甕の中を見たら死ぬ謎のツボ「猿酒」（秋田県横手市）
『奇跡体験！アンビリバボー』第1回放送：見たら死ぬ謎のツボ「猿酒」
1997年10月25日（土）に放送された『奇跡体験！アンビリバボー』第1回では、「見たら必ず死ぬ謎のツボ」として霊薬・猿酒（さるざけ）が紹介された。
・アンビリーバボー第1回のテレビ欄
「今宵、摩訶不思議へご案内。秋田の民家に、十一世紀から伝わる「猿酒」を入れたカメがある。酒と言っても、カメに“天日で干した猿”と水と塩を詰めただけの代物。その昔、腹痛に効くと愛用された薬だった。
しかし、千年も前の「猿酒」の『猿』、原形をとどめてはいないはず。 持ち主曰く「カメの中をのぞくと死ぬ。 現に死んだ者もいる。 絶対見てはいかん。」
…本当にカメをのぞくと死んでしまうのか。 はたして「猿酒」とは…」
猿酒とは？
猿酒は、一般に果実を発酵させた酒を指すが、「中身を見ると死ぬ」と言われる猿酒は、秋田県の旧家に代々伝わる門外不出の霊薬である。江戸時代以前からその存在が知られており、「菅江真澄遊覧記 雪出羽道 平鹿郡14」にも記録されている。中には猿の肉片が漬け込まれており、甕（かめ）の中身を見た者は間もなく死ぬと伝えられている。
菅江真澄と猿酒
江戸時代の紀行家・博物学者である菅江真澄は東北地方を旅し、現地の人々の暮らしや風習を観察し記録した。その紀行文にも猿酒が登場しており、特に秋田県平鹿郡一帯ではよく知られた存在だった。
言い伝えによると、猿酒は前九年の役（1051-1062年）の頃に作られたとされ、製法は大猿3匹の肝と背肉を30日間水にさらして、それを日に乾かして美酒に漬け込む。その後、炎天下で干したあと塩水に3年漬ければ猿酒となる。
猿酒は島田源助という武士が所有していたもので、後三年の役（1083-1087年）で主君の城が落城した際に、家宝であった猿酒を持って山内村の田代に身を隠した。
猿酒はお腹の病に良く効く秘薬であったので、島田源助は薬売りとして生計を立て、その地に定住したという。猿酒は今も現存しており、島田源助の子孫が厳重に保管している。
民話に見る猿酒
『横手盆地のむかしっこ』や民話にも、猿酒の話が記録されています。ある話では、猿酒の甕（かめ）を中身を見ることを強く禁じられていましたが、興味本位で中を見た僧侶が1年以内に死んでしまったという逸話があります。それ以降、島田家では猿酒を誰にも見せず、薬としても販売せず、神聖な家宝として祭り上げました。
中身を見たら死ぬ猿酒の祟り
猿酒には「甕の中身を見た者は死ぬ」という伝説があり、過去には以下のような事件が起こったとされてる。
とある和尚（金沢の祇園寺とされる）が中身を見たいと懇願し、所有者がしぶしぶ見せたところ、和尚は1年も経たずに亡くなった。
数十年後、同じ寺の和尚がやって来て、先祖が猿酒のせいで本当に死んだのかを確かめたいと、中身を見たが、やはり1年後に亡くなったという。
なぜ猿酒の中身を見ると死ぬのか、その理由についてははっきりと分かっていない。しかし、猿酒には霊力が宿っているとの言い伝えがあり、製法に使われた「大猿3頭」の正体が秘められた謎とされる。
猿酒には「中身を見た者は死ぬ」という恐ろしい伝説がある。そのため、所有者の家では家主以外が猿酒に触れることさえ禁じられていた。昔、とある和尚が猿酒の中身を見たいと願い出たが、所有者は頑なに断った。しかし、和尚が「死んでもいいから見せてほしい」と懇願したため、やむを得ず甕（かめ）の中身を見せた。すると、和尚は1年も経たないうちに亡くなったという。
その数十年後、同じ寺の別の和尚が「先祖が猿酒の中身を見て死んだという話が本当かを試したい」と言い出した。仕方なく甕の中身を見せると、やはりその和尚も1年後に死んでしまったという。この「中身を見た者が死ぬ」という謎を解く手がかりが、菅江真澄の紀行文に記されている。
猿酒に宿る女神
菅江真澄の紀行文『雪の出羽路』には、猿酒について以下のような記述がある。
「世はひろしといへども、清原ノ家に伝えて、この酒殿のおほみ神は、女ノ君にてさふらへば、此酒もてよろづのやまふを癒すしるしをうる也。」
この記述から、猿酒には女神が宿っており、その霊力が病を癒す力の源であると考えられる。さらに、小桑やアケビなどの果実を発酵させた猿酒にも霊力が宿るとされており、民話には次のような話がある。
「ある人が山で偶然見つけた猿酒を持ち帰ると、猩々（しょうじょう：猿に似た酒好きの妖怪）がそれを取り返しにやってきた。」
大猿の祟りと猿酒の謎
猿酒は「大猿」から作られるとされているが、民話ではこの「大猿」が妊娠中の猿を指す場合がある。ある伝承では、次のような話が語られている。
「冬の大雪の日、老松の影で大猿を見つけた猟師が、命乞いを無視してこれを射た。調べると、それは妊娠中の猿であった。その後、猿の祟りによって猟師の家は没落した。」
もし猿酒の「大猿」が妊娠したメス猿であるとすれば、その霊力は1頭でも家を没落させるほど強い。猿酒には3頭の大猿が原料として使われているため、込められた霊力の強さは想像を絶するものである。
さらに、猿酒に宿る「女ノ君（めのきみ）」は「猿女君（さるめのきみ）」に通じる。古代において猿女君は巫女を指していたことから、猿酒と巫女が何らかの関係を持つ可能性が示唆される。もし関係があるのだとすれば、猿酒の背後にはさらに恐ろしい物語が隠されているかもしれない。
