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悪夢のバレンタインデー

 毎年、バレンタインデーが近くなると、娘がソワソワするのが分かる。手作りのお菓子を友人にプレゼントしたいとのこと。

でも、普段からお菓子作りなんかしない。私もしない。だから、実際しんどいイベントなのだ。

バレンタインデーの前日のお昼過ぎにラインが入り、「これを作りたいから、材料買っておいて。」と急すぎる連絡。

でも、娘の帰宅は、部活と塾で夜10時過ぎ。いくらなんでも無理でしょう。そんな時間からお手伝いするのも、しんどい。

私は、「もう何か買って渡したらいいよ。」と、ケーキ屋さんにクッキーを大量に買いに走った。それを小分けにして包装して渡すのを提案してみた。

 でも、娘は絶対に作ると言い張る。「部活の友達が手作りするのに、自分だけしないのは恥ずかしい。」言い出したら聞かない娘。

今は、テスト期間だよ。手作りにこだわることないんだよ。そうしなくてもいい選択肢もある。

普段、娘は家事を何もしない。部活や塾、友達のお誘い。そんな時間がないのも分かるけれど…。

お米を研いで御飯を炊くとか、せめて、自分が食べたものの後片付けくらいはしてほしいと思う。
でも、クタクタに疲れている娘には、言えない。言わない間に、すっかり何もしなくなってしまった。

娘が小学校高学年の頃、料理をしてみたいと言って、キッチンに立ったことがある。材料も丁寧に切り、それをきちんと小分けにして、頑張っていた。あまり上手にできなかったけど、あの時、もっとちゃんと褒めてあげたらよかったなぁ。

毎年、バレンタインデーには、お友達から大量の友チョコをもらってくる。ほとんどが手作り。中には、販売できるんじゃないかと思うくらい、ラッピングも素敵で、味も美味しいものもある。

そんな中、自分だけが出来ないのは悔しいのかな。

娘がそこまで言うなら仕方ないと、買い出しに出た。時間は夕方6時。辺りは真っ暗。

 スーパーで買い出しをしていると、かなり値上がりしてるのが分かる。バター、こんなに高かったっけ?
安くおさえようとして、マーガリンにした。遅く帰ってくる娘は、疲れているだろうなぁ。結局、材料混ぜるだけの簡単なキットを買うことにした。私も娘も、作るだけでも偉いよね。

夜10時、娘が帰宅とともに、すぐに作り始めた。一緒にキッチンに立っていると、随分、背が高くなったなぁと思った。

深夜12時半までかかり、なんとかパウンドケーキとクッキーが、お友達15人分出来た。

娘から、「手伝ってくれて、ありがとう。」との一言。普段は、ほとんど話さないし、口をひらくと、反抗期真っ只中。ああ言えばこう言う。今日だけは素直。だから、シンプルに嬉しかった。クタクタだったけれど、疲れが吹っ飛んだ。

今までキッチンに立たなかった娘が、お菓子を作りたいと頑張っている。

もう親よりも、お友達が娘を育ててくれるんだろうなぁと思う。
これを機会に、少しでも、キッチンに立つように言ってみようかな。

悪夢のバレンタインデーも、いいきっかけになるイベントなるかもしれない。

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