波長が合って大親友②〜つらい別れ〜

  ①からの続き

 「鈴木さん!お久しぶりです」
 「田端さんがお亡くなりになりました。仲良かったですから連絡した方がいいと思って」
 「え?そんな…」
 「杉並で今日お通夜があります。私も行きますけどどうします?」
 「絶対に行きます。あとで合流しましょう」

 なんてことだ。信じられない。
 仕事は相変わらずハブられててヒマだったから課長には不幸があったので午後抜けますと告げて葬儀場へ向かった。途中で香典袋や黒いネクタイを買う。

 親戚以外の葬儀に出るのが初めてだった。ましてや親友と言える人だ。とにかく現実味が無い。
 いつものクセで2時間以上前に到着する。大きい葬儀場。ここにもう田端さんは居るのか?ウソだろ?

 タリーズで香典袋を準備したりネクタイ付けたりしたあとしばらく放心状態。いやこれから起きる事、来たのは間違いなくて良かったけど辛すぎるな。

 時間が近付いて来たので店を出て鈴木さんに電話してみる。近くに居て合流できた。

 「鈴木さんありがとうございます」
 「連絡して良かったです」
 「なんか現実味が無いんですけどどう捉えていいか…」
 「私もですよ…」

 そう、どんなに仲が良くても本人は死んだら連絡出来ないので呼んでくれる人が居なければ亡くなったことが分からないのだ。

 記帳を済ませるとお兄さんが居た。顔を見てあげてくださいと言われ駅で別れて以来の対面。
 涙がドバドバ溢れてきた。あの楽しかった田端さんがこうして目の前で安らかに眠っている。こうなるとウソだろという疑問は無くなり現実がのしかかる。

 沢山人が集まっている。皆さん悲しんでいる。人望があって愛された人だ。本当に惜しい。
 学生時代からの親友の方が弔辞をされた。そんなあだ名だったのかとか吹奏楽部だったんだとか知る。

 通夜振る舞いを鈴木さんと食べているとお兄さんが来られた。

 「今日はありがとうございます」
 「ご愁傷さまです…」
 「急に逝っちゃったんでね…」
 「どうして?…」
 「あ、お伝えしてなかったですね。仕事中に倒れてそのまま。事故じゃなくて病死です」
 「びっくりされたでしょう…」
 「この前まで新しいギター買ったから見てくれよなんて言ってましたからね」
 「はー…」

鈴木さんが言う。

 「お兄さん本当こちら田端さんと仲良しだったんですよ。勤め先が変わってしまったから今は遠くに居て…それで私が今日電話して呼んだんです」
「そうですか。あいつも喜んでいると思いますよ」

 もう涙が更にドバドバ。ご家族の辛さも考えると。それで葬儀は終わったのだが私が嗚咽過呼吸で大変になってこのまま一人で帰れないのでちょっと落ち着こうと鈴木さんと飲食店に入った。

 「いやー今日は本当に連絡くださってありがとうございましたヒック!」
 「まあ落ち着きましょう」
 「私たちも独り身だから突然死とか明日は我が身かもしれないですヒクッ!」
 「田端さん仕事中の病死ですけど事故の場合でも一人親方だから会社からは何も出ない」
 「死んでからお金もらっても独身だと使いようないです」
 「そう!そうなんですよ!命あってのなんとやら」
 「田端さんどうみても健康そうではなかったですよね。顔色悪かった」
 「ロックな人は不健康なんですよ」
 「ちょっと前にプロレス誘われたんですよね。しかも当日2時間前に…行けばよかったなぁ」
 「それ私行きました。面白かったですよ」
 「あー!鈴木さんが行けたのなら良かった」

 軽く食べて落ち着いて店を出る。鈴木さんに改めてお礼を言い再会を約束する。

 家に付いたら日付が変わってた。ああそうだ塩をふるんだったな。シャワーを浴びて寝る。疲労で即落ちた。それで夢に田端さんが出て来た。

 前の職場でよく見た風景。現場で下ネタ言いながらデカい工具箱を運んで作業の準備をする。なぜか工具箱からエレキギターが出てきて田端さんが大音量でかき鳴らしてみんなで盛り上がる。

 目が覚めた。田端さんがギター弾いてるとこなんて見たことないのに。そしてまたぐしょぐしょに涙が出ていた。さすがに辛いな耐えられるか?と心配になる。

 起きる時間になり洗面所で鑑を見るともう目が開いてない。ただでさえ細い目が泣きすぎて腫れてひどい。これは人に見せられないな。普段人に見せられる顔をしているかは別として(自虐)。出社してもやることないし。朝は課長に目がおかしくなったんで休みますと伝えた。嘘はつけないからな。

 さてそれから何年も経ちました。こういった別れは時間が経てばいい思い出だけ残るよなんて言う人多いけどね、乗り越えられるようなもんじゃないね。このnote涙流しながら書いてるんだから。

 仲良くしてた、楽しかった、亡くなられた、もう会えないという事実を理解した。受け入れる必要はない分かればいい。だからもっと連絡とってればとか会ってればなんてのも考えることはない。楽しかったという事実が何よりの宝物になっている。
 そんな感じ。

 大好きな田端さん、安らかにお眠りください。

 

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