関西で生活したら驚いた〜憧れと現実の落差〜
紆余曲折があって関西に転勤することになった。街に出ればみんな漫才やってるってやつ。生活するには漫才に加わることになる。
まわりの人達は関西弁だ。大阪弁と書かないのは皆さん関西エリアの色々なところから来られているので自分の関西弁を話される。皆のそれぞれの言葉を尊重する大人な世界。
私はエセ関西人のような言葉になると嫌悪感抱かれるだろうと察して文法や単語はそのまま関東をキープしつつイントネーションをちょっとずつヒアリングして関西風にしていった。
何回聴いても分からなかったのは京都のおばんざいと地名の谷町のイントネーション。どう気を付けても相撲のタニマチやと言われた。半分からかわれてるのには気付いてた。
関東の人は冷たい、気取っているから嫌いという先入観を持っている人もいた。何回も書いてる播州出身のクソリーダー。キメツケが酷かったので私が普通にしていることが意外に見えたようで関西人っぽいねと言われた。
飲食店で会計したあとごちそうさまと言ったら関東の人はそんな事言わへん思ってたわ、関西人っぽいなとか言う。いや、それはあなたの認知の問題であって…こんなだから出だしからうまくいくわけなかった。お前関東人に何かされた恨みでもあんのかよと。無いのは分かってる。勝手に警戒してるだけ。
テレビをつければ大阪ローカルが見放題。特に情報番組が多くて好きな関西メインの吉本芸人が出まくっている。情報と言っても食べ物ばっかりだけどね。新喜劇もやってる。
これはあちこち出掛けようなんて気にならないな。
職場で休憩中にテレビを眺めていて関西限定な芸人が出てきてティーアップだやすともだと反応すると何で知ってんの?と、不思議な目で見られる。
バック・トゥ・ザ・フューチャーでマーティーがロレインの家族とテレビ見ながら食事してる時にこれ見たことあると言って不思議がられてる感じ。
関西に潜入するには吉本知識は抑えないと怪しまれる。注意しよう。
当時4人のプラン9が出てきたらプラン9は9人おったときオモロかったなーとか言ってる。いやいや…。鈴木つかさが居たときでも5 人ですよとか言ってしまうと怖がられる。
そうか、ここにいる人たちより自分は吉本のお笑いの知識がかなりあるんだということに気付く。
テレビに土肥ポン太が出ていて東京進出したけど帰ってきたんやなーとか言ってる。その短い東京進出期間に私が単独ライブ見に行ってたなんて言わない方がいいだろう。
下手にお笑いマニアだと思われてしまうと何かオモロイこと言うてーやとなる可能性が高い。滑ったりしようものならなんぼ知識あっても関東もんはおもんないわーとなる。これは嫌だ。
芸人でもない普通の人がお笑いを披露することなんてないと思ってたが関西では皆やっている。これがすごかった。
京都のお客様を接待した席でその人はサバンナ高橋の同級生だと。いろんな話を聞くがどの話も面白い。関心してるばっかりでもいられなくて、なんかお題のようなものが出されて一人ずつ答えようという流れになった。そう、一般人が飲み会で大喜利。
もう千原ジュニアがストイックな時代に若手芸人とやってた飲み会だよ。お題が何だったか忘れたが私はエマニュエル坊やと答えてウケた。一旦ウケるとお前は認めるみたいな空気が生まれる。なんじゃそりゃ。
部長を交えて数人で居酒屋に行くとまた始まる。オモロイ事言うたもんから食べてエエというやつ。大喜利より自由度があって最近あった話でもいいし、すべらない話のように何回聞いても面白い話をしてもいい。とにかくウケないと食えない。
これどこかで見た光景だなと思ったらこち亀で大阪の通天閣署の新年会に両さんが参加する話だ!
通天閣署ではネタをやってウケないと料理が食べられないという話が146巻にある。まさにこれが現実になってる!
こち亀って大阪への偏見が酷くてこの話もかなり大阪の文化をディスって盛って書いてるようだが現実が漫画と一緒だったとは驚きだ。
大人数での忘年会のような飲み会になるとスゴい。東京から幹部が招かれていたので誰ともなくみんなで自己紹介しようという声があがる。
偉い人がせっかく大阪に来てくれている、アピールするチャンス、みんなで自己紹介しよう、とても素晴らしい。
端から順々に立って喋るのだが名前言って終わりなんて人はいない。それぞれネタを持っているのだ!確実にひと笑いとってオチて次の人という感じで進んでいく。社交性のありそうな人は芸人顔負けのトークをするし、おとなしい人もキャラに合った独自の世界を披露して笑いをとる。こっちの方が絶妙に面白かったりする。
人数が人数なんで時間内に終わるかなと気にしだしたら誰がタイムキーパーしていたわけでもないのに最後の一人の話がオチたところで時間ぴったり。
皆が無駄に時間を取ったりせず、この場に最適なサイズのネタを引き出しから出してウケても調子に乗って何回も同じ事言ったりせずに次の人に渡すというかなり難しいチームプレイが出来てしまう人たち。
すごく大人でかっこいい。酒の席で酔いながらだから尚更だ。当然東京から来た幹部も大喜びで何かで再会したときもすぐに思い出してもらえるだろう。嫌でも大阪を特別扱いしちゃうね。これぞ接待、事前に皆で打ち合わせなんてしないのに恐れ入る。
一人一人の話を聞いているとやはりとてもうまい。起承転結がハッキリしていて分かりやすくて面白い話。これが全員出来るという関西は何なのか?
環境だと言ってしまえばそうだな。喋る機会が多くてウケるヤツが偉いという文化では喋らないタイプの人ですら底上げされて面白いという。
じゃあプロである芸人はどう見られているかと言うと、特別に面白い喋りが出来るスゴい人とは見られていない印象だ。なんなら俺の方が喋ったらウマいくらいに自信を持っている人が多い。だから芸人を特別あげる訳でもなく下げるわけでもなく親しみを持っている感じだ。
ダウンタウン以降のお笑いの地位をあげ過ぎた感覚を持ってしまっていた私は関西芸人も崇め奉っていた。本場に来るとそんなでもない。
それと吉本新喜劇は誰も見ていない。土曜のテレビを見ながら焼きそば食べるのが定番みたいに言われているが、私のまわりの人は全員見ていなかった。やっているのは分かっているけど腰を据えてじっくり大の大人が見るようなものでは無いらしい。カルチャーショックだ。
それでもなんばグランド花月に行けば本場の熱気がすごい。新喜劇のパートだけじゃなくて漫才やる前半もテレビでやって欲しいななんて思ってた。
これらの劇場中心の文化をことごとく潰しにかかったのが大崎。ダウンタウンをテレビに出すことだけ優先した。劇場文化を残しながらダウンタウンやる度量が無かったから今こんなことになってる。
それでまあ関西限定芸人がめずらしいのも最初の何ヶ月だけでそれが普通になる。なんばグランド花月もそんなに行かなかった。
また転勤することになってさようなら関西…。
憧れが現実になるともはや日常ということが分かりました。