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