5/15 ピダハン・ランチ
昼ご飯をめちゃめちゃ食べる。
例えば休日、毎回8時くらいにアラームをかけるも「なぜ休日なのにこんな時間に起きなければならないんだ」と半ギレでアラームを止め、気づくと大体10時くらいになっている。ので、大抵の場合は朝と昼の境目の時間に動き出すことになる。
そうなると、まあ朝ごはんは食べない。食べたとしても、昨日の夕食の残りや実家から送られてきたお菓子などを食べて小腹を満たす程度。
今日も休日だったので、立ち上がりとしては前述の通りといった形だった。前日に友達がくれたコンビニのチョコビスケットを食べる。起きてから何も飲まずにいきなり食べたので、2分ほどむせた。
そしてそこから1時間程度、ボーっとYouTubeを見たり寝転がったまま自家製のドライフラワーの乾き具合を眺めたりする。ようやく布団から出たのが11時30分頃。身支度をし、近所の業務スーパーに行った。
業務スーパーは良い。この世に必要なものが全て揃っている。そしてその全てがメジャー商品の廉価版である。パッケージに知らない明朝体が使われている食パンや、工場での大量生産を思わせる無機質なラベルの料理酒などを見ていると、なぜか創作物の世界にいる気分になってくる。創作の世界に超熟は無い。あるのはこういった、妙に偽物チックな類似商品だけだ。超熟の明朝体には温かみがあるが、業スー食パンの明朝体にはどこか現実とズレた怪しさがある。
業務スーパーが、創作という概念をその細胞に有する存在であるなら、業務スーパーの出来合い品を出している居酒屋は全て創作居酒屋なのかもしれない。
そんなことを一キロ約350円の白菜キムチを見つめながら考えていると、あっという間に30分ほど経ってしまう。入った時流し始めたラジオがレジに並んだあたりで終わるというのが業務スーパーに行った時のお決まりの流れだ。1852円に2000円で払うというキリの悪い払い方をしてしまい、すみません、と小さな声で言った。
店の外に出る。食品がパンパンに詰まったレジ袋(大きい、5円のやつ)から今買ったばかりの辛子明太子おにぎりを取り出して食べた。家まで徒歩15分ほどの道をブラブラと歩きながら、そういったおにぎりを黙々と食べる。
8個、食べる。
――昼ご飯をめちゃめちゃ食べる。
ピダハンという部族をご存知だろうか。アマゾンの熱帯地域に暮らす彼らは、非常にユニークな文化や人生観を持っている。
''イビピーオ''という言葉で表される彼らの生き方は、直接体験や''今、目の前で起きている''といった事柄を重視する。
例えば、彼らには1日3食といった習慣が無い。それどころか、そもそも食事を重視することが少ないようだ。ピダハンについての現地調査を行った研究者の話では、一切の食料調達をしないまま3日間踊り続けたこともあるらしい。反面、ピダハンの人を海外に連れて行くと、ハンバーガーなどの美味しい炭水化物を一度にドカ食いするのですぐ太るとも。
食べたい時は大量に食べる。食べるより楽しいことがある時は、お腹が空いても食べない。
昼ご飯をめちゃめちゃ食べている時、そんなピダハンの暮らしについて思いを馳せる。今という時間にしか関心が無く、創作も神話も存在しない。けれど、自分と同じように一度にドカ食いをする人々のことを。
なぜ昼ご飯をこんなに食べるのか。なんとなくではあるが、体が一番正直になる時間が昼、理性が一番自由に使える時間が夜だからなんだと思う。今日の自分の体は業務スーパーの激安おにぎりを欲していた。だからそれに応えるために8個も食べた。それだけの話だ。
夜。
お腹にたまったおにぎりのことを思いながら、朝食べ残したチョコビスケットを食べる。
今度はむせなかった。
↑
めちゃめちゃ面白いラジオがピダハンについて書かれた本を取り上げためちゃめちゃ面白い回。
おすすめです。