前回は前口上を書かせていただいた。
エピソード1でメモを取る全盲の女性がいると知って最初に思ったのは見えていたときの習性でつい書いてしまうのだろうということ。でも全然違っていた。彼女は書いているあいだ指で筆跡を確認することなく、さっき書いた場所に戻って強調するために数字や文字を丸で囲ったりアンダーラインを引いたりすることができるというのだ。しかも地図まで描ける。全盲になって10年もたっているのにだ。そのことを疑う気は毛頭ないのだが、いったいどうなっているのかが見えてこない。それでもう一度プロローグを読み直すことにした。
プロローグ:究極のローカル・ルール
本書を読んでいく前提として頭に入れておきたい事項を書き出してみた。
これまで記憶とか体については特に考えたこともなかったし知識も乏しいのでエピソード1のメモを取る全盲の女性を読みかけて挫折しそうになったけれど、体についての研究では合理的に説明がつかない部分が必ず残ることがわかって少し安心した。体が覚えているという現象でまず思い浮かぶのは自転車の乗り方だ。わたしは大人になってからはほとんど乗らないできたが、先日数年ぶりに乗る機会があった。もちろん練習なしでスムーズに乗ることができた。体が自転車の乗り方を記憶しているからだと思う。
この先、視覚を失ったらと想像してみた。ひとりきりで長い距離は無理だろうが、ある程度の広場であれば自転車には乗れるような気がする。歩けなくなったとしても、自転車の乗り方を言葉で伝えることもできそうだ。
メモを取ったり地図を描く全盲のわたしは依然想像できないままだが、究極のローカル・ルールがあればなんとかなるかもしれない。エピソード1に進もう!
次回へ続く。